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156話 隠し事 22
しおりを挟む「...やはり、駄目だな。坂北くん、もう俺には関わらなくていいよ。」
...は?
え、なに、どういうこと。
俺は、すぐにその言葉の意味を理解することができなかった。
関わらなくて、いいって?
「校則も、お前が俺に歯向かって来ない限りはこのままにしておく。それでも校則を破る奴は意外といるから、性欲処理も間に合っているしね。」
なんで、そんないきなり。
「これでお前は俺に振り回されることもなく自由だ。」
「っ...! 」
自由。
俺が散々求めていたはずのその言葉は、心に冷たく響いてきた。
確かに、これで俺はもう南原さんの奴隷ではない。無理矢理抱かれたり、意地悪をされることはなくなるのだろう。
でもそれは、俺と南原さんを繋ぐものが無くなってしまうということだ。そう考えると、胸がズキズキと痛んで堪らなくなる。
いや、無くしたりなんかしない。まだ、繋ぎ止めたい。
「あ、あの、でも、たまには会いに行ってもいいですか...? 」
「...は? お前は俺が怖いんだろう? せっかく俺との関係を切れるのに、なぜわざわざ会う必要があるんだ。」
「そ、れは...。」
南原さんは、怪訝そうに俺を見る。
あ、そっか。南原さんはまだ俺が南原さんを恨んでいると思ってるのか。
確かに、南原さんのことは好きになった今でもちょっと、いや、正直かなり怖い。でも、それだけじゃない。それだけじゃないから好きになった。
いつも凶悪な視線で周囲を威圧しているけれど、たまに見せる柔らかい微笑みとか。学校では才色兼備で完璧なのに、家はちらかっていてカップ麺が常備されていたりとか。
躊躇なく人に暴力をふるう癖に、咄嗟に身を挺してまで俺を助けてくれたりとか。
もっと知りたい。みんなが知らない南原さんを。
例え怖くても、酷いことをされてもいいから、そばにいてもっと、もっと......。
「来るな。」
「っえ...」
「会いに来るな。お前がそう言うなら言い方を変えよう。もう、俺に関わるな。」
冷たく突き放すように言った南原さんの言葉に、なんで、なんでという疑問だけが頭を巡る。
そして、すぐに一つの答えにたどり着いた。
あぁ、そうか、そうだった。
「...やっぱり飽きたんですね、俺のこと。 」
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