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29話 発熱
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「やだっ...!やめてください...!」
脚、腹、胸、首筋。俺の全身を三人もの手が嫌らしい意図を持って這っていく。
「もう、や...。こ、怖い...。」
嫌悪感と不快感でゾワゾワと鳥肌がたった。
「ひ、こわい...!うぅ...こわいよ...。ばか!南原さんのばかぁ!ふええぇん!」
寒くもないのに震えっぱなしの俺の体はもう上手く力が入らない。もし今手足のガムテープを外されたとしても帰れないかもしれない。暴言を吐きながら俺は泣きじゃくった。
「お前はまた...。次に暴言を吐いたら殴るからね。」
「うるさいばか!!今回は無理だったけど、いつかぜったい、こんなこと止めさせてやるんだからな!...っく...えぐっ...けほけほっ!ふえぇ...」
殴られるのは怖い。だけど、暴言でも吐いてなきゃ、こんな絶望の中で、自分を保てそうになかった。自分に触れる六つの手に混乱して、払いのけたいのにどうしようもない。だからせめて、唯一自由な口で些細な抵抗を。
「坂北くんは、怖がりなくせに気が強いんだね。不器用で可哀想。」
南原さんは無表情になり、大きく拳を振り上げた。
また殴られるっ!
この後来る受け入れるしかない衝撃に緊張して、無意識に息を止める。
目を瞑って歯を食い縛ったその時。
「ストップ南原!」
え...西村さん...?
意外な救いの声に驚いて一瞬恐怖を忘れる。
「なんだ西村。今さらやっぱり暴力は嫌だとか我が儘を言うつもりか?だったらこのお仕置きから抜けて今すぐ帰ればいいだろ。」
「違う違う。そうじゃなくて、なんかこの子の体、熱くない?」
「は?」
「熱、ある気がするんだよね~。体調崩しちゃってるんじゃない?」
熱...?
確かに、昨日と今日は俺にとっては、刺激が強すぎて精神的に大分限界だった。体調を崩していてもおかしくないかもしれない。
この切羽詰まった状況で、俺自身は気づいていなかったけど、意識すると分かる。体の感覚がなんだかフワフワして気持ち悪い。頭も痛いし、息も少し苦しかった。
「熱!?...ったくこれからが良いところなのによぉ...。」
東山さんは不満そうだけど、大人しく手を引いてくれる。西村さんも仕方ないね、とあっさり放してくれた。
「うわぁ...。どうやら本当に熱があるみたいだな。今日のところは止めておくか。万が一死なれても困るし。」
南原さんも、俺の額に手を当てて直接体温を確かめた後、渋々拘束を解いてくれた。
なんだ。体調不良を訴えればこんなにあっさり止めてくれたのか。さっきは焦ってて全然そんな事は思い付かなかったが、実際に熱を出して危機を回避できたのは運が良い。
これで今日は犯されることはない。ホッとしたら突如、強い睡魔が俺を襲った。昨日からずっと気を張っていたから疲れも溜まっていたのだろう。
瞼が重くなっていき、強力な眠気に逆らえなくなっていく。
「そういえばこいつ、こんな状態で今日家まで帰れるのか?」
薄れ行く意識のなかで、南原さんの声が遠くに聞こえた。
脚、腹、胸、首筋。俺の全身を三人もの手が嫌らしい意図を持って這っていく。
「もう、や...。こ、怖い...。」
嫌悪感と不快感でゾワゾワと鳥肌がたった。
「ひ、こわい...!うぅ...こわいよ...。ばか!南原さんのばかぁ!ふええぇん!」
寒くもないのに震えっぱなしの俺の体はもう上手く力が入らない。もし今手足のガムテープを外されたとしても帰れないかもしれない。暴言を吐きながら俺は泣きじゃくった。
「お前はまた...。次に暴言を吐いたら殴るからね。」
「うるさいばか!!今回は無理だったけど、いつかぜったい、こんなこと止めさせてやるんだからな!...っく...えぐっ...けほけほっ!ふえぇ...」
殴られるのは怖い。だけど、暴言でも吐いてなきゃ、こんな絶望の中で、自分を保てそうになかった。自分に触れる六つの手に混乱して、払いのけたいのにどうしようもない。だからせめて、唯一自由な口で些細な抵抗を。
「坂北くんは、怖がりなくせに気が強いんだね。不器用で可哀想。」
南原さんは無表情になり、大きく拳を振り上げた。
また殴られるっ!
この後来る受け入れるしかない衝撃に緊張して、無意識に息を止める。
目を瞑って歯を食い縛ったその時。
「ストップ南原!」
え...西村さん...?
意外な救いの声に驚いて一瞬恐怖を忘れる。
「なんだ西村。今さらやっぱり暴力は嫌だとか我が儘を言うつもりか?だったらこのお仕置きから抜けて今すぐ帰ればいいだろ。」
「違う違う。そうじゃなくて、なんかこの子の体、熱くない?」
「は?」
「熱、ある気がするんだよね~。体調崩しちゃってるんじゃない?」
熱...?
確かに、昨日と今日は俺にとっては、刺激が強すぎて精神的に大分限界だった。体調を崩していてもおかしくないかもしれない。
この切羽詰まった状況で、俺自身は気づいていなかったけど、意識すると分かる。体の感覚がなんだかフワフワして気持ち悪い。頭も痛いし、息も少し苦しかった。
「熱!?...ったくこれからが良いところなのによぉ...。」
東山さんは不満そうだけど、大人しく手を引いてくれる。西村さんも仕方ないね、とあっさり放してくれた。
「うわぁ...。どうやら本当に熱があるみたいだな。今日のところは止めておくか。万が一死なれても困るし。」
南原さんも、俺の額に手を当てて直接体温を確かめた後、渋々拘束を解いてくれた。
なんだ。体調不良を訴えればこんなにあっさり止めてくれたのか。さっきは焦ってて全然そんな事は思い付かなかったが、実際に熱を出して危機を回避できたのは運が良い。
これで今日は犯されることはない。ホッとしたら突如、強い睡魔が俺を襲った。昨日からずっと気を張っていたから疲れも溜まっていたのだろう。
瞼が重くなっていき、強力な眠気に逆らえなくなっていく。
「そういえばこいつ、こんな状態で今日家まで帰れるのか?」
薄れ行く意識のなかで、南原さんの声が遠くに聞こえた。
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