BL 生徒会長が怖い

かのほ

文字の大きさ
上 下
279 / 341

277話 説得 3

しおりを挟む

「仕訳の基礎はここまでです。あとは自力で解けますね? 」

「はい...。」

簿記の仕訳というものは、思ったほど難しくなく、すぐに理解できた。桂本さんの説明もとても分かりやすく、勘定科目さえ覚えてしまえばあとは単純作業だ。

ただ、お仕置きされるようなことをしてしまわないようにずっと気を張っていたから、気疲れが半端じゃない。思わず漏れそうになるため息を寸でのところで堪えた。

「私は他の仕事がありますのでこれで失礼します。練習問題を昼までにやっておいて下さい。」

一通り説明を終えた桂本さんは、ペンを机に置くと、開かれていた教科書に付箋を付け、パタンと閉じて差し出してきた。

あー...これは、応用問題も教科書を参考に理解しておけということか...。

拒否したくてもできない俺は、それを仕方なく受け取る。すると桂本さんは、すぐに椅子から立ち上がり、スタスタとドアの方へ歩いていき、ドアノブに手をかけた。

「昼食が終わったら仕訳の理解の確認テストを行い、転入試験の対策問題を持ってきますので。それでは。」

え、待って。もう行っちゃうの?

いや、桂本さんと居るのは怖くて嫌だけど、もっと情報が欲しいから。さっき、質問に答えてくれたとはいえ、あれだけでは困る。

「あ、あのっ! ちょっと待って下さい、まだ聞きたいことが...」

せめてもう少し何か教えて貰えないかと、俺は桂本さんを引き留めた。

そんなにすぐに、説得の決定打となるような情報は出てこないことはわかってる。それでも、少しずつでも前に進むために、できるだけ早く、たくさんの情報を得なければならない。

しかし。

「それは勉強に関することでしょうか? 」

「っ! ...いえ...でもっ...! 」

「仕事があると言いましたよね? 無駄話に付き合う時間はありません。では失礼します。」

「あ、桂本さ...」

とりつく島もなく、桂本さんは部屋のドアを閉めて鍵を掛け、足早に仕事へ向かってしまった。

「っ...はあぁ~~~...。」

桂本さんの気配が無くなると、俺は大きなため息を吐き、一気に脱力して椅子にもたれかかった。

怖かった...。
それに、あんまり質問できなかったな...。

星のネックレスを取り出して手の上に乗せ、優しい光を放つそれを見つめる。

でも俺は、折られてないよ。
絶対に帰るから、待っててください、南原さん。

手の中の星にそっと口づけを落とし、再びシャツの下にしまうと、俺は簿記の教科書を開いた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

普段は優しいけど夜はドSのDOM彼氏ができました

いちみやりょう
BL
▲Dom/Subユニバースの設定をお借りしてる上にもしかしたら変えてしまっているかもしれません▲ 「んっ、はぁ……はぁ」 「いいこですね。ほら、Look目をそらさないで」 先生を見つめると優しく微笑んで頭を撫でてくれる。 「えらいですよ。いいこ、いいこ」 その僕を褒める声が低く心地いいから、僕はすごく安心するんだ。 先生と付き合える人はどんな人なんだろう。 きっとすごく可愛いsubなんだろうな。 神崎先生はものすごく優しいプレイをするし、きっとパートナーは甘やかしたいタイプなんだろうなぁ。 そう、思っていたのに……。 「やっぱり透はドMだったんですね。Cum《イけ》、イきなさい、透」 「ぁぁああ、ぁ、ん」 「Cum《イけ》、Cum《イけ》 ……ああ、イってる最中の透の中、うねうねして最高に気持ちいいですよ」 「はぁ、んぁ、もう、むりぃ……んっぁ」 「無理? まだ大丈夫でしょう? ほらCum《イけ》 、イきなさい、Cum《イけ》」 「ひ、んっぁぁあああ!!」 パートナーになったらこんなにドSだったなんて……。 ーーーーーーーーー

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

平凡でツンデレな俺がイケメンで絶倫巨根のドS年下に堕ちたりにゃんか絶対しにゃい…♡

うめときんどう
BL
わたしの性癖全て詰め込んでます…♡ ツンデレだけど友達もそこそこいる平凡男子高校生! 顔も可愛いし女の子に間違われたことも多々… 自分は可愛い可愛い言われるがかっこいいと言われたいので言われる度キレている。 ツンデレだけど中身は優しく男女共々に好かれやすい性格…のはずなのに何故か彼女がいた事がない童貞 と 高校デビューして早々ハーレム生活を送っている高校1年生 中学生のころ何人もの女子に告白しまくられその度に付き合っているが1ヶ月も続いたことがないらしい… だが高校に入ってから誰とも付き合ってないとか…? 束縛が激しくて性癖がエグい絶倫巨根!! の 2人のお話です♡ 小説は初めて書くのでおかしい所が沢山あると思いますが、良ければ見てってください( .. ) 私の性癖が沢山詰まっているのでストーリーになっているかは微妙なのですが、喘ぎ♡アヘアヘ♡イキイキ♡の小説をお楽しみください/////

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

【R18】男しかいない世界に転生したら最初から性奴隷でしたが、優しいご主人様に買われたのでボクは幸せです【男の娘BL】

クロバ
BL
「過去に何があったかは、聞かん。だが、もう何も心配する必要は、ない」 「ご主人様……」 ご主人様は、胸をぎゅっと掴みながら泣いているボクの顔をハンカチで優しく拭いてくれた。 男性しか存在しない世界に転生した主人公ゆうとが入り込んだ肉体は、 その世界で稀に誕生する女性に酷似した特徴をもつ「男の娘」であった。 いきなり奴隷商から性奴隷として金持ちの男に売り飛ばされてしまうのだが…… ゆうとを買ったご主人様は、 超紳士的でイケメンのオジサンであった。 次第に二人の仲は、 主人と奴隷以上の関係に発展していく。 タイトルの前に★がついている回は、エロシーン有りです。 ※大分作風が変わりますが、「男の娘」主人公の作品としてもう1つ「男女逆転世界にきたら~」という作品も連載しております。

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

処理中です...