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第3章 転校生エニスのお姉さまと妹
私のお姉さまになりなさい【パリナside】
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ミリアリリー王国の王都ラサリリーの貴族区に私の家はある。
我がアスレオット家はミリアリリー王国建国の8騎士の家柄なので、本家本流は騎士侯の爵位を代々有しているのだから。
そして私はヴァンパイアに噛まれた後遺症で本調子じゃないのを理由にミリアリリー女学園に通わず寝込んでいた。
もちろん、それは嘘だ。
もう体調の方はいい。
心はともなく。
ミリアリリー女学園に通学したくなかっただけだった。
原因はエニスだ。
模擬戦の敗北が原因じゃない。
その後の妹の申し出をフラれた事が原因だった。
多分、これは失恋の痛手だ。
不用意に申し込み過ぎた。
まさか、拒絶されるとは思わなかったから。
もう取り返しが付かない。
廊下にはあの時、結構生徒が居た。
私が泣いて廊下を走ってるのを見た生徒も。
もうミリアリリー女学園中の生徒が私がフラれた事を知ってるはずだ。
恥ずかしくてミリアリリー女学園にはもういけない。
それ以前に、フラれたショックで寝込んでた。
あの時の事を思い出しては泣いてる。
心が引き裂かれるように悲しくて。
やっぱり不用意過ぎた。
気軽に告白するなんて。
ムードを考えなかった私にも問題があったが、私を拒絶したあのエニスにも問題が・・・
また涙が出てきた。
私ってこんなに弱い女だったっけ?
ベッドで泣いていると、メイドのアラメさんが入室してきた。
「お嬢様、お客様です。ミリアリリー女学園の」
「帰って貰って。会いたくないから」
「それが・・・・・騎士団の蜥蜴車で屋敷に来られてまして。パリナ様の妹のエニス様と名乗られていますが、本当に帰してもよろしいのでしょうか?」
「えっ? エニスが来てるの?」
最初は性格の悪い誰かの騙りだと決め付けた。
あの子が私に会いに来る理由がない。
でも、騎士団の蜥蜴車はそう簡単に用意出来ない、とすぐに考えを改めて、念の為に、
「ええっと、茶髪のロングで足が長くて、凛とした感じの子よ?」
「はい。その人物で間違いありません。如何しましょう?」
「会うわ。いえ、待って――シャワーに入って身体を清めてから・・・それと、大切な話があるから誰も近付けないで。同室も許さないから」
「畏まりました。すぐにシャワーとドレスの御用意をしますね。エニス様には応接室の方で待っていただきますので」
そう言ってアラメさんは部屋から出て行ったのだった。
私がシャワーを浴びてドレスに着替えてから来客用の応接室に出向くと、制服姿のエニスがソファーに座っていた。
私が対面のソファーに座ると、
「顔色がいいんですね? ヴァンパイアに噛まれた後遺症があるって聞いていましたのに?」
私をフッた事など無かったかのようにエニスは接してきた。
「そんな事よりも何の用?」
私は自分を守るように戦闘態勢に入りながら、訪問理由を問うと、
「ええっと、ミリアリリー女学園の学園長センセイに姉と妹の両方を作れって命令されて、あの時は申し出を断ったのですけど、パリナさまがお姉さまになってくれたら嬉しいなぁ~って」
「あの時、フッた癖に今更、何言ってるのよ。嫌に決まってるでしょ」
ちゃんと今、言えたかしら?
私の顔、ニヤけていない?
「ええぇ~、パリナさま、私を妹にして下さいよ」
「嫌って言ったでしょ」
そう断ると、対面のソファーに座るエニスが真面目な顔になって、
「じゃあ、言い方を変えるわ。私のお姉さまになりなさい」
「何よ、その上から目線は?」
「ほら」
エニスが身軽にテーブルを越えて私の座るソファーの横に腰掛けて、
「妹にするといいなさい、お姉さま」
「嫌よっ! ーーキャア」
私が拒絶すると、エニスが私をソファーに押し倒した。
私がドキドキする中、私に覆い被さって顔を近付けたエニスが、
「私を妹にすると言いなさい。言わないとキスするわよ」
「しないわ、アナタを妹には」
「えっ? 私にキスされたかったの?」
「誰がーーどうせ、キスなんて出来ない癖に」
言ってて、耳に自分の心音がやけに響いた。
ドキドキドキッ。
エニスは少しキョトンとしてから少し考えて、
「出来るわよ。他の3年生のお姉さま方ならともかくパリナさまが相手なら」
「どうだか――」
「なら、するわね」
と断ってから、エニスが凛々しい顔のままゆっくりと顔を近付けてきた。
これは一種のチキンレースだ。
エニスが私にキスなんてするはずがない。
そう思いながらも胸はドキドキした。
エニスの唇がどんどん近付いてくる。
触れる寸前まで近付いて、私は眼を閉じてしまい・・・
しまった、と遅蒔きに後悔した。
これでキスされずに、エニスに勝ち誇った顔をされたら私はもう再起不能だ。
そんな事を思った瞬間、眼を閉じてた私の唇に、チュッと柔らかいモノが触れた。
薄眼で確認したら、エニスが眼を閉じて私にキスをしていた。
それを見てから私も眼を閉じてキスされたのだった。
キスが長かったのか、短かったのかは分からない。
キスを終えたエニスが、
「妹にして下さい」
「ったく、仕方ないわね」
私は赤面しながらもエニスを見つめながらそう答えたのだった。
翌朝、私はミリアリリー女学園に登校した。
私の実家の大狼2頭が引く貴族車で。
貴族車の中で座る私の横の椅子には妹のエニスが座ってる。
「正門に到着したみたい。お姉さま、覚悟はいいですね? 絶対に全員、見てきますから」
「ええ、覚悟は出来てるわ」
そんな訳で、エニスが先に降りて、私が続いて降りた。
そしてエニスが私と腕を組んでて歩くんだから、そりゃ、
「キャア」
黄色い悲鳴も飛ぶに決まってる。
私でさえ内心で、キャア、なのだから。
顔がニヤけないように意識して、私はミリアリリー女学園に通学した。
ほら、私って風紀委員長だから外聞もあるし。
校舎の廊下で、腕を組んでたエニスが腕を解き、
「じゃあ、お姉さま、また後で」
「ええ、いい子にしているのよ」
「はぁ~い」
と別れた後、私は3年生の友人達に一斉に囲まれて質問攻めにあった。
我がアスレオット家はミリアリリー王国建国の8騎士の家柄なので、本家本流は騎士侯の爵位を代々有しているのだから。
そして私はヴァンパイアに噛まれた後遺症で本調子じゃないのを理由にミリアリリー女学園に通わず寝込んでいた。
もちろん、それは嘘だ。
もう体調の方はいい。
心はともなく。
ミリアリリー女学園に通学したくなかっただけだった。
原因はエニスだ。
模擬戦の敗北が原因じゃない。
その後の妹の申し出をフラれた事が原因だった。
多分、これは失恋の痛手だ。
不用意に申し込み過ぎた。
まさか、拒絶されるとは思わなかったから。
もう取り返しが付かない。
廊下にはあの時、結構生徒が居た。
私が泣いて廊下を走ってるのを見た生徒も。
もうミリアリリー女学園中の生徒が私がフラれた事を知ってるはずだ。
恥ずかしくてミリアリリー女学園にはもういけない。
それ以前に、フラれたショックで寝込んでた。
あの時の事を思い出しては泣いてる。
心が引き裂かれるように悲しくて。
やっぱり不用意過ぎた。
気軽に告白するなんて。
ムードを考えなかった私にも問題があったが、私を拒絶したあのエニスにも問題が・・・
また涙が出てきた。
私ってこんなに弱い女だったっけ?
ベッドで泣いていると、メイドのアラメさんが入室してきた。
「お嬢様、お客様です。ミリアリリー女学園の」
「帰って貰って。会いたくないから」
「それが・・・・・騎士団の蜥蜴車で屋敷に来られてまして。パリナ様の妹のエニス様と名乗られていますが、本当に帰してもよろしいのでしょうか?」
「えっ? エニスが来てるの?」
最初は性格の悪い誰かの騙りだと決め付けた。
あの子が私に会いに来る理由がない。
でも、騎士団の蜥蜴車はそう簡単に用意出来ない、とすぐに考えを改めて、念の為に、
「ええっと、茶髪のロングで足が長くて、凛とした感じの子よ?」
「はい。その人物で間違いありません。如何しましょう?」
「会うわ。いえ、待って――シャワーに入って身体を清めてから・・・それと、大切な話があるから誰も近付けないで。同室も許さないから」
「畏まりました。すぐにシャワーとドレスの御用意をしますね。エニス様には応接室の方で待っていただきますので」
そう言ってアラメさんは部屋から出て行ったのだった。
私がシャワーを浴びてドレスに着替えてから来客用の応接室に出向くと、制服姿のエニスがソファーに座っていた。
私が対面のソファーに座ると、
「顔色がいいんですね? ヴァンパイアに噛まれた後遺症があるって聞いていましたのに?」
私をフッた事など無かったかのようにエニスは接してきた。
「そんな事よりも何の用?」
私は自分を守るように戦闘態勢に入りながら、訪問理由を問うと、
「ええっと、ミリアリリー女学園の学園長センセイに姉と妹の両方を作れって命令されて、あの時は申し出を断ったのですけど、パリナさまがお姉さまになってくれたら嬉しいなぁ~って」
「あの時、フッた癖に今更、何言ってるのよ。嫌に決まってるでしょ」
ちゃんと今、言えたかしら?
私の顔、ニヤけていない?
「ええぇ~、パリナさま、私を妹にして下さいよ」
「嫌って言ったでしょ」
そう断ると、対面のソファーに座るエニスが真面目な顔になって、
「じゃあ、言い方を変えるわ。私のお姉さまになりなさい」
「何よ、その上から目線は?」
「ほら」
エニスが身軽にテーブルを越えて私の座るソファーの横に腰掛けて、
「妹にするといいなさい、お姉さま」
「嫌よっ! ーーキャア」
私が拒絶すると、エニスが私をソファーに押し倒した。
私がドキドキする中、私に覆い被さって顔を近付けたエニスが、
「私を妹にすると言いなさい。言わないとキスするわよ」
「しないわ、アナタを妹には」
「えっ? 私にキスされたかったの?」
「誰がーーどうせ、キスなんて出来ない癖に」
言ってて、耳に自分の心音がやけに響いた。
ドキドキドキッ。
エニスは少しキョトンとしてから少し考えて、
「出来るわよ。他の3年生のお姉さま方ならともかくパリナさまが相手なら」
「どうだか――」
「なら、するわね」
と断ってから、エニスが凛々しい顔のままゆっくりと顔を近付けてきた。
これは一種のチキンレースだ。
エニスが私にキスなんてするはずがない。
そう思いながらも胸はドキドキした。
エニスの唇がどんどん近付いてくる。
触れる寸前まで近付いて、私は眼を閉じてしまい・・・
しまった、と遅蒔きに後悔した。
これでキスされずに、エニスに勝ち誇った顔をされたら私はもう再起不能だ。
そんな事を思った瞬間、眼を閉じてた私の唇に、チュッと柔らかいモノが触れた。
薄眼で確認したら、エニスが眼を閉じて私にキスをしていた。
それを見てから私も眼を閉じてキスされたのだった。
キスが長かったのか、短かったのかは分からない。
キスを終えたエニスが、
「妹にして下さい」
「ったく、仕方ないわね」
私は赤面しながらもエニスを見つめながらそう答えたのだった。
翌朝、私はミリアリリー女学園に登校した。
私の実家の大狼2頭が引く貴族車で。
貴族車の中で座る私の横の椅子には妹のエニスが座ってる。
「正門に到着したみたい。お姉さま、覚悟はいいですね? 絶対に全員、見てきますから」
「ええ、覚悟は出来てるわ」
そんな訳で、エニスが先に降りて、私が続いて降りた。
そしてエニスが私と腕を組んでて歩くんだから、そりゃ、
「キャア」
黄色い悲鳴も飛ぶに決まってる。
私でさえ内心で、キャア、なのだから。
顔がニヤけないように意識して、私はミリアリリー女学園に通学した。
ほら、私って風紀委員長だから外聞もあるし。
校舎の廊下で、腕を組んでたエニスが腕を解き、
「じゃあ、お姉さま、また後で」
「ええ、いい子にしているのよ」
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と別れた後、私は3年生の友人達に一斉に囲まれて質問攻めにあった。
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