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第14章 美術の間、音楽の間、そして視聴覚の間へ
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"美術の間"に来ていたのは、真琴だった。
絵が好きなので、当たり前と言えば当たり前のことだ。
"美術の間"は、いくつかの部屋に区切られていた。
その一つの部屋に真琴が入ってみた。
部屋は、大きな白い壁と部屋の真ん中に円が描かれていた。
その円の中に足を踏み入れた途端、激しい警戒音と×印が目の中に現れた。
×印は、ウベークエの貰ったコンタクト型デスプレィに表示されたものだ。
円から出ると、×印と警告音が消えた。
「入るなってことか」真琴は呟く。
円の外に出ると、メニューが現れた。
メニューから”彫刻”を選択。
彫刻の一覧が表示された。
一覧からある彫刻を指差すとピッと音がした。
部屋の中央の台座が二方向に分かれ彫刻が下から彫刻が上がってくる。
真琴が目を見張る。
<これが、これが観たかった……。ミケランジェロのピエタ……>
現れた彫刻に眼を心を奪われ動けない。
そおっと一歩前に踏み出し近づいてみた。
息をするのを忘れて、見つめる。
<本当に石で出来ているのか?……これぞ、奇跡だ!>
真琴は、頬を伝うものを感じていた。
涙だった。
<顔を、顔を見たい>
すると像が床に沈んで、真琴の顔の高さで止まった。
この装置は、僕の考えたことがわかるのか?
こんな近くで観ることが出来るなんて。
眼を閉じることが出来ない、閉じたくない。
これを頭に刻み込むんだ。
真琴は、そう思った。
真琴が次に選んだのは、絵画だった。
ずーっと気になっていた作家、エゴンシーレ。
部屋の中央に現れた。
近くによってじっくりと観る。
独特な自身のポーズや絵画は、とても新鮮で時代を超えていた。
この時代では、早すぎたかもしれない。
師匠のクリムトのように曲線をギザギザな線で曲線を探るのではなく、
一機にひかれた線は迷いがない力強い線は素晴らしい。
線だけなのに、立体が、表情が、感情が描かれる。
描かれるものは、体と最小限のモノだけ。
それだけで、十分だった。
これが、世紀末美術の一角を成す画家の絵だ。
真琴は、それからは夢中で鑑賞した。
思いつく限りの作家を選択して、じーっと見つめていた。
響介は、”音楽の間”に来ていた。
部屋は、弦楽器、管楽器、打楽器と三つの大きな部屋から出来ていた。
響介は、弦楽器に部屋を選び奥に進んだ。
一本玄の物から、ダルシマー、クラヴィコード、チェンバロ、ピアノまで展示されている。
その楽器には人が割り付けられていた。
その動きを見ていると、どうも 楽器の手入れをしている様だ。
ピアノの前に来ると、手入れをしている人がどうぞと手招きしてくれた。
響介は、ピアノで何曲か弾いてみた。
楽器の手入れをしている者たちが集まってくる。
演奏が終ると、拍手喝采された。
その中の一人が響介に近づいてきた。
「素晴らしい演奏でした。
気に行った楽器があれば、あなたの部屋に届けましょう」
その中の一人が響介に話しかけた。
「それじゃ……これを」
響介は、演奏したばかりのピアノを指差した。
そこで、過去の名演奏は、”視聴覚の間”で体験できると教えてもらった。
語り継がれている名演奏を聴けるという。
それも画像付きでだ。
響介が、学校の音楽室で飾られていたバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなども観れるといる。
本当の天才をこの眼で観れるという事実は、響介の頭は、ドーパミンで溢れかえるのを感じていた。
響介は、期待を胸に”音楽の間”を後にし、小走りで”視聴覚の間”に向かった。
響介が、”視聴覚の間”に着いた時、遠くで手を振っている真琴を見つけた。
その時、響介の後ろから肩を叩いたのは、絢音だった。
三人は、ここに集合する約束だった。
最初に口を開いたのは響介だった。
「ここは、凄いらしい!天才を、動いている天才を観ることができる」
「僕も聞いたよ!画家や彫刻家の制作している姿も観れるらしい」
「私も。憧れの作家に会えるらしいの!」
興奮する三人は、お互いの顔を見ながら、ほとんど叫んでいた。
「そうさ、ここは素晴らしところだよ」
三人の足元から声が聞こえる、ウビークエだった。
「おいらも入る、ここ好き、おもしろい」
ウビークエを先頭に真琴たちが続いて”視聴覚の間”に入っていった。
視聴覚室は、半球上の白いドームが並んでいた。
ドームには、赤や緑のランプが点灯している。
「はやく、はやく。一緒に見ようよ」
ウビークエは、緑のランプのついたドームに走っていった。
そして、ランプにタッチすると、ぽっかりと穴が開き、中に入っていった。
ウビークエは、その穴から顔を出し、「何してるのはやく」と手招きする。
まるで、遊園地に行った子どものようだ。
真琴たちは、ウビークエの後を追った。
ドームの中は、暗かったが徐々に明るくなってきた。
三人の眼の中にメニューが現れていた。
メニューの上に、”ウベークエ”と書かれていた。
最初にランプに触ったウベークエのメニューらしい。
「海、海を見たい!」とウビークエ。
表示されたメニューには、色々な海が表示されていた。
ドームの中に青い空が広がった。
地平線が見える。
波が足元まで打ち寄せる。
心地よい風が海の匂いを運んでいた。
真琴たちは、瞬きを忘れて風景を見つめていた。
ウビークエが、波際まで歩いて行く。
真琴たちも後を追った。
キュッキュッと砂が鳴る。
「砂が鳴るなんて……、地球岬?」
ウビークエが、絢音に駆け寄り、手を取って見上げた。
「ねぇ、本物の海ってこんなの?」
「そう、海だわ」
ウビークエが、わーいと喜んでまた波際まで走っていった。
「こんなの見たことないな」
響介が呟く。
ここは、どこの海なのだろう。
そうだ、僕はこんな海に行ったことがある。
母さんと父さんと三人で。
皆、笑っていた。
でも、今は一人。
「なにを考えてるの?」
絢音が、心配そうに響介の顔を覗き込んだ。
「真琴は?」
「あそこよ」
絢音が、波際で戯れてる真琴とウビークエを指さした。
「子どもみたいだな、二人とも」
「そうね」
響介は、二人を眺めているだけだった。
「仲間に入れて貰いましょう」
そう言うと絢音は、立ち上がり響介の手を引いて、二人の元に向かった。
響介の涙に気づかないふりをして。
絵が好きなので、当たり前と言えば当たり前のことだ。
"美術の間"は、いくつかの部屋に区切られていた。
その一つの部屋に真琴が入ってみた。
部屋は、大きな白い壁と部屋の真ん中に円が描かれていた。
その円の中に足を踏み入れた途端、激しい警戒音と×印が目の中に現れた。
×印は、ウベークエの貰ったコンタクト型デスプレィに表示されたものだ。
円から出ると、×印と警告音が消えた。
「入るなってことか」真琴は呟く。
円の外に出ると、メニューが現れた。
メニューから”彫刻”を選択。
彫刻の一覧が表示された。
一覧からある彫刻を指差すとピッと音がした。
部屋の中央の台座が二方向に分かれ彫刻が下から彫刻が上がってくる。
真琴が目を見張る。
<これが、これが観たかった……。ミケランジェロのピエタ……>
現れた彫刻に眼を心を奪われ動けない。
そおっと一歩前に踏み出し近づいてみた。
息をするのを忘れて、見つめる。
<本当に石で出来ているのか?……これぞ、奇跡だ!>
真琴は、頬を伝うものを感じていた。
涙だった。
<顔を、顔を見たい>
すると像が床に沈んで、真琴の顔の高さで止まった。
この装置は、僕の考えたことがわかるのか?
こんな近くで観ることが出来るなんて。
眼を閉じることが出来ない、閉じたくない。
これを頭に刻み込むんだ。
真琴は、そう思った。
真琴が次に選んだのは、絵画だった。
ずーっと気になっていた作家、エゴンシーレ。
部屋の中央に現れた。
近くによってじっくりと観る。
独特な自身のポーズや絵画は、とても新鮮で時代を超えていた。
この時代では、早すぎたかもしれない。
師匠のクリムトのように曲線をギザギザな線で曲線を探るのではなく、
一機にひかれた線は迷いがない力強い線は素晴らしい。
線だけなのに、立体が、表情が、感情が描かれる。
描かれるものは、体と最小限のモノだけ。
それだけで、十分だった。
これが、世紀末美術の一角を成す画家の絵だ。
真琴は、それからは夢中で鑑賞した。
思いつく限りの作家を選択して、じーっと見つめていた。
響介は、”音楽の間”に来ていた。
部屋は、弦楽器、管楽器、打楽器と三つの大きな部屋から出来ていた。
響介は、弦楽器に部屋を選び奥に進んだ。
一本玄の物から、ダルシマー、クラヴィコード、チェンバロ、ピアノまで展示されている。
その楽器には人が割り付けられていた。
その動きを見ていると、どうも 楽器の手入れをしている様だ。
ピアノの前に来ると、手入れをしている人がどうぞと手招きしてくれた。
響介は、ピアノで何曲か弾いてみた。
楽器の手入れをしている者たちが集まってくる。
演奏が終ると、拍手喝采された。
その中の一人が響介に近づいてきた。
「素晴らしい演奏でした。
気に行った楽器があれば、あなたの部屋に届けましょう」
その中の一人が響介に話しかけた。
「それじゃ……これを」
響介は、演奏したばかりのピアノを指差した。
そこで、過去の名演奏は、”視聴覚の間”で体験できると教えてもらった。
語り継がれている名演奏を聴けるという。
それも画像付きでだ。
響介が、学校の音楽室で飾られていたバッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなども観れるといる。
本当の天才をこの眼で観れるという事実は、響介の頭は、ドーパミンで溢れかえるのを感じていた。
響介は、期待を胸に”音楽の間”を後にし、小走りで”視聴覚の間”に向かった。
響介が、”視聴覚の間”に着いた時、遠くで手を振っている真琴を見つけた。
その時、響介の後ろから肩を叩いたのは、絢音だった。
三人は、ここに集合する約束だった。
最初に口を開いたのは響介だった。
「ここは、凄いらしい!天才を、動いている天才を観ることができる」
「僕も聞いたよ!画家や彫刻家の制作している姿も観れるらしい」
「私も。憧れの作家に会えるらしいの!」
興奮する三人は、お互いの顔を見ながら、ほとんど叫んでいた。
「そうさ、ここは素晴らしところだよ」
三人の足元から声が聞こえる、ウビークエだった。
「おいらも入る、ここ好き、おもしろい」
ウビークエを先頭に真琴たちが続いて”視聴覚の間”に入っていった。
視聴覚室は、半球上の白いドームが並んでいた。
ドームには、赤や緑のランプが点灯している。
「はやく、はやく。一緒に見ようよ」
ウビークエは、緑のランプのついたドームに走っていった。
そして、ランプにタッチすると、ぽっかりと穴が開き、中に入っていった。
ウビークエは、その穴から顔を出し、「何してるのはやく」と手招きする。
まるで、遊園地に行った子どものようだ。
真琴たちは、ウビークエの後を追った。
ドームの中は、暗かったが徐々に明るくなってきた。
三人の眼の中にメニューが現れていた。
メニューの上に、”ウベークエ”と書かれていた。
最初にランプに触ったウベークエのメニューらしい。
「海、海を見たい!」とウビークエ。
表示されたメニューには、色々な海が表示されていた。
ドームの中に青い空が広がった。
地平線が見える。
波が足元まで打ち寄せる。
心地よい風が海の匂いを運んでいた。
真琴たちは、瞬きを忘れて風景を見つめていた。
ウビークエが、波際まで歩いて行く。
真琴たちも後を追った。
キュッキュッと砂が鳴る。
「砂が鳴るなんて……、地球岬?」
ウビークエが、絢音に駆け寄り、手を取って見上げた。
「ねぇ、本物の海ってこんなの?」
「そう、海だわ」
ウビークエが、わーいと喜んでまた波際まで走っていった。
「こんなの見たことないな」
響介が呟く。
ここは、どこの海なのだろう。
そうだ、僕はこんな海に行ったことがある。
母さんと父さんと三人で。
皆、笑っていた。
でも、今は一人。
「なにを考えてるの?」
絢音が、心配そうに響介の顔を覗き込んだ。
「真琴は?」
「あそこよ」
絢音が、波際で戯れてる真琴とウビークエを指さした。
「子どもみたいだな、二人とも」
「そうね」
響介は、二人を眺めているだけだった。
「仲間に入れて貰いましょう」
そう言うと絢音は、立ち上がり響介の手を引いて、二人の元に向かった。
響介の涙に気づかないふりをして。
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