怪談ぽいもの

寛村シイ夫

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体験談

夜だけの置物

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僕がいつも歩く、深夜のさんぽの時間。
それは大体が0時から2時ごろが多い。

別に決めているわけじゃないが、
何かしていると気づけばそんな時間になっているから。

でもとても静かで、気兼ねがなくて。
僕はその日付が変わる時間の街が好きだ。


夜さんぽにはいくつかのコツ‥‥だろうか。
そういったモノがある。

その一つは‥‥
興味を事、だと思う。
でも逆に好奇心が無ければさんぽなんて出来ない。
それでも、確かめ事。

これはとても大事なことだと、思う。



・・・



その道は、夜ではなく、昼間たまに歩く道だった。

なんにでも好奇心を持つ僕は、
あまり大げさにならないように周りの家々を眺めながら歩く。

夜に光る窓を見上げるのも想像力をかきたててくれて楽しいが、
色々なものが見える昼間もまた楽しい。

その道にあるとある民家の前。
プランターや鉢が放置されている。
以前は何かを植えていたが、
その草花が枯れてしまってから放置されているプランター群。
実によくあるオブジェだ。




でもその家のプランターには他との違いが一つある。

壊れた、陶器の犬。
有名な古いアニメのあの犬だ。

まぁこれも何てことはない。それほど珍しい物でもない。

―ただ、少し気になるだけ。

初めてソレを見かけた時に僕はこう思った。

 ―可哀そうだからくっつけてあげたいな。

そんな事があったから覚えている。
でもいずれ忘れるだろうこと。
ただ、それだけのモノ。



‥‥のはずだった。




夜さんぽでそこを通った時の事。
そういえばあの犬‥‥まだ残ってるのかな。

ふと、目が行った。

直っていた。
横に落ちていたはずの頭が、くっついている。

薄暗くてよく見えないが、
目が前を向いているのが印象的だった。

ああ、接着剤で直してあげたんだ。
良かった―

そう思って通り過ぎる。

別になんてことのない、
普通の夜のさんぽとしてその日は終わった。



が。



数日後、たまたまそちらに向かうついでに
またふと。
ふと、プランターを見た。

‥‥頭が、土の上にある。

以前見た通り。
何の変哲もない状態。

頭が、落ちている。


―次に、
もしまた夜に―
彼を見たらどうなっているのか‥‥


―いや。
これは確かめすぎない方がいいやつだ。


僕はそう思って、夜のさんぽでその道を通るのをやめることにした。

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