282 / 341
280話 説得 6
しおりを挟む「随分と舐められたものですね。今まで多大な恐怖を刻み込んで差し上げたつもりでしたが、まだまだしつけが足りないようで。」
っ...怖い。
でも...。
父さんは、有風高校に俺を転入させたい。だから俺が勉強を拒み続けることができれば、きっと話をさせて貰えるはずだ。
「では、勉強をなさる気になるまで、目隠しさせていただきます。」
「っ...」
やっぱり目隠し...。
桂本さんがパタンと教科書を閉じた瞬間、俺はバッと素早く立ち上がり、握りしめたシャープペンの先を桂本さんに向けると、できる限りの距離をとった。
「ふっ、抵抗なさるおつもりですか? 」
人形のように整った顔で冷たく微笑む桂本さんに、シャープペンを持つ手が震える。
「む、無抵抗で痛め付けられるつもりはありません。父さんに会わせると約束してくれるなら、勉強します。」
ゆったりと立ち上がってこちらへ歩いてくる桂本さんに、一歩、また一歩と後ずさる。
「無駄ですよ。透さんにはあらゆる習い事をさせてきましたが、武芸だけは一切させていません。その意味、お分かりですよね。」
「っ...! 」
俺に、抵抗させない為。
小学生ならともかく、もし今の年齢で空手や柔道を習っていたら、押さえつけるのが困難になる可能性があるから。
でも、だからって無抵抗で目隠しを受け入れる訳がない。少しでも目隠しされる時間を減らして、身を守るくらいはやらないと。
「素直に私に従った方が賢明かと思いますが。」
「っ...やだっ! 嫌ですっ...! 」
ペンの先を向けられながらも躊躇なく近づいてくる桂本さんに、俺はシャープペンをめちゃくちゃに振り回した。それでも桂本さんは、少しも怯む様子なくこちらへ来る。
なんで? なんで?
普通、いくら俺に武術の心得がないといっても、少しは警戒するだろ。
そりゃ、シャーペンじゃ殺傷能力は低いけど、それでもこんなにめちゃくちゃに振り回してる相手に近づいたら、いくら桂本さんといえど危ないのに。ペン先が顔、ましてや目なんかに当たったらどうするんだ。
「っ...」
ついに壁際に追い詰められてしまった俺は、シャーペンを振り回す手を止めた。桂本さんは、そんな俺を小馬鹿にするように嘲笑を洩らした。
「ふっ、抵抗なさるのではなかったのですか? 」
「っ...だって...今振り回したら...」
怪我をさせてしまうかもしれない。
2
お気に入りに追加
1,053
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
男子中学生から女子校生になった僕
葵
大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。
普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。
強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる