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218話 期末テスト 14
しおりを挟む東山さんは、本気で高橋のことが好き。
高橋も、自覚してないけど東山さんのことが好き。
なるほど。だから、「さっさとくっつけばいい」のか。
ややこしく見えていたけれど、一つ一つ紐解いていくと、案外単純だ。さすが西村さん。すごい分析力だ。
「それじゃあ、俺にできることは何もないんですね...。」
俺が高橋に自覚させようとしたとして、きっと高橋は認めない。それどころか、気持ちにかけてしまっている鍵をもっと頑丈に固く閉ざしてしまうかもしれない。
「うーん、そうだね。今回はへたに手を出さない方がいいかも。二人のためを思うならね。」
そっか...。
高橋はいつも俺のために何かと行動を起こしてくれていたから、俺も何かしたかったんだけどな。そう思うとちょっと悔しい。
せめて、二人が上手くいくように、影から見守っていよう。
「でも、それじゃつまんないよね~。」
「は、はい!?」
つまんないって何だ。
そう思って顔を上げると、親切な恋のキューピッドだった西村さんはどこへやら、いたずらっ子のような笑顔がそこにあった。
「俺としてはちょっかい出してややこしくする方が面白いと思う! なんか、このまま上手くいっちゃうのつまんないよ。」
「だっ、だめですよ! 面白さなんていりません! 」
高橋を困らせるつもりなら、俺が全力で阻止するぞ、と西村さんを睨み付ける。
「えー、どーしてもダメっていうなら、こっちを邪魔しちゃおうかなー?」
「は...? こっちって...」
不意にテーブルを回って俺の方に歩いてくる西村さんが、なんだか不穏な空気を纏っている気がして、そっと後ずさる。
しかし、戸惑ってる間にガシリと手を掴まれて、逃げられなくなってしまった。
「坂北くんと、南原。」
「ひっ...!? 」
ふーっ、と耳に息をかけられて、ゾワゾワという寒気に似たようななんともいえない感覚が体を襲い、変な声が出た。
や、やだ...なに?
「西村。」
そこへ、南原さんのドスの効いた恐ろしい声が聞こえてくる。と、思ったら、いつの間にか掴まれていたはずの俺の手は開放されていて。
「うぁ、痛い痛い、うそうそ冗談ですごめんなさい! お前相手じゃ当て馬にもなれないから俺!」
俺を掴んでいた西村さんの手は、南原さんによって背中でひねりあげられ、さらに髪の毛を鷲掴みにされた西村さんは、苦しそうに顔をしかめていた。
「わかってるなら坂北くんに手を出すな。」
南原さんは、呆れたようにため息をつきながら手を離すと、西村さんと俺の間に割って入り、息を吹き掛けられた方の耳をペロリと舐めてくる。
「ひゃっ...ちょ、なんですかっ...!」
「消毒だ。」
ニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべる南原さんに、俺は羞恥で言葉が出ず、真っ赤な顔で口をぱくぱくさせていた。
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