22 / 46
第22章 潜入
しおりを挟む
次の日、真琴たちは、西洋風あずま屋ガゼボでウビークエを待っていた。
「やぁ、待ったぁ」
その声は、ウビークエだった。その後ろにもう一人居る。
ウビークエは、真琴たちの視線が後ろのもう一人に注がれていることに気付いた。
ウビークエは、ちらっと後ろを振り返えると右手の親指を立てその親指で後ろを指した。
「こいつは、職人、オピフだ。何でも出来るよ。変装を手伝って貰うのだ」
「よろしく……壊すことも作ることもできるよ。壊す方が好きだけど」
オピフが、ウビークエを押しのけてしゃべる。
オピフは、ガッチリとした身体つきだ。
頭には、昔のパイロットが付けるゴーグルとヘッドライト。
腰には、重そうな充電式インパクトドライバーをホルダーに下げていた。
何故か鉛筆を耳に挟めている。
背中にバカでかいスパナが組み込まれたケースを背負っていた。
「中を見るかい」
背負いケースを降ろし蓋を開けるとどうだと言わんばかりに真琴たちを見た。
ケースの中を覗いた。
先を交換出来る携帯用ラチェットドライバー、刃が太い工業用カッター、ペンチ、プライヤー、五メータースケール、電設用工具もある。
「取り合えず必要な物を持ってきた。何でもできるぜ」
と言うと親指で自分の鼻を弾いた。
響介と真琴が興味を示す。
「どうやって使うの?」
「腰ベルト、付けてみるか?」とオピフ。
「重てぃ」と直ぐに弱音を吐く。
「俺も」と言う真琴に「腰悪くするから、やめとけ」と響介。
真琴は、腰ベルトをすると、「やばいやばい」と響介に助けを求めた。
「若いくせにだらしないの」その様子を見て、絢音に笑われた。
オピフは、そんな真琴と響介を横目にし、「どうだ」とベルトを軽々と腰に付けた。
それは、絢音へのアピールか。
「もう済んだでし、行くよ。ウビークエ、案内をお願い!」
絢音が「お前たちは子どもか」と急かせた。
オピフは、ケースの中をゴソゴソと探り、「暗いからな、首から掛けな」とヘッドライトを皆に配った。
「こっち、こっち」とウビークエが先で呼んでいる。
例の球体の乗り物を使って一階に着いた。
行ったことのない奥へと進む。
段々と明かりが届かなくなてきた。
「ここだよ」
何やら、床に直径一メートル程の丸い鉄板が敷いてあった。
淵がアンカーボルトで止められている。
オピフは、何処からか、カラーコーンと白黒の縞の棒を持って来た。
工事現場で見かけるアレだ。
鉄板の周りを囲み、「立ち入り禁止」のプラカードを設置した。
「これで良し」オピフが顔を上げた。
腰から、インパクトドライバーを取り出し、アンカーボルトを外していく。
ダダダダッとインパクトドライバーの音が響き渡る。
蓋をずらす。
オピフの表情で蓋の重さがわかる。
鉄板の下には、階段があった。
オピフが先に入り、穴がうす暗い明りが点灯する。
オピフが、ヒョコっと顔を出し、「来いよ」と手招きした。
みんな、それに従った。
何回か折れ曲がった階段を下ると、直径五メートル程のトンネルに行き当たった。
直径三十センチ程の菅が、トンネルに沿って設置されている。
所々の壁から水が滴っていて、トンネルの片隅の側孔に流れ込んでいる。
じめっとした湿気と何日もほおっておいた雑巾のような匂いが身体を包んだ。
しばらく、息をひそめトンネルの先を見つめる。
聞こえるのは、遠くから聞こえるモーターのような音や水が垂れる音だけだった。
「何か居る?」と、絢音が誰に訊いてる訳でもなく呟く。
「行こう、離れちゃだめだよ」ウビークエが先頭を歩いた。
暫く、ウビークエに付いて歩いた。
虫嫌いな絢音は特に落ち着かない。
壁や床や天井に目をやる。
何か見つけるたびに驚き、びくっと肩をすぼめた。
「ここだ」
ウビークエは、皆を止めた。
そして、壁を指さした。
壁には、厚い鉄板が張られていた。
その鉄板には、へたくそな字で”銀の入口”と書かれていた。
また、オピフの出番だ。
鉄板は、淵を等間隔でボルトで固定されていた。
「こういうのは、下から外さないとな」と独り言をいいながら、オピフがボルトを外していく。
鉄板の上端のボルト一本を残し、全てのボルトを外した。
オピフは、鉄板を横へずらし、反対側からも開けれるように細工をした。
穴が現れた。
半径一メートルの穴だ。
穴の周りは、荒い断面を見せていた。
ただ、予定されていたものではない緊急に開けられた穴だ。
「この穴をくぐるんだ。あっちが、銀の塔だ」
先頭は、やはり、ウビークエだ。
次々と穴から、銀の塔へと入っていった。
ウビークエが、両手を上から下へを繰り返し、頭を低くするように指示を出す。
ゆっくりと中に進む。
「ここまで来れば大丈夫だ」
ウビークエが立ち上がる。
みんな、腰に手をあて、いたたたと背を伸ばす。
周りを見渡す。
そこには、色々なロボットが積まれていた、自動車のスクラップ工場の様に。
「オピフ、頼んだよ」
わかったとオピフがロボットの廃材の中からボディだけを選んで、持ってくると、あっと言う間に人数分の変装用ボディを造った。
各自、来てみて微調整をしていく。
「なんか、懐かしくない?」絢音が真琴と響介を見る。
「幼稚園の時、こんなの着たよ」
真琴と響介は、思い出していた。
そう、幼稚園の劇をやったんだ。
真琴は案山子で、響介はブリキ男だった。
真琴たちは大笑いしたが、ウビークエとオピフは、ポカンとして真琴たちを見ていた。
「こんなので、大丈夫なのか?」
響介は、腕をを上げながら呟いた。
動く度に金属の擦れる音がする。
「大丈夫、怯えるから見つかるのさ。堂々と胸を張って歩くんだ」
そう言うとウビークエは、小さな胸を張った。
「やぁ、待ったぁ」
その声は、ウビークエだった。その後ろにもう一人居る。
ウビークエは、真琴たちの視線が後ろのもう一人に注がれていることに気付いた。
ウビークエは、ちらっと後ろを振り返えると右手の親指を立てその親指で後ろを指した。
「こいつは、職人、オピフだ。何でも出来るよ。変装を手伝って貰うのだ」
「よろしく……壊すことも作ることもできるよ。壊す方が好きだけど」
オピフが、ウビークエを押しのけてしゃべる。
オピフは、ガッチリとした身体つきだ。
頭には、昔のパイロットが付けるゴーグルとヘッドライト。
腰には、重そうな充電式インパクトドライバーをホルダーに下げていた。
何故か鉛筆を耳に挟めている。
背中にバカでかいスパナが組み込まれたケースを背負っていた。
「中を見るかい」
背負いケースを降ろし蓋を開けるとどうだと言わんばかりに真琴たちを見た。
ケースの中を覗いた。
先を交換出来る携帯用ラチェットドライバー、刃が太い工業用カッター、ペンチ、プライヤー、五メータースケール、電設用工具もある。
「取り合えず必要な物を持ってきた。何でもできるぜ」
と言うと親指で自分の鼻を弾いた。
響介と真琴が興味を示す。
「どうやって使うの?」
「腰ベルト、付けてみるか?」とオピフ。
「重てぃ」と直ぐに弱音を吐く。
「俺も」と言う真琴に「腰悪くするから、やめとけ」と響介。
真琴は、腰ベルトをすると、「やばいやばい」と響介に助けを求めた。
「若いくせにだらしないの」その様子を見て、絢音に笑われた。
オピフは、そんな真琴と響介を横目にし、「どうだ」とベルトを軽々と腰に付けた。
それは、絢音へのアピールか。
「もう済んだでし、行くよ。ウビークエ、案内をお願い!」
絢音が「お前たちは子どもか」と急かせた。
オピフは、ケースの中をゴソゴソと探り、「暗いからな、首から掛けな」とヘッドライトを皆に配った。
「こっち、こっち」とウビークエが先で呼んでいる。
例の球体の乗り物を使って一階に着いた。
行ったことのない奥へと進む。
段々と明かりが届かなくなてきた。
「ここだよ」
何やら、床に直径一メートル程の丸い鉄板が敷いてあった。
淵がアンカーボルトで止められている。
オピフは、何処からか、カラーコーンと白黒の縞の棒を持って来た。
工事現場で見かけるアレだ。
鉄板の周りを囲み、「立ち入り禁止」のプラカードを設置した。
「これで良し」オピフが顔を上げた。
腰から、インパクトドライバーを取り出し、アンカーボルトを外していく。
ダダダダッとインパクトドライバーの音が響き渡る。
蓋をずらす。
オピフの表情で蓋の重さがわかる。
鉄板の下には、階段があった。
オピフが先に入り、穴がうす暗い明りが点灯する。
オピフが、ヒョコっと顔を出し、「来いよ」と手招きした。
みんな、それに従った。
何回か折れ曲がった階段を下ると、直径五メートル程のトンネルに行き当たった。
直径三十センチ程の菅が、トンネルに沿って設置されている。
所々の壁から水が滴っていて、トンネルの片隅の側孔に流れ込んでいる。
じめっとした湿気と何日もほおっておいた雑巾のような匂いが身体を包んだ。
しばらく、息をひそめトンネルの先を見つめる。
