116 / 341
116話 なにもされない
しおりを挟むおかしい。絶対おかしい。
「あれ、坂北お前、南原に呼ばれたんじゃねぇの? 」
「あーそれが...呼ばれたんだけど、なんかスマホの番号とメアド交換しただけで帰された。」
「マジかよ!! あの人が!? ま、いっか、よかったな。そんじゃお前もカラオケ行くだろ? えっと、人数は俺と坂北と宮野と今村と...」
南原さんが怪我ををしてからもう十日ほど経つ。
軽い捻挫だったので、南原さんの右手はもうほとんど治っていた。
それなのに、南原さんが全く手を出してこないのだ。お陰で俺は、こうして放課後遊びに行けるわけなのだけど...。
「おう高橋、俺も連れてけ。」
「げ...てめぇは...」
ふと、下駄箱に集合した人数を確認していた高橋が、ぎゅっと眉を寄せて嫌悪感を露にする。その視線の先には。
「「ひぃっ...ひ、東山さん!? 」」
宮野と今村の怯えたように震える声が重なった。俺も今まではすごく怖かったけど、この人が高橋に惚れていることが分かっているので、もうそんなに怖いとは思わない。
「あ、東山さん。どうもです。」
「おーっす。」
軽く会釈すると、東山さんも片手を上げて答えてくれた。
「はあぁぁ......。しつけーんだよいい加減にしろ。」
「お前が付き合ってくれるってんなら止めてやるよ、高橋。」
「ついて来るな!! 」
「まぁまぁ高橋。いいじゃん別に。何かしてくるわけじゃないしさ。」
一気に不機嫌になった高橋を宥める。
「お前もお前だよ坂北! 東山にあんなことされといてよく普通にしていられるよな。怖くねぇの? 」
「いや、今はあんまり。過ぎたことだし。それより高橋との恋の行方が気になるかな。」
「......お前、意外とメンタル強いんだな...。」
「......? そうかな? 」
まぁ、中学時代とか、家でしょっちゅう酷いことされてたし、それをいつまでも気にしていてはキリがなかった。だから俺は、終わったことをくよくよと悩み続けることがあまりないかもしれない。
「た、高橋、俺らやっぱ今日は止めとくわ。じゃーな。」
「は!? おい! 」
宮野と今村は、東山さんにビビったらしく、ぴゅーとあっという間に帰ってしまった。
「おー、俺ら三人だけかぁ。坂北もカラオケ行くんだよなぁ? 」
あ、これ俺も帰った方がいいかな。
高橋と二人きりになりたい、と東山さんの目が訴えている。
協力するって言っちゃったしな...。
あれから高橋に怪我もさせてないようだし。
「高橋、悪いけど俺も...」
「はぁ!? なんでだよ! じゃあ俺も帰る。」
「てめぇはこれから俺とデートだろ。」
「ちょっ、はなせーーー!! 」
帰り道とは逆方向にずるずると引きずられていく高橋を見送り、俺は真っ直ぐアパートへ向かった。
11
お気に入りに追加
1,057
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる