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八岐大蛇

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「や。そろそろ来ると思ったよ。」

 俺たちは、屋敷の奥にいた神獣と対面していた。この神獣は元から人型をしていた。雪のように真っ白な髪に紫と赤のオッドアイ。側を通ったものの中、十人中の住人の人が振り向くだろう絶世の美少女で、少し幼い雰囲気が残っているものの、凛とした雰囲気が巫女服とマッチしている。

 その神獣が、こちらがここに来るのを予知していたかのように、話しかけてきた。…そして、どうやら八岐大蛇はこの場所に地下に封印されているようだ。この神獣の力が絶えず地下に向かっているのがわかる。

「その未来予知能力は相変わらずのようだね。元気にしてた?」
「我々が、病気になることが無いのは知っているでしょ…。まぁ、元気にしてたよ。で、久々に会った時の概念の神獣が何の用事かな?珍しく君が人間を連れていると思ったら…。ん、いやそうか。そういうこと。神の力を持っているようだね。でも、僕らとはまた異なる力のようだ。…今のところ、力に振り回されている感じはないね。とりあえず、詮索はよそう。」
「そうしてくれるとありがたい。俺は星野蓮斗。元はただの高校生だ。よろしくな…ええと?」
「あ、そうか。僕はデルタとでも呼んでくれ。」
「わかった。よろしくな、デルタ。」
「うん。…で、ルー。結局要件は何?」
「そうだね~。ま、旅行かな?今のところその予定。…いや、さっきまでか。そろそろまずそうね。1ヶ月も持たないくらい?」
「だねぇ。他のみんなも早くきて欲しいんだけどなーそれぞれ忙しいっぽい。」

 何の話かは聞かずともわかった。先ほど感知した八岐大蛇の封印が解け始めている。少しずつだけど確実に、封印を破り始めているのだ。おそらく、二人の言った通り1ヶ月は無理だろう。二人とも口調は変わっていないが、冷や汗が隠しきれてない。確実に状況は不味い方向に向かっているのだろう。

「…アルファにはきて欲しいんだけど。無理そう?我はどちらかというと後方支援だから、アルファにはいて欲しいんだよね。あなたも戦闘向きではないし。」
「無理そうだよ。一度念話テレパシーを送ってみたけど、自分の拠点防衛に忙しいらしい。あっちでは【楽園】がまだ暴れているらしいよ。だから、最悪ここにいる三人だけでこの八岐大蛇災厄を倒さなければならなくなるかもしれない。」

 …二人は、強い助っ人に心当たりがあるらしいが、残念ながら頼れないらしい。多分、八岐大蛇は俺たちで倒差ないといけなくなる。はぁ、一難去ってまた一難か。しかも、休み中に。【楽園】はとんだブラック企業なんだとどうでも良いことをつい考えてしまう。

 そうだなぁ。新しい力をあれから一つ得たとはいえ、まだまだ危険はあるんだよなぁ。ランドル級の敵が何体も出てきたら少しやばいんだよなぁ。それに、あれで枢機卿じゃないのなら、枢機卿と教皇はあり得ないくらいの化け物だと予想できる。ま、もしそんな脅威に出会った時はその時だ。とりあえずはそんなのが出てこないのを祈るしかないな。神様にでも。

「とりあえず、まだまだ余裕はあるから、旅行を楽しんで。二人の部屋はここを出て右奥の部屋を使って。風呂とトイレもその辺りにあるから、見つからなかったら言ってよ。」
「わかった。ありがとう。」

 言われた部屋は、20畳位の部屋で、二つの大きな敷布団が敷かれている。障子の奥には縁側があり、その先に池があるようだ。右手前にはテーブルと座布団があり、その上にはお湯の入っているヤカンと急須、湯呑みが置いてある。左手前には、床の間があり、黒がベースでその上に美しい花が描かれた高級そうな壺が置いてある。…ここは高級宿なのだろうか?

 まぁ、せっかく貸してくれる部屋はしっかり堪能させてもらう事にしようか。
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