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第一章
第十九話 よくわかんないです
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確かに一八も、魔法やそれに近しい能力を行使するのに、その燃料になる魔力や生命力とかがあるという、システム的なものが存在するのは漫画などを読んでいてなんとなく理解している。
『魔力エネルギーが枯渇しかけていることを知り、生命力を代わりに消費していました。ですが先日、身動きがとれなくなってしまいまして、そこで一八さんと出会ったのです』
(いいタイミングだったんですね)
あのとき一八が出会わなければ、食事をとるのも大変だったのだろう。彼はその程度に思っていた。
『いえ、その、それだけではなくてですね。あのとき偶然、いただいた魚を媒介にして、一八さんの血をいただいてしまったのです』
(そうなんですね。でもそれがどんな問題になっているんです?)
『ワタシたちの星で言うところの「血の盟約」を結んだ状態になってしまいまして、その、大変申しわけありませんでした』
『オレも、まさかとは思っていたが、本当に申し訳ない』
(それって僕に何かあるんですか?)
『例えばですね、吸血鬼の物語がありますよね?』
(はい。似たようなものは読んだことがあります)
『一八さんはワタシたちの「眷属」と同じ状態になっているかもしれないんです。本当にごめんなさい……』
(それってどういうことですか? 何かまずいことでもありますか?)
『例えば、食事の度に触れて、少しだけ体力をいただいたり……』
(あ、あのときの少しだけくらっとする感じ。でもすぐによくなるんですよ。あれってそうだったんですね)
『はい。少しずついただいておかないと、その、「何かあるとき」に術が使えないものですから』
(術、ですか?)
『ワタシはですね、「恐れの術」という、相手に悪夢を見せることができる術を持っています』
(それってそれって、魔法ですか?)
一八はわくわくしてきている。ただでさえ、阿形と吽形が異星人だという事実だけでも楽しくて仕方がないのに、魔法まで出てくるともう大変。
『こちらの世界で簡単にわかりやすく説明するならそうなりますね』
(なるほどー。それで僕には、何か変わったところがあるんですか?)
『ワタシが知る限りですが、何割か元の身体からワタシたち寄りの身体になってしまったようです』
(……え?)
『例えばですが、傷が治りやすかったりとか、疲れが出にくくなったりとか』
(よくわかんないです。今のところ)
『先日指を怪我されたと思いますが、あのときの傷は、どれくらいで治るものなのでしょうか?』
(あ、そうですね。普通は一週間くら――あれ? 傷が全くないんですけど?)
『そういうことですね。あとですね』
(はい)
『一八さんがワタシたちの眷属ということになってしまっていますので』
(……そういえばそうなんですよね)
『これまでのように、食事と魔力のお世話になっておりますので』
『一八君、海老、もの凄く、美味しかった。本当にありがとう』
『え、えぇ、美味しかったです。食べているときはもう、夢中になるほど――あなた、ワタシが一八さんにご説明いたしているときに』
『いやそのだね、お礼を言うタイミングがなかなかとれなくてな』
(あははは)
『とにかくですね。今は見守るくらいしかできませんが、ワタシと夫はいつか、このご恩に報いるつもりです』
(いえいえそんなことは気にしないでください。それでそれでですね)
『何でしょうか?』
(僕にもその、魔法って使えるようになるんでしょうか?)
『教えてみないとなんとも言えません。ですが、現時点で人知を超えている身体になっていることは間違いありません。ただし、ですね』
(はい?)
『傷の治りを確認するのに、わざと怪我をしようとか。そういうのは駄目ですからね?』
(わかりました)
『魔力エネルギーが枯渇しかけていることを知り、生命力を代わりに消費していました。ですが先日、身動きがとれなくなってしまいまして、そこで一八さんと出会ったのです』
(いいタイミングだったんですね)
あのとき一八が出会わなければ、食事をとるのも大変だったのだろう。彼はその程度に思っていた。
『いえ、その、それだけではなくてですね。あのとき偶然、いただいた魚を媒介にして、一八さんの血をいただいてしまったのです』
(そうなんですね。でもそれがどんな問題になっているんです?)
『ワタシたちの星で言うところの「血の盟約」を結んだ状態になってしまいまして、その、大変申しわけありませんでした』
『オレも、まさかとは思っていたが、本当に申し訳ない』
(それって僕に何かあるんですか?)
『例えばですね、吸血鬼の物語がありますよね?』
(はい。似たようなものは読んだことがあります)
『一八さんはワタシたちの「眷属」と同じ状態になっているかもしれないんです。本当にごめんなさい……』
(それってどういうことですか? 何かまずいことでもありますか?)
『例えば、食事の度に触れて、少しだけ体力をいただいたり……』
(あ、あのときの少しだけくらっとする感じ。でもすぐによくなるんですよ。あれってそうだったんですね)
『はい。少しずついただいておかないと、その、「何かあるとき」に術が使えないものですから』
(術、ですか?)
『ワタシはですね、「恐れの術」という、相手に悪夢を見せることができる術を持っています』
(それってそれって、魔法ですか?)
一八はわくわくしてきている。ただでさえ、阿形と吽形が異星人だという事実だけでも楽しくて仕方がないのに、魔法まで出てくるともう大変。
『こちらの世界で簡単にわかりやすく説明するならそうなりますね』
(なるほどー。それで僕には、何か変わったところがあるんですか?)
『ワタシが知る限りですが、何割か元の身体からワタシたち寄りの身体になってしまったようです』
(……え?)
『例えばですが、傷が治りやすかったりとか、疲れが出にくくなったりとか』
(よくわかんないです。今のところ)
『先日指を怪我されたと思いますが、あのときの傷は、どれくらいで治るものなのでしょうか?』
(あ、そうですね。普通は一週間くら――あれ? 傷が全くないんですけど?)
『そういうことですね。あとですね』
(はい)
『一八さんがワタシたちの眷属ということになってしまっていますので』
(……そういえばそうなんですよね)
『これまでのように、食事と魔力のお世話になっておりますので』
『一八君、海老、もの凄く、美味しかった。本当にありがとう』
『え、えぇ、美味しかったです。食べているときはもう、夢中になるほど――あなた、ワタシが一八さんにご説明いたしているときに』
『いやそのだね、お礼を言うタイミングがなかなかとれなくてな』
(あははは)
『とにかくですね。今は見守るくらいしかできませんが、ワタシと夫はいつか、このご恩に報いるつもりです』
(いえいえそんなことは気にしないでください。それでそれでですね)
『何でしょうか?』
(僕にもその、魔法って使えるようになるんでしょうか?)
『教えてみないとなんとも言えません。ですが、現時点で人知を超えている身体になっていることは間違いありません。ただし、ですね』
(はい?)
『傷の治りを確認するのに、わざと怪我をしようとか。そういうのは駄目ですからね?』
(わかりました)
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