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絶対氷河の侍

ボロボロ、されど鍛えられた練度

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次の日、他の数字は48、最後まで俺たちに姿を見せることはなかったコグダムの人達に想いを馳せつつ、ホロケウさんと多分今世の別れを告げる。ホロケウさんは魔王大事みんなが使うという言葉を深く噛み締めている。それでも笑顔。

……こんな俺なんか好きにならないで、目の前にいる大事な人をもう少し信用してみればアイツも可愛かったんだろうけど。

「ヒノマルの方は真面目でしょう、いつ勇者さまが帰ってきてもいいように出港の準備をしてくださっていることでしょう」

「ありがとうございます、わざわざ地図まですみません」

色々世話を焼いてくれた、いつか晴雄が言ってくれたあともって100ってのは何を言ってるのかわからないけど、少なくとも俺は100時間経とうと100日だろうと100年だろうとこの人のことは忘れない。そう思う。

「洞窟は本当に危ないです、勇者とはいえ油断してはなりませんよ」

「わかってますよ。41人抜かりなく全力でボコします!」

「あはは! なんかリンチみたいで楽しそうだよねー」

危ないこと言ってるけど全員勇者だ、タマモもいるし強かろうと頑張ればいける気がするな。むしろ数によっちゃあ圧倒出来そうだ。

急いで帰るから荷台なんて要らんと残りの食糧はコグダム都に残しといて(曰く宿泊代)、各々の武器以外は手ぶらに近い状態で出陣するみたいだ。俺は危ないからと後ろら辺、最後尾には仁がいるから安心だ。比較的守りの方が得意なサムライだから、不当な暴力もないことだろう……今の仁にピッタシだ。

「それでは、せーの、」

「「「行ってきます!!!」」」

協調性は皆無だけどなんだかんだ統一性のあるのが自慢なだけあってこういう時だけは妙に連帯感がある、このクラスの結構好きなところだ。実際いじめとかそんな話聞いたことないし、変な奴は数え切れないほどいるけど体育祭の時は普通にみんなで頑張ってた。共通の目的がないとバラバラなだけで、俺はクラスの仲間に恵まれている方なんだなと思う。

走り出してもホロケウさんが見えなくなるまで走りながら手を振る、俺も走りづらいけど頑張って手を振り続けた。ホロケウさんも俺達をじっと見つめて手を振ってくれた。あの優しい狼の姿を2度と忘れぬようにと瞳に刻むにはあまりにも短い時間だったけれど。見えなくなる直前の、やっぱり優しい笑みはしっかり心に焼きつけた。

「走り辛えだろ、担いでやるからな」

「お前は体力温存しとけって……うわ!」

仁に無理矢理おんぶされた、これから戦うって何無駄に体力を使うんじゃあない。仁が嬉しそうだから何も言わないけど。

「やっぱり軽いなー余裕綽々!」

「真田くん……賢くなったね、そんな言葉いつ使えるようになるなんて」

「おいそりゃどういうことだ瀬戸、お前以外とざっくり来ること言うよな」

「お、俺にも……おんぶさせてくれないか」

「駄目。これは彼氏の特権だ、諦めろ」

そうかと落ち込んでいる総司の後ろ姿は、大きな体に似つかわしくないまるで小動物のようだ。少し呆れ気味に見られている気がして恥ずかしいけど、まあその……後で総司に言っておこう、交流のために筋トレしないかって。……なんか励ます言葉としては違う気がしてきたぞ。

賑やかに走る41人、洞窟って言うと怖いイメージがあるから一人ぐらいはそう言う奴いてもおかしくないなと思ってたのに、蓋を開けると誰としてそんなことはない。異世界特典があるから怖いものはないってか、頼もしい話だ。暗い洞窟……というより氷河に近いそれが見えたら俺は恐ろしくて身震いしてしまったのに、意気揚々と突っ込んでしまうのが勇者クオリティ、まあ時間との戦いである今としては最適解なんだろう。

「なんだっけ、氷の妖精?」

「氷の妖怪な。姿は見えないけど……怖気付いて逃げか?」

「油断すんなよ、トメタツってば意外に調子乗りやすいんだからさ」

「なめてんのか」

「沸点低っく!!」

意外と仲良さそうだよな、奏ととめたつ。とめたつは奏の前だとちゃんと高校生というか、いつものクールで寡黙な印象がなくなる気がして。俺としては奏と話してる方が好きだ、なんてったって楽しそうだから。

「……いる」

開けた氷の間、滑って楽しそうに遊ぼうとするのを尻目に、前の奴らがざわつき始める。先頭の喜助と高松が足を止めると同時に全員止まるこの練度の高さ。何人か急に止まらずに転んだけど、全員一応動きが止まった。

「あたりを警戒しろ! なんか悪寒がする!」

「いたーい!」

「いって……ケツが割れた」

「ってか暗いなーなんか炎の魔法的なのないの?」

「今使ったら溶けて大惨事な気が……」

「俺たちもタダでは済まないだろうな」

「おい梓大丈夫か?」

練度がいいんだから悪いんだからわからんな。特に後ろは健吾に成に仁を始めとした個性派が揃ってるせいか尚更そう思う。

「お、俺降りるよ。いざと言うとき足手まといには……」

「……絶対に俺から離れるな」

降ろされても仁が手を掴んでくれる、あったかい。右が左から上から下か、選択肢は多過ぎるが、転んでいた奴らもようやく起き上がる。しかし頭がいいのか魔物には第六感が備わっているのか、攻撃は頭上、しかも1番戦闘力のない俺の真上にきた。
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