BL 生徒会長が怖い

38話 取引

すー、はーと深い呼吸で恐怖に脈打つ鼓動を落ち着ける。

大丈夫。書き置きの取引について話すだけ。怖いことなんてない...とは言い切れないけど、それでもここで逃げたりしたくなかった。

緊張しつつ、思いきって生徒会室のドアを開ける。そーっと中を覗くと、長い足を組んで椅子に座る南原さんと目が合った。

「へぇ、来たんだ。怖がりなくせに、いい度胸だな坂北くん。」

「よ、呼んだのは南原さんですよ。」

「ククッ、取り合えずこっちに来て座りなよ。」

俺はドアを閉めて、机を挟んだ向かい側の椅子に腰を下ろした。
東山さんと西村さんは居ないようで少し安堵する。

「あの、取引って、何ですか？」

「ふはっ、いきなり本題か。」

俺から話をきりだすと、南原さんは愉快そうに笑った。

だって俺は、一刻も早くこの場を立ち去りたいから。無駄に長く居心地の悪いこの空間に居たくない。さっさと話してさっさと帰りたいのだ。

「取引は校則についてだ。俺の手によって過度に厳しくなった校則を、緩めてやってもいいと思ってね。」

「......」

「どうした？嬉しくないのか？」

無言の俺を南原さんが覗きこむ。
 
校則が緩むのは嬉しい。だけど、取引、ということは、校則を緩める代わりに何かを要求されるということだ。

「まだ喜べません...。だって取引でしょう？条件は、何ですか？」

まぁ頑なに拒否されていた昨日までよりはマシな状況になったとは思うけど。手放しで喜べるほど良いわけではない。

「ふ、お前は他のアホ達と違って賢いな。条件は一つだ。」

一体何を、と息を飲む。
どうか簡単なのでお願いします...！

無意識にすがるような目で南原さんを見つめてしまった。

「坂北くん、お前が俺に絶対服従する事。これだけだよ。」

わざとらしく作られた南原さんの爽やかな笑顔と発せられた言葉に、ただただ凍りつく俺。

なに、どういうこと？