聞こえるのは、遠くから聞こえるモーターのような音や水が垂れる音だけだった。
「何か居る?」と、絢音が誰に訊いてる訳でもなく呟く。
「行こう、離れちゃだめだよ」ウビークエが先頭を歩いた。
暫く、ウビークエに付いて歩いた。
虫嫌いな絢音は特に落ち着かない。
壁や床や天井に目をやる。
何か見つけるたびに驚き、びくっと肩をすぼめた。
「ここだ」
ウビークエは、皆を止めた。
そして、壁を指さした。
壁には、厚い鉄板が張られていた。
その鉄板には、へたくそな字で”銀の入口”と書かれていた。
また、オピフの出番だ。
鉄板は、淵を等間隔でボルトで固定されていた。
「こういうのは、下から外さないとな」と独り言をいいながら、オピフがボルトを外していく。
鉄板の上端のボルト一本を残し、全てのボルトを外した。
オピフは、鉄板を横へずらし、反対側からも開けれるように細工をした。
穴が現れた。
半径一メートルの穴だ。
穴の周りは、荒い断面を見せていた。
ただ、予定されていたものではない緊急に開けられた穴だ。
「この穴をくぐるんだ。あっちが、銀の塔だ」
先頭は、やはり、ウビークエだ。
次々と穴から、銀の塔へと入っていった。
ウビークエが、両手を上から下へを繰り返し、頭を低くするように指示を出す。
ゆっくりと中に進む。
「ここまで来れば大丈夫だ」
ウビークエが立ち上がる。
みんな、腰に手をあて、いたたたと背を伸ばす。
周りを見渡す。
そこには、色々なロボットが積まれていた、自動車のスクラップ工場の様に。
「オピフ、頼んだよ」
わかったとオピフがロボットの廃材の中からボディだけを選んで、持ってくると、あっと言う間に人数分の変装用ボディを造った。
各自、来てみて微調整をしていく。
「なんか、懐かしくない?」絢音が真琴と響介を見る。
「幼稚園の時、こんなの着たよ」
真琴と響介は、思い出していた。
そう、幼稚園の劇をやったんだ。
真琴は案山子で、響介はブリキ男だった。
真琴たちは大笑いしたが、ウビークエとオピフは、ポカンとして真琴たちを見ていた。
「こんなので、大丈夫なのか?」
響介は、腕をを上げながら呟いた。
動く度に金属の擦れる音がする。
「大丈夫、怯えるから見つかるのさ。堂々と胸を張って歩くんだ」
そう言うとウビークエは、小さな胸を張った。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~
最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」
力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。
自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。
そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈
身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。
そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる!
※この作品はカクヨムでも投稿中です。
ちょいダン? ~仕事帰り、ちょいとダンジョンに寄っていかない?~
テツみン
SF
東京、大手町の地下に突如現れたダンジョン。通称、『ちょいダン』。そこは、仕事帰りに『ちょい』と冒険を楽しむ場所。
大手町周辺の企業で働く若手サラリーマンたちが『ダンジョン』という娯楽を手に入れ、新たなライフスタイルを生み出していく――
これは、そんな日々を綴った物語。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
勇者(俺)いらなくね?
弱力粉
ファンタジー
異世界で俺強えええとハーレムを目指す勇者だった... が、能力が発動しなかったり、物理的にハーレムを禁じられたりと、何事も思ったように行かない。
一般人以下の身体能力しか持ち合わせていない事に気づく勇者だったが、それでも魔王討伐に駆り出される。
個性的なパーティーメンバーたちに振り回されながら、それでも勇者としての務めを果たそうとする。これは、そんな最弱勇者の物語。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる