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300話 脱走 2
しおりを挟む「う、うぅ...はぁ、はぁ...」
どうしよう。怖い。
暗闇を進むにつれて、桂本さんに目隠しをされている時の記憶がフラッシュバックする。
『痛い? 真面目に勉強をしなかった透さんが悪いのでしょう。言い訳は無用です。しっかり反省するまで終わりませんよ。それと、うるさい悲鳴などを上げましたら、追加でお仕置きを受けて頂きますので。』
っ......!
「い、や...。」
駄目だ。思い出すな。
『聞こえませんね。謝罪ならもっと誠意を見せて下さい。ほら、もう一度。それともまだお仕置きが足りませんか? 』
思い出したら、余計に怖くなってしまう。
必死に意識を逸らそうと抗うけれど、刷り込まれた恐怖は桂本さんの思惑通りの効果を発揮し、俺を追い詰めていった。
『許可が下りたら次のお仕置きは焼き印でも押して差し上げますよ。その白い肌には、さぞ映えるでしょうね。』
「っ...! は、はぁ、はぁ...嫌...助けて...」
心拍はどんどん上がり、息も絶え絶えになりながら真っ暗な階段を降りていく。
徐々に暗闇の中で足を踏み出すことが怖くなり、歩く早さが遅くなってきた。
このままじゃ、捕まってしまう。
どうすれば...南原さんっ...!
じわりと涙が浮かんで、ただでさえ悪い視界がさらにぼやけて滲んだその時。
『ずっと肌身離さず持っていろ。学校にも着けてこいよ。忘れたら仕置きだ。』
「あ...」
ふと、思い出した南原さんの言葉。
ネックレスをくれたとき、南原さんはそう言って優しく俺を脅してきた。
嫌でも頭を過るトラウマの記憶の中で、微かに感じたその暖かい記憶を、俺は見逃さなかった。
南原さんのお仕置きも怖い。いつもドS全開で、酷いことしてきたり、恥ずかしいことさせられたりするし、俺が泣いても叫んでも許してくれない時もある。
でも、桂本さんのお仕置きとは、全然違くて。
桂本さんにお仕置きされる時は、吐き気と息苦しさで目眩がしそうなほどの恐怖を感じるけれど、南原さんのお仕置きは、なんだか胸が締め付けられるような、甘く痺れるような恐怖なのだ。
南原さんのお仕置きは、確かに怖いと感じているのに俺はいつも本気で拒否することはできないでいた。
そうだ。俺の中には、冷たい記憶だけじゃなく、ここ最近の数ヵ月の楽しかった記憶も眠っている。
それを思い浮かべると、桂本さんにされた目隠しの記憶が少し薄れ、俺は歩く速度を上げることができた。
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