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陰陽師

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「ふぁ~。いい朝だなぁ…グフっ。」

 陰陽師と決闘した次の日の朝、目を覚ましたらそれを待っていたかの様に、ルーが腹の上に乗って来た。

〈さて、レン。我に言わなければいけない事が有ると思うのだが。その所、どう思う?〉
「あの後の面倒そうな事に対応してくれて、ありがたく存じます。」

 昨日の夜聞いた(寝てるところを起こされた)のだが、あの後ルーは俺の身元を確認する様な事や、その他面倒臭そうな案件を全て対応してくれたらしい。だから、今も目元に隈の様なモノが色濃ゆく出ている。…あの後、逃げる様にして(逃げた)帰った俺の力に興味を持った人が結構居たらしい。俺の判断は正解だった様だ。…正確には、一人の犠牲者ルージュを生んだが。

「今日は、学校が休みだし…買い物にでも行くか。色々切らしてるし。」

 俺は、その場の思いつきで買い物に行く事にした。


_____美津side____

 私は白鷺美津…いや、雨月美津。この日の本で暗躍している陰陽師の一人なの。私には、幼馴染で大親友の人が二人いる。その内の一人、星野蓮斗レンは多分私の事を気付き始めていると思う。少なくとも私に何か違和感を感じていると思う。あの人は本当に不思議。あの人に陰陽術を使う為の力が無いことは確実だけど、たまにあの人の周りに不思議な事が起こる事が有る。例えば、四年前くらいにレンの頭上にあった看板が落ちて来た事があった。だけど、その看板は明らかに異常な軌道に逸れて、レンを避けた。その上、その後レンに聞いたけど、本人はその時のことを一切覚えていない。他にも幾つか似た様な事があった。

 そんな事が起きる時の共通点は、絶対に死ぬ事。レンがそれを喰らったら必ず死ぬ事を、完全に回避していた事だ。事実、火傷や骨折等は何度もなった事が有ったが、その時はその様な事が起きなかった。それと、死を回避した事をレン自身が覚えていない事。まるで、陰陽術の基礎の考えとなっていることわりから外れているかの様にも思う。

 それはそうと、私の家は今、非常に危ない事態になっている。同じく陰陽師の家の霹靂神はたたがみ家から、決闘の申し込みがあった。霹靂神家は歴代、高威力陰陽師を輩出している。今、雨月家のメインの陰陽師は他の依頼を受けていて、ここにはいない。呼び戻すにしても時間が足りない上に、依頼内容によってはかなりまずい事になることもある。今回は私の妹と私、もう一人は我らの神獣様の驟雨しゅうう様が呼ぶ「協力者」で戦う事になる。妹は少し反対したが、数合わせということで納得してもらった。

 戦胃が終わった後に考える…………現実は、たまに訳が分からなくなる。私は、特殊な目を持っていて見た人の陰陽術の力、心力の有無や多さを確認できる。そして、「協力者」が持つ力は一切なかった筈だ。だが、そのはずの彼(?)はたった一文字で何かの術を構築、展開した。今回の相手はかなりの実力者だった様で、即座に反対呪文を唱えたが、構築途中に術が破壊された。この様な事が有るのは、一つのことしかあり得ない。彼が相手の術の精度を圧倒できる精度を持っているという事だ。何故だ?あの様な短い呪文と時間で展開できる術の精度などあり得ない。だが、これは私の目で見ている事実だ。まるで、レンの様な不思議な感じがする。

 その様な事を考えているうちに、彼はいなくなっていた。おそらく、決闘開始前に闘技場の中央に移動した術と同じ物だろう。

 …………私は、一生この事を忘れないだろう。これこそが、私と星野が互いの秘密を共有していく前の、一つの出来事であったのだから。
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