BL 生徒会長が怖い

68話 お泊まり 5

「坂北くん、まずは体を洗おうか。手が使えないお前の代わりに俺が洗ってあげるからね。」

シャワーの温度を調節しながら俺に目をやる南原さん。俺は、何も言わずに俯いていた。
だんだん室内が湯気で曇ってくる。

「ほらここに座れ。シャンプーするから。」

そう言って指された風呂椅子に、仕方なく腰を下ろした。南原さんも俺の後ろに座り、すぐにちょうどよい温度のお湯をかけられる。それだけで、俺はビクッと震えてしまった。

南原さんは、シャンプーを手にのせ、俺の頭をくしゅくしゅとマッサージするように泡立てていく。指先で頭皮を優しく撫でられ、思ったより心地良い。

あー、南原さんの匂いだ...。

「ククッ気持ちよさそうな顔をして。可愛いな。」

「えっ...そ、そんな顔してました！？」

そうだ、呑気に癒されてる場合じゃない...！
南原さんとお風呂なんて、絶対何かされるに違いないんだ。両手拘束されてるし、ただ洗われて出られるなんてあり得ないだろう。

「流すよ。下向いて。」

「は、はい。」

俺は不安な気持ちで流れていくシャンプーを眺めていた。



「あの、やっぱり体も、洗うんですか...？」

「当たり前だ。」

シャンプーを流し、ご丁寧にリンスまでしてくれた南原さんは、愉しそうに手でボディーソープを泡立てていた。

「お、俺は別に、一日くらい洗わなくたって平気ですけど...。」

「ふ、そう遠慮するな。優し～く洗ってやるよ。」

「遠慮じゃないですっ！」

後ろでニヤリと笑う気配がして、嫌な予感しかしない。

「怯えなくてもいい。俺は本当に洗うだけのつもりだから。俺は、な。」

「そんなん絶対嘘っ...！ひっ！！！！」

言い終わる前に、スルッと泡のついた両手で肩の辺りを撫でられ、大袈裟なほど体が跳ねた。

全身緊張と恐怖でカタカタ震える。

「や...やだ...やだ...。ひ...ぅ...。」

首、腕、背中。南原さんの手がヌルヌルと体を這っていき、擽ったいような感覚に身を捩った。

「ククッどうした坂北くん。そんなに体を厭らしくくねらせて。」

「違っ...！だって南原さんが...っ！」

変な触り方をしてくるから。
背骨の辺りを、触れるか触れないかという絶妙な加減で、つーっとなぞられれば、「んああぁっ！」と一層高い声を上げてしまう。

「んー、いい反応。さぁ、次は前を洗おうか。」

そう聞こえたらと思ったら、いつの間にか南原さんに後ろから抱きしめられるような形になっていた。

「や...だ...待って...こわい...おねがいします......まって...。」

弱々しい俺の声は、よく響くお風呂場に反響して、俺をより惨めな気分にさせたのだった。