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261話 終業式の日 9
しおりを挟む旅館に着くと、まず裏門から入り、中庭を囲うような造りで本館の向かいにある別棟の中の、支配人室へ連れて行かれた。
父さんや従業員は、ほとんど住み込みで働いているため、こちらの棟は従業員用で、生活スペースになっている。あとは、料理を用意したり、洗濯やその他の裏方作業もこちらの棟でやっている。
久々の旅館は、相変わらず見事なまでの上品さと美しさで、俺は、懐かしさと不安感を同時に抱いていた。
「茂さん、私です。透さんをお連れしました。」
コンコンと支配人室の扉を数回ノックし、丁寧な口調で中へ語りかける桂本さん。「入れ。」と短い返事が帰ってくると、「失礼します。」と扉を開けてくれた桂本さんに促され、中へ入った。
すると、社長椅子に腰掛ける父さん、旅館坂北屋の現支配人坂北茂が、悠然とした態度で俺を迎えた。
「久しぶりだな、透。底辺高校でもしっかりやっているようで安心したよ。当然だが、成績は学年一位を保っているそうじゃないか。」
「...俺に何の用? 」
嘲るような父さんの口調に腹立たしさを覚えつつ、そんな話をするために俺を呼んだ訳じゃないんだろ、と睨み付ける。
さっさと要件を済ませてもらって、早く帰りたい。
早く本題を言えと態度で示す俺を一笑した父さんは、ふと、大きな社長机の引き出しから、幾つかの冊子のようなものを取り出して差し出してきた。
「っえ...? これ...」
どういうこと...?
それを受け取って確認した俺は、その場で固まった。
なぜなら、手元の冊子の表紙には大きな文字で『私立有風高等学校 パンフレット』と書かれていたからだ。
なんで今さら他の高校のパンフレットなんて...。俺はもう、亜奈月高校に通っているのに。
嫌な汗が背中を伝う。
まさか。でも、なんで...?
「透。夏休みが明けたら、二学期からはそこへ通え。」
「っ...! 」
あまりに突然のことに、衝撃を受け息を飲む。
「なん、で...? 」
動揺しきっている俺は、それでも、なんとか聞き返した。
「有名財閥や政治家の子供までいる優秀な学校だ。今の高校にいるよりはずっといいに決まっている。」
「違うっ...! 俺にとって亜奈月高校は、やっとできた大切な居場所なんだよ。転校なんて、絶対に嫌だ! 」
気がつくと俺は、父さんに向かってそう叫んでしまっていた。
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