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117話 なにもされない 2
しおりを挟む南原さんからエッチをされなくなって数週間が経った。
校則も緩んだままで、友達と楽しく過ごす何気ない日々が続いている。
エッチはいまだに怖くて、全然慣れないから、もちろんされないならその方がいい。
これこそ俺が望んでいた日常。
焦がれてやまない自由......だったはずなのに...。
なんでかな。もやもやする。
* * * * * * * * * *
「別によくね? 南原なんかほっとけば。」
「けど...どうしても気になるっていうか...。」
昼休み。事情を知る高橋に、俺は相談してみることにした。久々に、屋上での昼食だ。
「確かに、あれだけ性欲の化け物だった南原がヤらねぇってのは変だよな。」
「てめぇはもうどっか行けよ! 」
最近では、当たり前のように東山さんも俺たちと昼を共にしている。
俺と高橋以外は怯えて逃げてしまうので、三人での食事が日課になった。
「東山さんは、何か知らないんですか? 」
「知らねぇよ。俺たちは別に執行部を一緒にやってるだけで、大して仲がいいわけじゃねぇしな。」
なんだ...東山さんならなにか知ってるかもと思ったのに...。
「あー、でも最近、なんかやたら不機嫌そうなんだよな、あいつ。」
「え、不機嫌? 」
「理由はわかんねぇけどな。あと、この前南原を襲撃した馬鹿な二年たちが、お仕置きとして次々にヤられてるって噂だ。ほんとかどうかわかりゃしねぇが...。俺が知ってる情報はこんだけ。」
二年生たちが、次々に...?
それが本当なら、俺に手を出さないのが、余計におかしい。性欲処理に困ってないから、俺に用はないってこと?
いや、ヤるためだけに学校を支配してしまうような性欲の化け物である南原さんが、そんな理由で俺に手を出さないとは思えない。
性欲は十分ありあまってて、禁欲もしてないとなると...。
「もしかしてお前、飽きられたんじゃね?」
「っ......!! 」
サラッと言われた東山さんの言葉が、グサリと胸に突き刺さった。
「やったじゃん坂北! もしそうなら校則緩んだままで、しかもヤられずに済むぞ!? 」
高橋が、明るい声を上げる。
「そう...だよな...!...はは...それならいいな...」
なんとか笑顔を作ったものの、俺の心は何故か晴れない。
なんで...?
俺が望んでいたことのはずなのに。
これで思う存分、遊んだり、バイトしたり、恋したり、普通の生活ができるのに。
なんで...なんで...。
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