62 / 76
7
普通の女の子
しおりを挟む
「レジナルド様は以前フェルナンド殿下からドーナツの作り方を教わってそれを再現されたのでしたよね?」
琥珀色の髪をした少女は嬉しそうに目を輝かせて隣にいる騎士を見上げた。
「ん…あぁ、そんなこともあったかな?」
「南国の新しい菓子でしたか?あれは再現するのに苦労されたと私もレジー殿から聞いております。」
「そうだ…苦労したんだった。」
「まぁ、フェルナンド殿下の手紙では上手く伝わらなかったのでしょうか?」
「そうだな、菓子はやはり実際に味わったものでないとな…」
「そうそう、殿下だって実際に作られた訳じゃないから作り方もそこまで詳しく書いてなかった…らしいですよ?」
レジナルドはエリックに目配せをした。
「ソフィア嬢はどんな菓子がお好きなのですか?」
「あら、私ですか?そうですわねぇ…。カラフルな見た目で一口で摘めるような物が好きですわ、チョコレートや飴、ゼリー何でもいいんですの、甘ければ。」
ドーナツから話を逸らすことが出来た…上出来だ。
「そうでしたか。女性はやはり見た目が可愛らしいものがお好きなのでしょう?」
ソフィアはにっこりと笑うと可愛らしく首を傾げてみせた。
「レジナルド様も同じなのでは?見た目は可愛らしい方がお好きでしょ?」
「…そんな事はありません。」
レジナルドはその姿を冷ややかな目で見ていた。セシリアの従妹であるソフィアという娘の狙いはどうやらジークフリートではなく自分で正解だったようだ。
ビューロー侯爵邸に到着して早々ソフィアは侯爵の所まで挨拶に来たのだと無理矢理王宮まで押しかけてきた。そして騎士団に来たところでばったりとジークフリート一行に出くわしてしまったのだ。
ソフィアはセシリアと同じ色の髪と肌をしていた。瞳は薄い青色で少し遠目に見れば確かにセシリアと似ているところもある。しかし漂う雰囲気はセシリアと言うよりどちらかと言えばレイラ寄り──ピンク色のドレスに負けないほどはっきりとした目鼻立ちのとても華やかなご令嬢だった。
急いでいるからと挨拶だけしてその場をやり過ごそうとしたその時、ソフィアがすれ違いざまにレジナルドに向かって声をかけてきた。
「貴方がジークフリート殿下の幼馴染だというレジナルド様ですね?」
レジナルドが返事をするよりジークフリートがエリックの肩を叩く方が先だった。
「ソフィア嬢、こちらがレジナルドだ…。その騎士はエリックと言う。二人とも私に仕えている者だが、良かったら後で王宮を案内させよう。私は忙しいから代わりに…。」
「ありがとうございます、殿下。では楽しみにしておりますわ。レジナルド様、後ほど。」
ソフィアはエリックに向かってニッコリと笑いかけるとその場で王太子一行を見送った。
そこから急遽エリックをレジナルドの身代わりに立てるという手荒な作戦が立てられたのだ。ソフィアがいくら頑張ったところでエリックが相手ならば引き出せる情報は少ない。エリックが時間を稼いでいる間にレジナルドも自由に動けることになる。何処まで通用するかは分からなかったがせめてセシリアが戻って来るまでは少しでも長く時間を稼ぎたいという思惑があった。
「今王宮の案内終わってソフィア嬢がやっと帰って行ったよ。明日も来るってさ…。」
「ご苦労だったな。やはりレジーが狙いだったんだな?早速色目を使っていたそうじゃないか。」
ジークフリートは椅子にもたれたままレジナルドを楽しそうに見上げた。
「下調べもある程度はしてきたんだと思う。でも、この先どう持って行くつもりだと思う?」
「正直まださっぱりだ。もう少し様子見という所だな。エリックは上手くやれそうか?」
「それ!なんか今んとこ行けそうな感じなんだよね、不思議と。エリックの方がかなり年上なのになんでバレてないのか逆に不思議かも。」
「たまたまエリックは休み明けで髭を剃って髪も短くしていたからな、顔だけではなかなか判断できないのだろう。まぁ裸でも見ない限りはバレないのではないか?」
「裸?いや、それは流石にエリックでも不味いだろ?」
「お前の方が不味いに決まっている。」
「…」
「それで?ビューロー侯爵の邸までエリックが送って行ったというのは本当か?」
「あぁ、一応止めようとしたんだけどちょっとした手違いがあって…。」
「手違いが?」
レジナルドはジークフリートの隣の椅子に座りながら、申し訳なさそうに切り出した。
「一つ言い忘れてたんだけど、エリックはああ見えて惚れっぽい所がある。」
「それは…不味いのではないか?」
「まぁ今日は大丈夫だろう…。明日の事は俺には何とも言えない。」
「エリック…。」
ジークフリートは早くもエリックを身代わりに立てたことを後悔し始めていた。
琥珀色の髪をした少女は嬉しそうに目を輝かせて隣にいる騎士を見上げた。
「ん…あぁ、そんなこともあったかな?」
「南国の新しい菓子でしたか?あれは再現するのに苦労されたと私もレジー殿から聞いております。」
「そうだ…苦労したんだった。」
「まぁ、フェルナンド殿下の手紙では上手く伝わらなかったのでしょうか?」
「そうだな、菓子はやはり実際に味わったものでないとな…」
「そうそう、殿下だって実際に作られた訳じゃないから作り方もそこまで詳しく書いてなかった…らしいですよ?」
レジナルドはエリックに目配せをした。
「ソフィア嬢はどんな菓子がお好きなのですか?」
「あら、私ですか?そうですわねぇ…。カラフルな見た目で一口で摘めるような物が好きですわ、チョコレートや飴、ゼリー何でもいいんですの、甘ければ。」
ドーナツから話を逸らすことが出来た…上出来だ。
「そうでしたか。女性はやはり見た目が可愛らしいものがお好きなのでしょう?」
ソフィアはにっこりと笑うと可愛らしく首を傾げてみせた。
「レジナルド様も同じなのでは?見た目は可愛らしい方がお好きでしょ?」
「…そんな事はありません。」
レジナルドはその姿を冷ややかな目で見ていた。セシリアの従妹であるソフィアという娘の狙いはどうやらジークフリートではなく自分で正解だったようだ。
ビューロー侯爵邸に到着して早々ソフィアは侯爵の所まで挨拶に来たのだと無理矢理王宮まで押しかけてきた。そして騎士団に来たところでばったりとジークフリート一行に出くわしてしまったのだ。
ソフィアはセシリアと同じ色の髪と肌をしていた。瞳は薄い青色で少し遠目に見れば確かにセシリアと似ているところもある。しかし漂う雰囲気はセシリアと言うよりどちらかと言えばレイラ寄り──ピンク色のドレスに負けないほどはっきりとした目鼻立ちのとても華やかなご令嬢だった。
急いでいるからと挨拶だけしてその場をやり過ごそうとしたその時、ソフィアがすれ違いざまにレジナルドに向かって声をかけてきた。
「貴方がジークフリート殿下の幼馴染だというレジナルド様ですね?」
レジナルドが返事をするよりジークフリートがエリックの肩を叩く方が先だった。
「ソフィア嬢、こちらがレジナルドだ…。その騎士はエリックと言う。二人とも私に仕えている者だが、良かったら後で王宮を案内させよう。私は忙しいから代わりに…。」
「ありがとうございます、殿下。では楽しみにしておりますわ。レジナルド様、後ほど。」
ソフィアはエリックに向かってニッコリと笑いかけるとその場で王太子一行を見送った。
そこから急遽エリックをレジナルドの身代わりに立てるという手荒な作戦が立てられたのだ。ソフィアがいくら頑張ったところでエリックが相手ならば引き出せる情報は少ない。エリックが時間を稼いでいる間にレジナルドも自由に動けることになる。何処まで通用するかは分からなかったがせめてセシリアが戻って来るまでは少しでも長く時間を稼ぎたいという思惑があった。
「今王宮の案内終わってソフィア嬢がやっと帰って行ったよ。明日も来るってさ…。」
「ご苦労だったな。やはりレジーが狙いだったんだな?早速色目を使っていたそうじゃないか。」
ジークフリートは椅子にもたれたままレジナルドを楽しそうに見上げた。
「下調べもある程度はしてきたんだと思う。でも、この先どう持って行くつもりだと思う?」
「正直まださっぱりだ。もう少し様子見という所だな。エリックは上手くやれそうか?」
「それ!なんか今んとこ行けそうな感じなんだよね、不思議と。エリックの方がかなり年上なのになんでバレてないのか逆に不思議かも。」
「たまたまエリックは休み明けで髭を剃って髪も短くしていたからな、顔だけではなかなか判断できないのだろう。まぁ裸でも見ない限りはバレないのではないか?」
「裸?いや、それは流石にエリックでも不味いだろ?」
「お前の方が不味いに決まっている。」
「…」
「それで?ビューロー侯爵の邸までエリックが送って行ったというのは本当か?」
「あぁ、一応止めようとしたんだけどちょっとした手違いがあって…。」
「手違いが?」
レジナルドはジークフリートの隣の椅子に座りながら、申し訳なさそうに切り出した。
「一つ言い忘れてたんだけど、エリックはああ見えて惚れっぽい所がある。」
「それは…不味いのではないか?」
「まぁ今日は大丈夫だろう…。明日の事は俺には何とも言えない。」
「エリック…。」
ジークフリートは早くもエリックを身代わりに立てたことを後悔し始めていた。
0
お気に入りに追加
564
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~
咲桜りおな
恋愛
前世で大好きだった乙女ゲームの世界にモブキャラとして転生した伯爵令嬢のアスチルゼフィラ・ピスケリー。
ヒロインでも悪役令嬢でもないモブキャラだからこそ、推しキャラ達の恋物語を遠くから鑑賞出来る! と楽しみにしていたら、関わりたくないのに何故か悪役令嬢の兄である騎士見習いがやたらと絡んでくる……。
いやいや、物語の当事者になんてなりたくないんです! お願いだから近付かないでぇ!
そんな思いも虚しく愛しの推しは全力でわたしを口説いてくる。おまけにキラキラ王子まで絡んで来て……逃げ場を塞がれてしまったようです。
結構、ところどころでイチャラブしております。
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
前作「完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい」のスピンオフ作品。
この作品だけでもちゃんと楽しんで頂けます。
番外編集もUPしましたので、宜しければご覧下さい。
「小説家になろう」でも公開しています。
異世界の花嫁?お断りします。
momo6
恋愛
三十路を過ぎたOL 椿(つばき)は帰宅後、地震に見舞われる。気付いたら異世界にいた。
そこで出逢った王子に求婚を申し込まれましたけど、
知らない人と結婚なんてお断りです。
貞操の危機を感じ、逃げ出した先に居たのは妖精王ですって?
甘ったるい愛を囁いてもダメです。
異世界に来たなら、この世界を楽しむのが先です!!
恋愛よりも衣食住。これが大事です!
お金が無くては生活出来ません!働いて稼いで、美味しい物を食べるんです(๑>◡<๑)
・・・えっ?全部ある?
働かなくてもいい?
ーーー惑わされません!甘い誘惑には罠が付き物です!
*****
目に止めていただき、ありがとうございます(〃ω〃)
未熟な所もありますが 楽しんで頂けたから幸いです。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる