BL 生徒会長が怖い

かのほ

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276話 説得 2

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「あ...あの、桂本さんっ...。」

俺は思いきって、桂本さんの説明を途切れさせ、自分から話しかけた。
怖くて心臓の音がバクバクと聞こえる。でも、勇気を振り絞って俺は続けた。

「どうしてそんなに、俺を次期当主にしようとするんですか? 」

俺の問いかけに、一瞬ピクリと動きを止める桂本さん。内心緊張しながら、俺はじっと桂本さんの答えを待った。

昨日の夜、ずっと考えてた。
今の状況。どうすればいいのか。俺にできること。逃げることも、戦うこともできない俺には、何ができるのか。
そして、一つの答えを出した。

桂本さんや父さんと話し合い、説得する。

ここから上手く脱出できたとしても、桂本さんはまた俺を追ってくるだろう。だから、本当の意味での自由を得るためには、桂本さんや父さんに諦めて貰うしかない。

欲を言えば、ここから逃げて南原さん達と合流してから説得を試みたいところだが、脱出できない以上一人でやるしかない。

だって、これ以外の方法は、今の俺には無いのだ。

上手くやらなきゃ...。

その為にはまず、桂本さんや父さんが考えていることを知らなければならない。

「それが私の仕事だからです。無駄口を叩いてないで、大人しく説明をお聞きください。」

「...じゃあ、どうすればここから解放してくれますか? 」

桂本さんは、短く答えただけだったが、無回答じゃなかったことにひとまず安心。
教科書を見るように指されるが、俺は怯まず次の質問を投げ掛けた。

「...私は茂さんの意思に従います。それが旅館坂北屋のためだと信じておりますので。」

ってことは、桂本さんか父さんのどちらか一方でも説得できれば、ここを出られる可能性がかなり高くなるということか。

父さんが俺の自由を許してくれれば、桂本さんは多分それに従う。逆に桂本さんが父さんの意思に反して俺の味方をしてくれれば、セキュリティなどの操作をしてもらい脱出ができる。

できれば二人とも説得したいが、今はそこまで考えられない。とにかく、情報を集めないと。

「いい加減勉強を始めますよ。これ以上の私語は目隠しです。」

「ひゃっ...! 」

思考を巡らせていると、脅しとともにペチンと手の甲を物差しで叩かれ、椅子からぴょんっと飛び上がるほど大袈裟にビクつく。
これ以上は流石にマズイと悟った俺は、仕方なく視線を教材に落とした。



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