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336話 制裁 9
しおりを挟む息を荒げ、涙の溜まった目で桂本さんを思いっきり睨み付ける。
桂本さんが俺に躊躇なく酷いことをしてくる理由が全く分からない。
こんなの納得できるわけないじゃないか。
「俺の何が許せないんだよ...。もっとはっきり言ってよ...。うぅ...っ...。」
混乱状態で感情ばかりが膨れ上がり、上手く言葉にならない。言葉の代わりに大粒の涙が止めどなく溢れだした。
どうして俺はこんな目に遭わなくてはいけないんだ。
どうして桂本さんや父さんは俺の気持ちをわかってくれないんだ。
どうして、何もかも思うようにいかないんだ。
どうして...どうして...。
「う...ひっく...俺は...俺はただ...皆みたいに、放課後に町で遊んだり、下らないことで笑ったり、適度に勉強したり、恋バナしたり...そんな当たり前の日々を過ごしたいだけなのに...! 」
俺がそう言った瞬間、桂本さんが纏う空気が一気に冷えたような気がした。
「...それですよ。私が一番気にくわないのは。」
「うっ...!? 」
苦し...!
首、絞められっ...!
長年側にいる俺でも聞いたことないほど怒気を含んだ低い声が聞こえたとおもったら、突然呼吸を制限されてパニックになる。
腕は拘束されていて手を引き剥がすことができず、脚をばたばたと暴れさせて苦しさを紛らわせようとするが、苦しさは増すばかり。
しかし。
「あなたは、私には無いものを持っている...! この旅館坂北屋の当主を継ぐ権利を! 」
「っ...!? 」
桂本さんは何故か俺よりも苦しそうに顔をしかめながら話を続けた。
なに...?
旅館を継ぐ権利...?
体内の酸素が少なくなってきて、頭がぼーっとしてくる。
「私は、この旅館を大切に思っています。できることなら私がこの旅館を継ぎたかった。」
桂本...さん...?
「しかし私は所詮部外者。坂北家の人間ではない。だから、いくら望んでも、いくらこの旅館に尽くしても、私が継ぐことはできない...。」
「っ...! げほげほっ...げほっ、ごほっ...! はぁ、はぁ、はぁ...」
目の前が暗くなってきて、意識を失ってしまう直前で、ぱっと手が放された。途端に激しく咳き込みながら、俺はやっと与えられた空気を必死に貪る。
息苦しさの中で、なんとか聞き取った桂本さんの言葉に、俺は驚き固まった。
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