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61話 仮初めの時間 2
しおりを挟むユーフォーキャッチャー、プリクラ、メダルゲーム、その他、心踊る面白そうな機械たちが集合しているガヤガヤと楽しげな空間。
ここが...。
「ここがゲームセンターかぁ...。」
「げ、マジで言ってんのか坂北...?」
「遊んだことないってほんとだったんだな。」
思わず感嘆の声が漏れた俺に、クラスメイトたちは苦笑した。
皆で、この放課後どこへ行こうか相談していた時。こんな風に友達と何処かに来るということがなかった俺を気づかってか、色々遊べるゲームセンターにしようと高橋たちが決めてくれた。
そして今、テレビやネットでしか見たことないそれらが今目の前にあると思うと、興奮して抑えがきかない。もし俺達以外に人が居なかったら、子供のようにはしゃいでしまっていただろう。
なんとか理性を保ち、皆と歩幅を合わせて店内をうろつく。
わくわくしながら周りを見回していると。
「なぁ!これ取れそうじゃね?」
そう言ってユーフォーキャッチャーの前で足を止めたのは、この前皆が仮病で南原さんを欺こうと演技の練習をしていたとき、無駄に巧い咳を披露しドヤ顔をしていた宮野だった。
ケースの中では、決してセンスがいいとは言えない微妙なデザインをした大きな熊のぬいぐるみが、半分穴にせり出していた。商品名は、がっくまさん?
確かに取れそうかも...。
「そうかぁ?ユーフォーキャッチャーって無駄に金が消えてくイメージしかねぇから俺はやんない。」
「はぁ!?お前こそこういうの好きそうじゃん!」
「やりまくったから怖さを知ってんだよ...。」
行こーぜ、と高橋は俺の手を引く。
「それお前が下手なだけじゃね?このぬいぐるみずっと欲しかったやつなんだよなぁ。可愛いじゃん?がっくまさん。この落ち込んだ表情がたまんねー!!慰めてやりてー!!坂北もそう思わねぇ!?」
「え!?いや...俺は別に...。」
はっきり言って宮野の趣味には共感できない。
急に話を振られてどもってしまった。
「う~...。じゃあ一回だけプレイして取れそうだったら取れるまでやる!」
宮野は、百円を投入すると、慎重に慎重にアームの位置を調節していく。
「ったく...。坂北、俺らはメダルでも...」
「あ、ごめん高橋待って。俺、宮野がやってるとこ見たい。」
俺は、間近でプレイされるユーフォーキャッチャーに興味津々だった。
頑張れ、宮野!
邪魔をしないようにと、心の中で応援する。
しかし。
がっちり掴んだと思ったアームから、がっくまさんはするりと抜けて、もとの位置に戻ってしまった。
「あああぁ......俺の百円と、がっくまさん...。」
「ほらな。こんなんぜってー無理だっつーの。アーム激弱じゃねーか。」
なるほど、確かに難しそう...。アームってこんなに力が弱いのか。掴んで移動させるのは多分無理。かといってちょっとずつ移動させたら一体いくら掛かるのか。
あれ?でもこれ、もしかしたら...。
「あのさ、俺もやってみてもいい?」
「はあ!?坂北までなにいってんだ...。」
別にこのぬいぐるみが欲しいわけでもないし、失敗して取れなくてもいい。
ただ単純に、見てたらある方法を思いついたので、試してみたくなったのだ。
俺は百円を投入し、操作ボタンに指を乗せた。
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