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弟に捧ぐ
降霊術
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とにかく湯船でゆっくり話そうと言われたが、俺としてはどう収集をつければ良いのか分からずに途方に暮れていた。掛け湯をするとき顔に血の気が通ってなかった、自ら死地へ向かう戦国時代の武士ってこんな気分だったんだなと今理解した。
今両隣にいる男2人とも体の関係を持ったことがあるとか不純すぎて切腹したい。薫に関しては向こう側に原因があるけど晴雄は俺のせいだ、低く見積もってもだいたい9割ぐらい。
「それにしても弟くんはなかなかやるね、門限も大概アウトだけど情報統制までするとか、ウケて腹壊しそう」
「なにわろてんねん……って薫にとっちゃあ他人事だしな」
「本当に頭いいんだね、弟っちまだ中学生でしょ?」
「うん、2歳差だよ。もう受験生だな」
……まさかとは思うけど、俺がいなくなったせいで受験勉強に影響が出たりしないだろうか。そんな事は母親と父親が許さないと思うけど、一家で1番頭のいい蓮が今更言うことを聞くとは思えない。とは言え兄ちゃんに出来るのは、ブラコンとはいえ自分の人生を棒に振るような事はしないと信じる事しかできない。
「心配だーな、大大好きな兄ちゃんがいなくなって勉強が手につかないかもね」
「や、やっぱり?」
「確かにそうかも。ひょっとしたら夜遅くまで探しに出かけてることもあり得そう」
絶妙に俺の心配を煽ってくる。絶対にそうだと言い切らないのが2人の優しい所だしいい所だけど、俺にとっては不安因子でしかない。一刻も早く魔王を倒さないと、もし探してなかったら眼中にすらなくてもそれはそれでいいんだ、ただ大丈夫なのかを確認したい。
2人も色々と考えてはくれてるけども、俺の中ではすでに実際に帰って確認するしかないと結論がついている。ともあれ人に話せてスッキリした、ありがとな……
「そうだ思い付いた、俺天才! 最高すぎてヘドロが出るよ」
「反吐を出せきったねえ」
「反吐も大概だと思うな」
薫って褒めたりする時に腹壊したり反吐出したがる癖があるよな、今回はヘドロだったけど。晴雄がツッコんでしまうぐらいの狂った状況下だけど、一応その思い付いた提案は聞いておこう、一応な。
「長谷部って退魔師なんでしょ、なんか幽霊とか、それに関することできないの?」
「幽霊か……元々退魔師ってのは魔物とか悪い呪いとかを払うものだから、ちょっと専門外かもな」
あーそっかと落ち込んでいる所悪いけど、何を考えているのかさっぱり分からない。黙って聞いてれば色々わかるかなと思ってはみたが、全然分からない、かすりもしない。
「あ、でも俺のなら出来るかも」
「というと?」
「いや、昔からそれなりに霊感体質で。退魔師で得た魔力と元々の霊力みたいなの合わせたら出来るかなって……」
「そんなうまくいくのか、所詮体質だろ?」
「まあ確かに、去年バザーで買った超本格的な降霊道具使って死んだ爺ちゃんと猫のシンゲンを呼び戻すぐらいしかしたことないからちょっと無理あるかもな」
「それは頼もしすぎるなあ!?」
「なあ何企んでんの?」
バザーになんてもの売ってんだ、あとなんで降霊術を試みたのか小1時間ぐらいで読める短編小説で教えてほしい。ツッコミがコロコロ変わる時はまさに大漫才時代! ではなく何を企んでいるのかを聞きたいんだ俺は。
「もし出来るなら長谷部に弟くんを呼び出してもらおうと思って」
「はぁ?」
そうだった、ここまで待ってまで薫の話を聞こうとしたのがそもそもの間違いだ。これは元々こう言う生物なのをすっかり忘れていた。
一応全部聞いてみた。この異世界では蓮は生きていない、つまり存在していないんだ。それを利用、蓮が存在しない=死んでいると仮定する。その法則に則って霊媒のような事をして貰えば短期間ではあるけど元の世界から蓮を連れてこれるのでは、と言ったものだった。こじつけ感もすごいしハッキリ言ってめちゃくちゃな理論だ。こんな事で晴雄に無理をさせたくはない。
「ねえできそう? 降霊道具はないけど」
「……出来るかも。異世界特典で道具なしに退魔術使えるようになってんから、降霊術にも通用すると思う。知らんけど」
「いやいや! 無理しなくていいから! 霊媒って晴雄が媒介物だろ、なんか嫌なこと起きるかも」
風呂に入ってんのに汗がぶわりと出る感触がした。自ら危ないことをするのは勇気じゃなくてただの自己犠牲だ、自己犠牲なんてのは見る方からしたらなんもいいことない。そんな自己満足はやめてくれ。
「いいんだよ、やらせてくれ。弟くんのためにもな」
弟くんのため。晴雄はどうやらこの賭けにでる気のようだ。失敗するかもしれないし、成功するかもしれない。仮に成功してもちゃんと蓮と話が出来るのかは怪しい。もし仮に蓮と話せたら……俺は一体どう言うべきなのだろう。ダメなお兄ちゃんでも世界救うよって言えるのか、踊り子だぞ。いや違うな、兄ちゃんの事は気にしないで勉強ちゃんとしろよって言うのが1番いい。
