289 / 341
287話 説得 13
しおりを挟む「ダメです。それ...嘘かもしれないから...。」
勉強をさせておいて、後からやっぱり話せないなんて言われたら困る。いくら疲弊してたって、簡単に頷いたりしちゃだめだ。
桂本さんなら、目的の為に俺を騙すなんてこと、平気でやるから。
信用できない。
俺は、桂本さんが出した折衷案に食い付くことなく、冷静な判断を下した。
桂本さんの思惑に流されてしまって、気づいたら戻れないところまで来ていた、なんてことは絶対に避けなければならない。そのプレッシャーが、俺を慎重にさせていた。
「...ここまでやってもまだ折れないとは。私は少々あなたを侮っていたようです。一体なぜ亜奈月高校にそこまで拘るのですか。」
「それは...」
確かに、坂北家の次期当主になりたくないとしても、優秀な学校を卒業することは損ではない。桂本さんが不思議に思うのもわかる。だけど。
「亜奈月には、皆が...友達がいるから...。」
亜奈月は、俺が初めて自分の意思で選び、行動して手にした居場所だった。最初は異常な校則や制度に戸惑ったり、南原さんに無理矢理色んなことをされて、怖いこともあったけど。生徒は元不良ばっかりだし、できた恋人は男だし、俺が憧れていた理想とは少し、いや、かなり違っていたけれど。
「元不良の友達も、個性的な生徒会の先輩も、変態鬼畜生徒会長の恋人も、みんな、色んなことを教えてくれた。俺は今まで、毎日勉強をさせられてきたけれど、俺の知らなかったことを沢山教えてくれた。だから、どんな優秀な学校よりも、亜奈月にいる方が成長できる気がするんです。」
皆の顔を思い浮かべながら、呟くように話す。
「あ...もし、坂北屋を継ぐことになったとしても、亜奈月に通っていた方が優秀な坂北家の当主になれると思いますよ...。」
もちろん、坂北家の当主になる気はないけど、嘘ではない。父さん達の言うとおりにしていては決して得ることができないものが、亜奈月にはある。
「......やはり私には理解できません。あの底辺高校で学べることなど微々たるものでしょう。」
「桂本さん... 」
やっぱり駄目か...。
どんなに言ったって、俺の気持ちはこの人には伝わらないんだ。そう思って落胆したその時。
「ですが、このまま駄々をこねて勉強が全く進まないのは困りますので。」
「え...? 」
「仕方ありません...。分かりました。今回は私が折れましょう。」
2
お気に入りに追加
1,057
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる