敵国の者でも構わず治癒した聖女の行く末

4話 初夜4

「悪くないな。これは、結構楽しめそうだ。」

「きゃっ…」

震える体を横抱きにされて、ベッドへ連れて行かれる。

いわゆるお姫様抱っこというやつだ。
だけど、私の感情はときめきよりも恐怖の方が大半を締めていた。

ボスッと乱暴にベッドに寝かされ、呑気に寝転がっている訳にはいかず、私はすぐに起き上がろうと試みた。
しかし、ヴェルド様が馬乗りになってきたため身動きが取れなくなってしまった。

「や、…嫌っ！！」

馬乗りにされて体重をかけられているこの状態では、私の力じゃヴェルド様を退かすことはできない。

これではもう、逃げられない。

どうしよう…どうしよう…！
私、このまま本当に、してしまうの？
好きでもない人と、こんな酷い人と。

初めてなのに。

「優しくして貰えると思うなよ。婚約者だろうが処女だろうが、お前は犯罪者だ。大人しくしていろ。いいな。」

ただでさえ怖いのに、愛もなく、ただただ犯される。
ヴェルド様の言葉でそれを嫌でも実感してしまい、震えが止まらない。

「わ、私は…悪いことなんて…していませんっ！」

反論しても、全く聞き入れてくれる様子はない。
私を見下ろす目は冷たく、恐ろしい。　

「っ…！やっ！」

乱暴な動作で、私の胸元がはだけさせられた。
そこへ、視線が注がれる。

男性にこんなに肌を晒すのも当然初めてだ。
ヴェルド様の視線を受ける胸元が恥ずかしくて、思わず両手で庇ってしまう。

「隠すな。」

「っ…はな、放して…」

ヴェルド様は片手で私の両手をあっさり捕らえると、頭上で押さえつけた。
ヴェルド様は片手だというのに、私が力いっぱい抵抗しても、びくともしない。

動けない。

「や、嫌っ…こ、こわ、怖い…」

「いいな、その顔。なかなかに加虐心をそそられる。」

「っ…！」

私はこんなに必死だというのに、ヴェルド様はなんだか楽しそう。
どうして人を傷つけてそんな風に笑えるの。

さっき、抱きとめてくれた時は、少しだけ優しいかもって思ったのに。

「お前は俺のものだ。」

耳元でそう囁かれ、私は絶望した。

あぁ、そうか。
私はもう、この人に従って生きていくしかないんだ。
家族にも会えず、まともな恋愛も結婚もできず、この人の道具として一生使われるんだ。

逃げたくても、嫌だと叫んで暴れたくても、家族が人質にされていたら、怖くて怖くて、何もできない。

この体を、この人に良いように使われてしまう。

そう思ったら、とても、悲しくて。

「ひっ…うぅっ…グスッ…っ…ふ、ぇ…」

涙が、ポロポロと頬を伝って流れ落ちていく。
堪えきれない嗚咽も、喉から洩れてしまっていた。

「っ…おい、シュリエル？」