上 下
19 / 56
第一章

第十九話 よくわかんないです

しおりを挟む
 確かに一八も、魔法やそれに近しい能力を行使するのに、その燃料になる魔力や生命力とかがあるという、システム的なものが存在するのは漫画などを読んでいてなんとなく理解している。

『魔力エネルギーが枯渇しかけていることを知り、生命力を代わりに消費していました。ですが先日、身動きがとれなくなってしまいまして、そこで一八さんと出会ったのです』
(いいタイミングだったんですね)

 あのとき一八が出会わなければ、食事をとるのも大変だったのだろう。彼はその程度に思っていた。

『いえ、その、それだけではなくてですね。あのとき偶然、いただいた魚を媒介にして、一八さんの血をいただいてしまったのです』
(そうなんですね。でもそれがどんな問題になっているんです?)
『ワタシたちの星で言うところの「血の盟約」を結んだ状態になってしまいまして、その、大変申しわけありませんでした』
『オレも、まさかとは思っていたが、本当に申し訳ない』
(それって僕に何かあるんですか?)
『例えばですね、吸血鬼の物語がありますよね?』
(はい。似たようなものは読んだことがあります)
『一八さんはワタシたちの「眷属」と同じ状態になっているかもしれないんです。本当にごめんなさい……』
(それってどういうことですか? 何かまずいことでもありますか?)
『例えば、食事の度に触れて、少しだけ体力をいただいたり……』
(あ、あのときの少しだけくらっとする感じ。でもすぐによくなるんですよ。あれってそうだったんですね)
『はい。少しずついただいておかないと、その、「何かあるとき」に術が使えないものですから』
(術、ですか?)
『ワタシはですね、「恐れの術」という、相手に悪夢を見せることができる術を持っています』
(それってそれって、魔法ですか?)

 一八はわくわくしてきている。ただでさえ、阿形と吽形が異星人だという事実だけでも楽しくて仕方がないのに、魔法まで出てくるともう大変。

『こちらの世界で簡単にわかりやすく説明するならそうなりますね』
(なるほどー。それで僕には、何か変わったところがあるんですか?)
『ワタシが知る限りですが、何割か元の身体からワタシたち寄りの身体になってしまったようです』
(……え?)
『例えばですが、傷が治りやすかったりとか、疲れが出にくくなったりとか』
(よくわかんないです。今のところ)
『先日指を怪我されたと思いますが、あのときの傷は、どれくらいで治るものなのでしょうか?』
(あ、そうですね。普通は一週間くら――あれ? 傷が全くないんですけど?)
『そういうことですね。あとですね』
(はい)
『一八さんがワタシたちの眷属ということになってしまっていますので』
(……そういえばそうなんですよね)
『これまでのように、食事と魔力のお世話になっておりますので』
『一八君、海老、もの凄く、美味しかった。本当にありがとう』
『え、えぇ、美味しかったです。食べているときはもう、夢中になるほど――あなた、ワタシが一八さんにご説明いたしているときに』
『いやそのだね、お礼を言うタイミングがなかなかとれなくてな』
(あははは)
『とにかくですね。今は見守るくらいしかできませんが、ワタシと夫はいつか、このご恩に報いるつもりです』
(いえいえそんなことは気にしないでください。それでそれでですね)
『何でしょうか?』
(僕にもその、魔法って使えるようになるんでしょうか?)
『教えてみないとなんとも言えません。ですが、現時点で人知を超えている身体になっていることは間違いありません。ただし、ですね』
(はい?)
『傷の治りを確認するのに、わざと怪我をしようとか。そういうのは駄目ですからね?』
(わかりました)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

アレキサンドライトの憂鬱。

雪月海桜
ファンタジー
桜木愛、二十五歳。王道のトラック事故により転生した先は、剣と魔法のこれまた王道の異世界だった。 アレキサンドライト帝国の公爵令嬢ミア・モルガナイトとして生まれたわたしは、五歳にして自身の属性が限りなく悪役令嬢に近いことを悟ってしまう。 どうせ生まれ変わったなら、悪役令嬢にありがちな処刑や追放バッドエンドは回避したい! 更正生活を送る中、ただひとつ、王道から異なるのが……『悪役令嬢』のライバルポジション『光の聖女』は、わたしの前世のお母さんだった……!? これは双子の皇子や聖女と共に、皇帝陛下の憂鬱を晴らすべく、各地の異変を解決しに向かうことになったわたしたちの、いろんな形の家族や愛の物語。 ★表紙イラスト……rin.rin様より。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

YOCOHAMA-CITY

富田金太夫
SF
近未来ヨコハマ・シティを舞台にしたサイバーパンク小説です。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...