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三章「遭遇」
#13
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カインに害意がないとわかって、皆の緊張がゆっくりと解けていく。
騎士といえば、戦えば鬼神のごとく強く、規則に厳しい融通がきかない者というイメージが強いが、カインに限っては、その人懐っこい性格から、昔から子供に好かれたものだ。
その柔らかい雰囲気は、昔のままだ。
「ここは『最果てのダンジョン』の、最近発見された『はぐれ階層』だ」
「『最果てのダンジョン』……ですか?」
「ああ。多分キミも知っているとは思うが、ダルジニョン王国だけでなく、世界でも最大規模のダンジョンだね」
未だ拡張中でね、とカインは笑う。
「ここは……二年ほど前かな、偶然冒険者によって発見された、まだ真新しい『はぐれ階層』だ」
「そうだったんですか。道理でモンスターが少ないと思いました」
「まぁ……そうだね。普通の階層だったら、子供だけでウロウロするのは危険すぎる。はぐれ階層だからといって、危険じゃないわけじゃないが……」
カインはチラリをオレたちを見回す。
「なぁ、ダイチ、「はぐれ階層」ってなんだ」
オレとカインとの会話に、ケンゴがおずおずと口を挟む。
「……ダンジョンには階層があって、各階層に役割があるんだ。でも、たまに何の役にも立たない階層やモンスターが全く出ない階層などがある」
「それがはぐれ階層?」
「そうだ」
オレのケンゴへの説明を聞いて、カインが面白そうに目を細める。
「ダンジョンのことをよく知らないまま探索するのは、ちょっと頂けないなぁ」
「あ、いやその……」
「ケンゴはダンジョンがない地域の出身なんです。そのかわり、剣の腕は一番なので、リーダーをしてもらってます」
「ほう、剣士か。……うん? その武器はなんだ?」
「え、あ、木刀……です」
「木剣みたいなものか。よしケンゴくん、よかったら手合わせしてみるかい?」
「え!?」
ケンゴが素っ頓狂な声を上げる。
「ああ、私はこう見えても騎士なので、もちろんキミのような子供を相手に本気で戦うつもりはない。でも」
ニッ、といたずらな表情で笑うカイン。
「リーダーであるキミの実力を見てみたいな」
立ち上がるカインに、ケンゴが目を白黒させる。
「だ、ダイチ、どうしようか……」
「やらせてもらえよ、ケンゴ」
オレはそう言って片目を瞑ってみせる。
「え、だ、大丈夫かな」
「大丈夫、カインがお前を怪我させるようなドジを踏むわけがないからな」
「……?」
オレの言葉に首を傾げながら、ケンゴは仕方なく立ち上がる。
「何、何が起きてるの」
「カインさんが、リーダーのケンゴの剣の腕を見たいとさ」
「えええ、だ、大丈夫なの?!」
「問題ない。それに、多分……」
カインのことだ。おそらくケンゴの剣の腕から、このダンジョンの探索を許可するかどうかを図るつもりだ。
騎士といえば、戦えば鬼神のごとく強く、規則に厳しい融通がきかない者というイメージが強いが、カインに限っては、その人懐っこい性格から、昔から子供に好かれたものだ。
その柔らかい雰囲気は、昔のままだ。
「ここは『最果てのダンジョン』の、最近発見された『はぐれ階層』だ」
「『最果てのダンジョン』……ですか?」
「ああ。多分キミも知っているとは思うが、ダルジニョン王国だけでなく、世界でも最大規模のダンジョンだね」
未だ拡張中でね、とカインは笑う。
「ここは……二年ほど前かな、偶然冒険者によって発見された、まだ真新しい『はぐれ階層』だ」
「そうだったんですか。道理でモンスターが少ないと思いました」
「まぁ……そうだね。普通の階層だったら、子供だけでウロウロするのは危険すぎる。はぐれ階層だからといって、危険じゃないわけじゃないが……」
カインはチラリをオレたちを見回す。
「なぁ、ダイチ、「はぐれ階層」ってなんだ」
オレとカインとの会話に、ケンゴがおずおずと口を挟む。
「……ダンジョンには階層があって、各階層に役割があるんだ。でも、たまに何の役にも立たない階層やモンスターが全く出ない階層などがある」
「それがはぐれ階層?」
「そうだ」
オレのケンゴへの説明を聞いて、カインが面白そうに目を細める。
「ダンジョンのことをよく知らないまま探索するのは、ちょっと頂けないなぁ」
「あ、いやその……」
「ケンゴはダンジョンがない地域の出身なんです。そのかわり、剣の腕は一番なので、リーダーをしてもらってます」
「ほう、剣士か。……うん? その武器はなんだ?」
「え、あ、木刀……です」
「木剣みたいなものか。よしケンゴくん、よかったら手合わせしてみるかい?」
「え!?」
ケンゴが素っ頓狂な声を上げる。
「ああ、私はこう見えても騎士なので、もちろんキミのような子供を相手に本気で戦うつもりはない。でも」
ニッ、といたずらな表情で笑うカイン。
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立ち上がるカインに、ケンゴが目を白黒させる。
「だ、ダイチ、どうしようか……」
「やらせてもらえよ、ケンゴ」
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「え、だ、大丈夫かな」
「大丈夫、カインがお前を怪我させるようなドジを踏むわけがないからな」
「……?」
オレの言葉に首を傾げながら、ケンゴは仕方なく立ち上がる。
「何、何が起きてるの」
「カインさんが、リーダーのケンゴの剣の腕を見たいとさ」
「えええ、だ、大丈夫なの?!」
「問題ない。それに、多分……」
カインのことだ。おそらくケンゴの剣の腕から、このダンジョンの探索を許可するかどうかを図るつもりだ。
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