BL 生徒会長が怖い

かのほ

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287話 説得 13

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「ダメです。それ...嘘かもしれないから...。」

勉強をさせておいて、後からやっぱり話せないなんて言われたら困る。いくら疲弊してたって、簡単に頷いたりしちゃだめだ。
桂本さんなら、目的の為に俺を騙すなんてこと、平気でやるから。

信用できない。

俺は、桂本さんが出した折衷案に食い付くことなく、冷静な判断を下した。
桂本さんの思惑に流されてしまって、気づいたら戻れないところまで来ていた、なんてことは絶対に避けなければならない。そのプレッシャーが、俺を慎重にさせていた。

「...ここまでやってもまだ折れないとは。私は少々あなたを侮っていたようです。一体なぜ亜奈月高校にそこまで拘るのですか。」

「それは...」

確かに、坂北家の次期当主になりたくないとしても、優秀な学校を卒業することは損ではない。桂本さんが不思議に思うのもわかる。だけど。

「亜奈月には、皆が...友達がいるから...。」

亜奈月は、俺が初めて自分の意思で選び、行動して手にした居場所だった。最初は異常な校則や制度に戸惑ったり、南原さんに無理矢理色んなことをされて、怖いこともあったけど。生徒は元不良ばっかりだし、できた恋人は男だし、俺が憧れていた理想とは少し、いや、かなり違っていたけれど。

「元不良の友達も、個性的な生徒会の先輩も、変態鬼畜生徒会長の恋人も、みんな、色んなことを教えてくれた。俺は今まで、毎日勉強をさせられてきたけれど、俺の知らなかったことを沢山教えてくれた。だから、どんな優秀な学校よりも、亜奈月にいる方が成長できる気がするんです。」

皆の顔を思い浮かべながら、呟くように話す。

「あ...もし、坂北屋を継ぐことになったとしても、亜奈月に通っていた方が優秀な坂北家の当主になれると思いますよ...。」

もちろん、坂北家の当主になる気はないけど、嘘ではない。父さん達の言うとおりにしていては決して得ることができないものが、亜奈月にはある。

「......やはり私には理解できません。あの底辺高校で学べることなど微々たるものでしょう。」

「桂本さん... 」

やっぱり駄目か...。

どんなに言ったって、俺の気持ちはこの人には伝わらないんだ。そう思って落胆したその時。

「ですが、このまま駄々をこねて勉強が全く進まないのは困りますので。」

「え...? 」

「仕方ありません...。分かりました。今回は私が折れましょう。」





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