「……じゃあこっから呼ぶからちょっと待っててくれ」
「へ? 今なん?」
「今じゃなかったらいつやるんだよ」
心の準備とかそう言うのってこいつらの辞書にはないんだなよくわかったよ。目を瞑って精神統一をする晴雄を、困惑混じりに見つめていた。
今両隣にいる男2人とも体の関係を持ったことがあるとか不純すぎて切腹したい。薫に関しては向こう側に原因があるけど晴雄は俺のせいだ、低く見積もってもだいたい9割ぐらい。
「それにしても弟くんはなかなかやるね、門限も大概アウトだけど情報統制までするとか、ウケて腹壊しそう」
「なにわろてんねん……って薫にとっちゃあ他人事だしな」
「本当に頭いいんだね、弟っちまだ中学生でしょ?」
「うん、2歳差だよ。もう受験生だな」
……まさかとは思うけど、俺がいなくなったせいで受験勉強に影響が出たりしないだろうか。そんな事は母親と父親が許さないと思うけど、一家で1番頭のいい蓮が今更言うことを聞くとは思えない。とは言え兄ちゃんに出来るのは、ブラコンとはいえ自分の人生を棒に振るような事はしないと信じる事しかできない。
「心配だーな、大大好きな兄ちゃんがいなくなって勉強が手につかないかもね」
「や、やっぱり?」
「確かにそうかも。ひょっとしたら夜遅くまで探しに出かけてることもあり得そう」
絶妙に俺の心配を煽ってくる。絶対にそうだと言い切らないのが2人の優しい所だしいい所だけど、俺にとっては不安因子でしかない。一刻も早く魔王を倒さないと、もし探してなかったら眼中にすらなくてもそれはそれでいいんだ、ただ大丈夫なのかを確認したい。
2人も色々と考えてはくれてるけども、俺の中ではすでに実際に帰って確認するしかないと結論がついている。ともあれ人に話せてスッキリした、ありがとな……
「そうだ思い付いた、俺天才! 最高すぎてヘドロが出るよ」
「反吐を出せきったねえ」
「反吐も大概だと思うな」
薫って褒めたりする時に腹壊したり反吐出したがる癖があるよな、今回はヘドロだったけど。晴雄がツッコんでしまうぐらいの狂った状況下だけど、一応その思い付いた提案は聞いておこう、一応な。
「長谷部って退魔師なんでしょ、なんか幽霊とか、それに関することできないの?」
「幽霊か……元々退魔師ってのは魔物とか悪い呪いとかを払うものだから、ちょっと専門外かもな」
あーそっかと落ち込んでいる所悪いけど、何を考えているのかさっぱり分からない。黙って聞いてれば色々わかるかなと思ってはみたが、全然分からない、かすりもしない。
「あ、でも俺のなら出来るかも」
「というと?」
「いや、昔からそれなりに霊感体質で。退魔師で得た魔力と元々の霊力みたいなの合わせたら出来るかなって……」
「そんなうまくいくのか、所詮体質だろ?」
「まあ確かに、去年バザーで買った超本格的な降霊道具使って死んだ爺ちゃんと猫のシンゲンを呼び戻すぐらいしかしたことないからちょっと無理あるかもな」
「それは頼もしすぎるなあ!?」
「なあ何企んでんの?」
バザーになんてもの売ってんだ、あとなんで降霊術を試みたのか小1時間ぐらいで読める短編小説で教えてほしい。ツッコミがコロコロ変わる時はまさに大漫才時代! ではなく何を企んでいるのかを聞きたいんだ俺は。
「もし出来るなら長谷部に弟くんを呼び出してもらおうと思って」
「はぁ?」
そうだった、ここまで待ってまで薫の話を聞こうとしたのがそもそもの間違いだ。これは元々こう言う生物なのをすっかり忘れていた。
一応全部聞いてみた。この異世界では蓮は生きていない、つまり存在していないんだ。それを利用、蓮が存在しない=死んでいると仮定する。その法則に則って霊媒のような事をして貰えば短期間ではあるけど元の世界から蓮を連れてこれるのでは、と言ったものだった。こじつけ感もすごいしハッキリ言ってめちゃくちゃな理論だ。こんな事で晴雄に無理をさせたくはない。
「ねえできそう? 降霊道具はないけど」
「……出来るかも。異世界特典で道具なしに退魔術使えるようになってんから、降霊術にも通用すると思う。知らんけど」
「いやいや! 無理しなくていいから! 霊媒って晴雄が媒介物だろ、なんか嫌なこと起きるかも」
風呂に入ってんのに汗がぶわりと出る感触がした。自ら危ないことをするのは勇気じゃなくてただの自己犠牲だ、自己犠牲なんてのは見る方からしたらなんもいいことない。そんな自己満足はやめてくれ。
「いいんだよ、やらせてくれ。弟くんのためにもな」
弟くんのため。晴雄はどうやらこの賭けにでる気のようだ。失敗するかもしれないし、成功するかもしれない。仮に成功してもちゃんと蓮と話が出来るのかは怪しい。もし仮に蓮と話せたら……俺は一体どう言うべきなのだろう。ダメなお兄ちゃんでも世界救うよって言えるのか、踊り子だぞ。いや違うな、兄ちゃんの事は気にしないで勉強ちゃんとしろよって言うのが1番いい。
「……じゃあこっから呼ぶからちょっと待っててくれ」
「へ? 今なん?」
「今じゃなかったらいつやるんだよ」
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