317 / 341
314話 脱走 16
しおりを挟む「それじゃあ、明日の朝坂北くんをスーツケースに詰め込んでフロントでチェックアウトするってことでいいかな? 」
「はい、お願いします。」
改めて言われると、かなり単純というか、ゴリ押しな作戦だな...。
まぁ細かいところは色々と考えなきゃいけないんだけど、とりあえずはそれでいいだろう。
西村さんがこの場をまとめたところで、俺は頷き頭を深く下げた。
「うん。任せて! 他に何か確認しておきたいことある? 」
ニコッと眩しい笑顔を向けられ、ほっと体の力が抜ける。
確認しておきたいこと...。
そう言われて考えると、すぐに一つ思い浮かんだ。
「そうだ...! あの、電話貸して貰えませんか? 南原さんと話したいんです! 俺、桂本さんにスマホ取られちゃってて...。」
俺が真っ先に思い付いたのは南原さんのことだった。
何も言わずに居なくなった俺を心配しているかもしれない。怒っているかもしれない。ひょっとしたら探し回ってくれているのかも。ずっとそれが気掛かりで。
だけど、一番はやっぱり、少しでもいいから南原さんの声が聞きたいっていう、ただそれだけの自己中な気持ちが理由だ。
「お願いします...。少しでもいいので、南原さんと話をさせて貰えませんか? 」
家のことに巻き込んだあげく、こんな我が儘なお願いをするなんて図々しいにも程がある。そう自分でも思うけど、これだけはどうしてもお願いしたくて、我慢できなかった。
しかし、西村さんはばつが悪そうに苦笑すると、ごめん、と遠慮がちに謝ってきた。
「えっと...気持ちは分かるんだけど、ちょっとそれは無理かな。」
え...。
「なん、で...なんでですか...? 」
嫌だ、とか、駄目、とかじゃなく、無理。
電話くらいすぐにさせてくれると思っていた俺は、まさかの答えに一気に不安が押し寄せ、その訳を聞き返す声が震えた。
西村さんの反応が明らかにおかしい。
南原さんに、何かあったのだろうか。
そう考えると、胸が張り裂けそうなほど苦しくなる。
俺は無意識に、首もとのネックレスに手を触れさせた。
「南原って、こいつの恋人? 電話させてやればいいじゃん。」
「そうだよ和彦にぃ。なんで駄目なの~? 可哀想だよ~! 」
きゅっと唇を噛んで俯いてしまった俺を見兼ねたのか、アキさんとユキさんも一緒に頼んでくれる。それでも、西村さんは承諾してくれず。
「うーん、南原が犯罪者になっちゃうから? 」
「へ? 」
代わりに、とんでもない理由を言い出した西村さんに、俺は思わず間の抜けた声が出てしまった。
は、犯罪者って...どういうこと?
2
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる