BL 生徒会長が怖い

229話 結果 2

「高橋。これまで通り、お前に付きまとわせろ。それだけ聞いてくれればいいぜ。」

「っ...は...？ 」

これまで...通り...？

俺は、予想外の言葉に耳を疑った。

「な、なんでだよ...！ お前はっ...」

お前は俺と付き合いたいから、こんな勝負をしたんだろう。最初から「付き合え」って言うって宣言してたくせに。
俺だって覚悟できてたのに。

なのに、今まで通りじゃ、この勝負の意味がない。

「俺は自分で思ってた以上に、お前の心が欲しいらしい。しょーがねぇから、お前が俺に惚れるまで待っててやるよ。絶対に落としてみせっからな。」

やけに涼しく感じる夏の風が、俺たちの間を通り抜けていく。清々しく笑う東山とは対照的に、俺の心は晴れないでいた。それどころか、むしろもやもやと影が差していくようで。

なんで、なんで。

俺の中ではそんな言葉ばかりが渦巻いていた。

だって、おかしい。

付き合うのは待ってくれるって、こいつは言ったのに。俺の気持ちを汲んで、これまで通りでいいって言ってくれたのに。

俺は、納得できない。

「ククッ、なんだよその顔。もしかして、付き合えって言われるの期待してたか？ 」

東山の言葉にギクリとする。

期待なんて、してない。
してないはずだ。

だって俺は、好きとかそういうの、分かんなくて、ましてやこいつと付き合いたいなんて思うはずがなくて。

テストだって、勝つために全力で頑張った。

でも、負けたときのことを、全然考えなかったわけじゃない。
もし負けて付き合うことになったら、こいつに抱き締められたり、キスされたりするのかな、とか、考えてしまう時もあった。
しかも、それが、嫌じゃなかった。

むしろ、今は...。

その時、ふと、保健室でこいつに言われた言葉が頭をよぎる。

『バカの癖にややこしく考えてんじゃねーよ。』

そうだ。
あの時、ちゃんと、自分の気持ちから逃げないって決めたじゃないか。

「そんじゃ、久しぶりに一緒に帰ろうぜ。」

「東山っ...！ 」

階段に向かい足を進める東山のシャツを、咄嗟にガシッと掴んで引き止める。

「あ...」

「高橋？ 」

怪訝そうな東山の顔に手が震えて、心臓もバクバクと脈打ち壊れてしまいそうだ。

もう目を逸らさない。
俺がこんな風になってしまうのは、東山だけ。
こんなに心が乱されるのも、心臓がバクバク煩いのも、悩んであれこれ考えてしまうのも、時折胸が苦しくなるのも、全部、東山だけだ。

恋愛なんて、したことなくて、好きとかそういうの分からない。
でも、多分これが。この気持ちが。

「俺...東山が...好きかもしれない...」