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268話 目隠し 2
しおりを挟む「や、だ...なに、どこ行くんですか...? 」
両手を背中でひとまとめに縛られ、視界を奪われた俺は、桂本さんに背中を押されながら廊下を歩いている。
それだけで脚はガクガク震え、涙で目隠しの布が濡れた。
「さぁ? どこでしょうね。」
どこに行くのか、何をされるのかは分からないけれど、このままついていったら絶対に酷い目に遭わされる。それだけは確かだ。
そんな状況で、何も見えず、行き先も告げられないまま歩かされるというのは、かなりの恐怖を伴う。
「ゃ...こわい、こわいっ...目隠しと手、取ってくださいっ! 」
嫌で、怖くて、切羽詰まった声で解放を乞いながら、俺はついにその場にぺたんとしゃがみこんでしまった。
暗闇が、怖い。
いつ、何をされるのか、分からないから。
不意打ちで来る痛みを受け入れるしかないから。
しかし、桂本さんに髪の毛を引っ張られると、痛くて嫌でも立ち上がるしかない。
「駄目です。しっかり反省していただかなくては。」
「うぅ...! 反省なんて...俺はっ...! 」
俺は、亜奈月の皆と普通の高校生活を送りたいだけなのに。なぜ、したくもない転入試験のための勉強に集中できなかったことを反省しなければならないんだ。
なんとか、お仕置きを逃れる方法はないかと必死に考えるが、良い案は浮かばず。
そうこうしてるうちに後方でドアが閉められたような音がした。どうやら、どこかの部屋に着いてしまったらしい。階段は使っていないから、最上階のどこかにいることになるけど...。
「えっ...? 」
水の音?
ジャーと蛇口から水が出ているような音が聞こえる。ってことは、ここは洗面所か。
この最上階は、ほとんど俺と父さん以外は使わない生活スペースになっている。ここもその一つだ。
けど、お仕置きでここへ連れて来られるってことは...?
「な、に...するんですか...? 」
弱々しい俺の問いに、答えは返ってこない。
代わりに髪の毛を掴まれて、後頭部をグッと押さえつけられ。
「痛っ...なに、や...うっ! 」
ガボガボガボッ!
えっ、なにこれ、水っ...!?
苦しいっ...息できないっ!
あまりに突然のことに、息を止めることすらできない俺は、一瞬訳がわからずジタバタと暴れる。そして、口や鼻から流れ込んでくる水に、ようやく頭を水に浸けられているのだと理解した俺は、がぽがぽと空気を吐き出しながら、必死に顔を上げようともがいた。
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