BL 生徒会長が怖い

132話 暗闇

「それじゃ、俺たちはもう行くから。怒った南原にボコられたくないし。坂北くんはしばらくここで愛しの南原を待ってなよ。」

唖然とする俺を置いて、西村さんたちはもう体育倉庫を出ていこうとしている。

待っていても、意味はないと思うんだけどなぁ。

「愛しのって...。ここまでしてもらって悪いんですけど、南原さん、多分来ないと思います。」

確かに南原さんは、この前のひな鳥のとき、木から落ちそうになったときは助けてくれたけれど、西村さんや東山さんに変なことをされそうになったときは、助けてくれようとはしなかった。

今回だって、傍観を決め込むに決まっている。
俺なんて、どうでもいい存在なのだから。

「ふふ、きっと、前とは違うと思うよ。万が一南原が来なくても、倉庫の鍵は開けたままにしておくし、ロープも解いたんだから自分で帰れるよね。それじゃあバイバーイ。」

「あ、待っ...！ 」

勝手に首を突っ込んで来た挙げ句に俺を残して早々に去っていこうとする三人に呆れてしまう。

というか待って。ヤバい。
その扉を閉められてしまったら、ここは真っ暗だ。

俺は、暗闇がかなり苦手だ。
辺りが真っ暗だと、恐怖に震えてその場から一歩も動けなくなってしまう。

「西村さっ...！ 」

しかし、そんなことなど知りもしない三人は、倉庫の扉を完全に閉め、その足音は遠ざかっていく。

どうしよう...！

窓もなく、電気も点かない倉庫の中は、出入口が閉じてしまえば、一筋の光もありはしない。

何も、見えない。
怖いっ！

目を開けても閉じても目の前は真っ黒。

ここ、は、どこ？

心臓の音が頭に響く。
呼吸が苦しい。

鍵は掛けられていないのだから、まっすぐ歩いていけば扉を開けて出られるはずなのに、それすら出来なかった。

落ち着け、ここはただの体育倉庫。

大丈夫。

...本当に？

(透さん。あなたは坂北家の次期当主なのですよ？ これしきのこともできないとは。またお仕置き、ですかね。)

桂本さんの声が聞こえたような気がしてヒッと呻く。

桂本 亮介かつらもと りょうすけ。父の右腕であり、俺の教育係として父が雇っている人だ。
俺が暗闇を怖れるようになったのはこの人のせい。

お仕置きはいつも、目隠しをされて、体を痛めつけられていたから。