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83話 東山さん襲来 2
しおりを挟む「ひ、東山、さん...?」
「おう、久しぶりだな。」
教室に我が物顔で入ってきて、俺達の近くまで来る東山さん。その威圧的なオーラに、俺たちはギクッと身構えた。
一体、なんの用だろう...。
「それから、そっちのお前も。もう痣も傷も治っちまったんだな。また付けてやろうか?」
ギラリと光った視線が、高橋に向く。
「っ...!ざけんな死ね!」
嗜虐心に満ちたその目に高橋は、悪態を吐きながらもビクリと震えていた。
痣や傷というのはおそらく、俺が南原さんと取引をした次の日、高橋の体にあったそれの事だろう。
なんで、東山さんも南原さんも、そんなにあっさりと人を傷つけられるの...。
怒りがこみ上げて来るが、今更喧嘩をしたってどうにもならないのでグッと堪える。
「は、早く行こーぜ坂北。」
さっさとこの場を切り上げたいのか、俺の手を引いてくる高橋。その手は恐怖からか緊張からか、じっとりと汗ばみ冷たく震えていた。
東山さんにはあまり良いイメージが無い。縛られていた俺の体を弄ぼうとしてきたり、高橋に酷いことをしたり、むしろ印象は最悪だ。
できる限り関わりたくないというのが俺の本心なので、高橋に引かれるまま退散しようとする。
が、そうもいかない。
「お前らはいいが、こいつは駄目だ。俺は坂北に用があって来たんだよ。」
「わっ...!」
東山さんに、高橋が掴んでいる方とは反対の手をグイッと強めに引かれ、ふらついた。
その手は固く握られてしまって振りほどけそうにない。
こ、怖い...!
「くそっ!坂北から手ぇ放せ!」
俺も、一刻も早く東山さんから解放されたいので高橋に同意だ。放して欲しい。
「ククッ、お前こそ、こいつから手を放せよな。さもないと...」
「っ...!!?い、痛い痛い!!やっ...やめてくださっ...!!」
すると東山さんは、バカみたいに強い力で俺の腕を引き始めた。反対の手は高橋に掴まれているので、まるで綱引きのように両側から引っ張られている状態。
裂けるような肌と肉の痛みに加え、ミシミシと外れそうな肩に涙目になる。
「っ...!さ、坂北、ごめ...!」
そんな俺の様子を見て、慌てて手を放す高橋。
反動で、俺は東山さんの胸に飛び込んでしまった。すかさず抱き止められ、捕まってしまう。
恐怖に体がカタカタと震えた。
「あーあ、お前がさっきすぐに放していれば、坂北は痛い思いをしずにすんだのにな。」
責めるような言葉を浴びせて、高橋の罪悪感を高めていく東山さんの性格の悪さは、南原さんといい勝負だ。
「っ!わりぃ坂北...大丈夫か?ほんとごめん...。」
そして高橋は、東山さんの思惑にひっかかり、何も悪くないのに気の毒なほど青い顔をする。
いやいや悪いのは東山さんだから。
「俺は大丈夫だし、そんな顔するなよ高橋...!」
なんとか高橋を安心させるために、震える体を必死に静め、気丈に笑いかけて見せた。
上手く、笑えてたかな...。
「じゃあこいつは貰ってくぜ。」
「うわっ!?や、俺、行きたくないです...!下ろしてください!」
俺は突然、東山さんにひょい、と肩に担がれたかと思ったら、あっさり運ばれていく。
「「坂北!」」
焦る高橋と宮野の声が重なった。
他のみんなも心配そうに、ハラハラと俺達の様子を見ている。
「ふん、いいかお前ら。追ってきたら坂北がいたぶられると思え。」
「っ...くそっ...!」
俺は、なんとか逃げようと手足をばたばたさせて暴れるが、
「そんなに暴れると、さすがの俺でも手が滑って、落としちまうかもしれねぇよ?階段とかで。」
という恐ろしい一言でピタリと止めた。
なんなんだよ...。折角高橋達と遊べると思ってたのに。
悔しいけど、こうなってしまっては抵抗する方がリスクが高そうなので、俺はおとなしく拐われて行くことにした。
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