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<第三巻:闇商人 vs 奴隷商人>

第十一話:事前に漏れる手の内③

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 諜報屋が俺の元に訪ねて来たのは夕方だった。
 すでに日が傾き始めていて、決戦前に俺は緊張していたが会うことにした。

「ニート様。実は、闇商人ジルダ様からの言伝ことづてがありまして」
「そうか。なんだ?」
「一度、お会いしてお話がしたいそうです。どうやらジルダ様は闇商人をやめて旦那様の傘下に入って真っ当に商いがしたいとおっしゃっていました」
「そうか。わかった。また追って連絡すると伝えてくれ」

 わかりました、と答えた諜報屋が部屋を出て行く。
 きっと、このままジルダのところへと行き、俺の返事を伝えるのだろう。

 やつは信用できない。ジルダをジルダ様と言っていた。既に取り込まれている可能性が高い。
 しかも、今夜襲撃して来るやつが真っ当な商いをしたいから相談したいなどというわけがない。

「旦那様。さきほどの諜報屋のお話、虫が良すぎる気がしますが」

 ライラが部屋の奥から出て来ると言った。
 俺の部屋にいたところ、諜報屋が来たので念のためにクロゼットの中に隠れさえていたのだ。

「だな。既に暗殺者が三名入り込んでいて、今夜襲撃してくるという。さらに、ヴィヴィには術がかけられていたらしい。その上、さっきの諜報屋の話……。ジルダは二重、三重に俺に罠をかけて来ている」
「バレてしまっていることは、相手に知られてないってことですよね?」
「ああ、こんな時に諜報屋が来るくらいだからな。念には念を押しているつもりが、恥の上塗りになっているってことだ」

 ライラが、俺が飲んでいたコップを持つと、グイッと残りを飲み干す。

「それ、俺のだけど……」
「あ、ごめんなさい。何か入れられていたらいけないと思って……うぐっ、く、くるしいい……」

 パタンと倒れるライラ。

「おいっ、どうした! しっかりしろ!」

 ライラは、胸に手を当てて苦しむ……が、手が心なしか胸を揉んでいるような……

「本当に毒でも盛られてくれたらいいぞ、ライラ」
「くっそー、さすが旦那様です。よくぞ見抜かれました」
「冗談が過ぎる。今、この状況でよくそんなふざけていられるな」

 ライラは、うふっと笑うと俺の首に手を回しキスしてくる。
 合わさる唇の感触。ふわっと鼻腔をくすぐるライラの香水の香り。
 落ち着く……

「旦那様が、険しい顔をされていたから。もっと肩の力を抜いて、どしっとしてくださらないと女たちは不安になってしまいますわ」
「そうか……そんなに俺は深刻そうにしていたか……」
「ええ、せっかくの男前が台無しです。さぁ、こちらの策に穴がないか打ち合わせしましょう」

 ライラはそういうと、再び俺の唇にむしゃぶりついて、舌まで入れて来たのでゲンコツをはめてやった。

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