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298話 意外なお客さん 2
しおりを挟む「透さん? そんな窓際に突っ立って、一体何をしているのですか? 」
脱出の算段を立てることに集中し過ぎていた俺は、突然背後から聞こえた桂本さんの声にビクリと体を震わせた。
「!?!!? い、いえ別に何もっ...」
あ、しまった...!
バチバチっ!
「っ...うぐっ!」
焦って首輪の存在を忘れ、思わず声を上げてしまい、気づいた時には首もとに激しい痛みがバチバチと走る。
「っ...っ...」
堪らず両手で首もとを押さえ、俺はその場に座り込んだ。
こんな首輪を着けさせておいて、疑問形で話を振らないで欲しい。それとも俺を痛めつける為にわざとやっているのか。
涙に潤む目を自覚しながらも、俺は、薄ら笑いを浮かべる桂本さんをキッと睨み付けた。
「なんですかその目は。透さんが声を出さなければ電気ショックは起きませんよ。私が咎められる理由はありません。ああそれとも、反抗なさるおつもりですか? 」
「っ...」
反抗なんてできるわけない。手加減のないお仕置きをチラつかせておいて白々しいにも程がある。
俺は苛立ちを押さえ、フルフルと首を左右に振り反抗の意思がないことを伝えると、ゆっくりと立ち上がった。
「指定した範囲は終わらせられましたか? 」
こくり。
目を合わせずに頷き、問題集を桂本さんに手渡す。
「...いいでしょう。そうやって素直に従っていれば、何も怖いことはしませんからね。」
「っ...」
目だけが笑っていない作り物のような冷たい微笑みを向けられ、嫌悪感にゾッとした。
「では、午後やってもらう範囲ですが...」
従うのは今だけだ。
逃げてやる。俺は、絶対に負けない。
脱出は、今日の夜、すぐに決行しよう。
密かにそう心に決めた。
西村さんがいつ帰ってしまうか分からないから、できるだけ早い方がいい。とくに準備することもないし、先送りにしたところでメリットはない。むしろ、桂本さんにこの計画がバレてしまうリスクが高まるだけだ。
夜まで、絶対桂本さんに悟られないように、いつも通りに過ごす。そしたら、この首輪が外される唯一の時間、入浴の時間に逃げ出そう。
ごめんなさい、父さん、桂本さん。迷惑かけて。でも、こんなこと、間違ってると思うから。どうしても自由を諦めたくないから。
表面上は大人しく桂本さんの話を聞きながら、俺はどう逃げ出すか、何度もイメージを繰り返していた。
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