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190話 遊園地 9
しおりを挟む「もう、暗くなってきちゃいましたね。」
「そうだな。」
午後は...本当に、デートみたいだった。
お昼に二人と別れた後、俺達はまたアトラクションに乗ったり、噴水やイベント、展示品などを見て回ったりして、充実した時間を過ごした。
移動する時、決まって手を繋いでいたこととか、はしゃぐ俺の隣で嬉そうに微笑む南原さんとか、ドキドキして、幸せすぎて、どうにかなりそうだった。
でも、それ以上のセクハラとかは何もしてこなくて、俺が遊園地をしっかり楽しめるように考えてくれてたんだなって思う。
いつも変態鬼畜ドSなのに、こういう時ばっかり優しくて。
ほんと、ずるいなぁ...。
少し前まで、南原さんと遊園地で遊んだりするなんて、考えられなかった。
初めて会ったときは、怖くて、大嫌いで。
でも今は...大好き。
「今日が終わらなければいいのに...。」
俺は、小さく呟いた。
ずっとこのまま、何にも囚われることなく、自由に笑っていられたら...。
「...きたくん、坂北くん? 」
「えっ、あ、はい! あ、えっと、そろそろ高橋達と合流しなきゃですよね。」
しんみりと黙りこんでしまった俺を、不思議そうに伺う南原さんは、どこか心配そうな顔をしていて。慌ててパッと笑顔を見せる。
あの二人もちゃんと楽しめていただろうか。
スマホ、スマホ...とポケットを探ろうとすると、南原さんに、その手を掴まれた。
「南原さん? 」
「あと一個、あれに乗るよ。 」
そう言って南原さんが指したのは。
「観覧車...?」
そういえば、まだあれには乗っていなかった。
「デートといったら定番だろう? 」
「え、そうなんですか?」
「...ククッ、ほんとにお前は...。」
世間知らず、とからかわれながら、掴まれていた手をそのまま繋がれ、観覧車に向かって優しく引かれる。
「あ...」
それが、ふと何故か幼き日の記憶と重なった。
昔、遊園地に来たときも、こんなことがあった気がする。
確かあの時、この手を引いていたのは...
『透、ごめんね。桂本さん達がもうすぐ追って来ちゃうみたい。でもせっかく来たんだし、あれだけ乗ろっか。』
儚げに微笑む記憶の中のその人は、今は亡き、俺の母さんだった。
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