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278話 説得 4
しおりを挟むパラパラと教科書と問題集のページをめくり、見比べる。簿記は、何とか昼までに終わらせられそうだ。応用問題もそこまで難しくない。さっさとやって、桂本さんや父さんを説得する方法を考える時間を作らなければ。
昨日と比べると、動揺や戸惑いといった感情はだいぶ消えていて、俺はスムーズに勉強を進めることができた。
「ふぅー...お、終わった...! 」
とりあえず、お仕置きを免れたことに安堵するが、ぼーっとしている暇はない。
俺の目標は、ここから出ることだから。
考えろ、考えろ。
どう説得すればいい?
さっき桂本さんから聞いた話だと、先に父さんを説得してみるのがいいかもしれない。父さんさえ説得できれば桂本さんはそれに従うみたいだし、怒らせたらお仕置きされる危険がある桂本さんを説得するのは難しい。
でも、父さんと話すにはまず、桂本さんの許可を取らなければならない。それに、もし父さんに会えたとしても、まともに話を聞いてくれるかどうか...。
桂本さんは、仕事だから俺を次期当主にしようとしていると言っていた。
父さんも桂本さんと同じだとしたら、俺の気持ちを話したところで、何も変わらないかもしれない。
父さんも、旅館のためだけに俺をこんな風に閉じ込めているのだろうか...。
でも、それでうちひしがれる俺じゃない。今の俺には、昔と違って孤独感はそんなに無かった。今は、大切な人たちを、亜奈月の皆を思い浮かべることができるから。
* * * * * * * * * *
「...いいでしょう。仕訳はもう完璧ですね。では...」
「あの、桂本さんっ! 勉強の前に、父さんとちゃんと話させてくれませんか? 」
「......」
昼。確認テストで満点を取った俺は、すぐに桂本さんにそう頼んだ。
もう、怖いとか言ってられない。行動しなきゃ、また操り人形になってしまう。
桂本さんは、そんな俺を呆れたような目で数秒見つめ、おもむろに口を開くと。
「無理です。」
「えっ...」
単純明快、きっぱりとそう告げられ、間の抜けた声が出てしまった。
そりゃ、そう簡単に承諾されるとも思ってなかったけど、ここまでバッサリ切り捨てられてしまうとは...。
「あなたにも茂さんにも、そんな時間はありませんので。どうしてもと言うなら私から話しておきますが。」
「そうじゃなくて、直接会って話がしたいんです。お願いします...! 」
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