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二匹目!+一羽目
5・モフモフわんことミドルポーション+を作ります。
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「マスター、ミドルポーション+作るのか?」
(((ミドルポーション+をお作りになりますか?)))
天井を見つめるわたしの視線に気づいたのか、タロ君とスライム達が尋ねてくる。
スライム達は尋ねるだけでなく、ボトボトと目の前に落ちてきた。
薄く発光する白いスライムと、ささやかな風を起こす緑のスライムと、タロ君に炎属性を設定したことで生まれてきた湿気を含んだ青いスライムが数体ずつ。青いスライムはまだ数が少なく、内包しているのも実ではなく花だった。
「ずっとこのままにもしておけないからねえ」
スライムが内包する花や実は、ポーションの原料となる薬草だ。
ダンジョン環境が良く、生命活動に必要な量以上の魔力を吸収できる状況下にあるスライムが体内に蓄える魔力の結晶である。
本来なら薬草はスライムの体から出すと溶けて消えるほど脆い魔力の集まりなのだが──
「異世界でも同じような事例はないんだよね?」
「ん。どこかの大賢者の実験で小さな実くらいまでなら作れたようだが、ここまでの大きさのものはない」
スライムの中の実は、今にもスライムの体表を破って突き出しそうなほど巨大化している。
(((なんだか体の中がチクチクします)))
実が生ったお祝いにと、先日苺を作ってごちそうしたのも良くなかったようだ。
それで一気に実が大きくなった。
結界で区切られたエントランスのほうのスライム達には、双葉すら生じていないのは幸いだ。海外のダンジョンでは発生していない状態を訪問者達に見られたら、とんでもない騒ぎになるだろう。
まあこのダンジョンのことだから、なにが起こっても不思議じゃないと思われるだけかもしれないが。
公式に発表こそしていないもののポーションをドロップするということ、そしてダンジョンのある町では外国の諜報員が活動できないということを合わせて、わたしのダンジョンは世界で『聖なるダンジョン』と呼ばれているらしい。
五年経ってもダンジョンをひとつも制覇できてない未熟な地球人類のためのチュートリアルダンジョンなのではないか、という意見もあるようだ。……知らんがな。
異世界の事例でもない以上、スライムの実大き過ぎ問題の解決法は、ダンジョンマスターのわたしが考えるしかない。
体内の魔力が増えたら薬草を生成する代わりに分裂するという方法もあるらしいが、うちのダンジョン狭いからなー。ボス部屋とエントランスがスライムでいっぱいになっちゃう。
色とりどりのスライムでいっぱいのダンジョンって、可愛いような怖いような、デパートのゲームコーナーにある子どもが遊ぶビニールドームのような。
DPも10000000を越えたし、10000DPを消費して新しい階層を作り、敵対する数種のモンスターを配置して訪問者なしでもDPを稼げる状態にしてみるのも手といえば手なんだけど。
日々の消費DPが10000を越えるのには、まだ抵抗があるんだよね。
今は9000DPだから、なんとなく気分的にセーフ!
「……そうだね。とりあえずミドルポーション+を作ろうか」
「影コアいる?」
「そうだね、お願い。……二個欲しいかな」
「任せるのだ!」
影のマントや新しい苺促成栽培用腕輪の作成で、以前もらったコアは全部使い果たしてしまったわたしは、素直にお願いした。
オルトロスモードのタロ君が影を作り出して倒すのにも、すっかり慣れてしまったなあ。
うん、気にしてもしょうがない。影は普通の犬猫の抜け毛で作ったぬいぐるみのようなものだというし、サクラ(享年二十歳・ミニチュアダックスフント)が遊び用のぬいぐるみにしていた仕打ちは、あんなもんじゃなかったしね。
犬猫は戦うもの、狩るもの、食らうものなのだ。
(どうぞなのだ)
「ありがとう」
タロ君は双頭でコアをくわえて運んでくる。
わたしが取りに行くのはダメらしい。
「それじゃお願いね」
(((マスターの仰せのままに)))
天井から新しいスライムも落ちてきて、合体していく。
前もそうだったけど、属性の違いは気にしなくてもいいようだ。
白緑青(あれ? 実に花混ぜていいの? 効能が強過ぎても怖いからいいか)のスライムが混じり合った巨大な球体は、ゼリーが浮かんだソーダ水のようにも見えた。
(((さあマスター、タロ様のシャドウコアを)))
「うん、どうぞ」
ソーダ水にタロ君の影コアを渡すと、
ぽぽぽぽぽーん!
タロ君がレベル4に上がっていたせいもあるのか、三千瓶のミドルポーション+が完成した。ポーションやミドルポーションとは色が違う。
今回は身内用に少し保管しておきたいんだけど、これはドロップ品リストに登録できないんだよなー。
しかし、ポーションが一日数瓶ドロップ、先日ミドルポーションが千五百瓶、今回ミドルポーション+が三千瓶って……以前訪問者に言われた通り、うちのダンジョンってバグってるよ。
(((ミドルポーション+をお作りになりますか?)))
天井を見つめるわたしの視線に気づいたのか、タロ君とスライム達が尋ねてくる。
スライム達は尋ねるだけでなく、ボトボトと目の前に落ちてきた。
薄く発光する白いスライムと、ささやかな風を起こす緑のスライムと、タロ君に炎属性を設定したことで生まれてきた湿気を含んだ青いスライムが数体ずつ。青いスライムはまだ数が少なく、内包しているのも実ではなく花だった。
「ずっとこのままにもしておけないからねえ」
スライムが内包する花や実は、ポーションの原料となる薬草だ。
ダンジョン環境が良く、生命活動に必要な量以上の魔力を吸収できる状況下にあるスライムが体内に蓄える魔力の結晶である。
本来なら薬草はスライムの体から出すと溶けて消えるほど脆い魔力の集まりなのだが──
「異世界でも同じような事例はないんだよね?」
「ん。どこかの大賢者の実験で小さな実くらいまでなら作れたようだが、ここまでの大きさのものはない」
スライムの中の実は、今にもスライムの体表を破って突き出しそうなほど巨大化している。
(((なんだか体の中がチクチクします)))
実が生ったお祝いにと、先日苺を作ってごちそうしたのも良くなかったようだ。
それで一気に実が大きくなった。
結界で区切られたエントランスのほうのスライム達には、双葉すら生じていないのは幸いだ。海外のダンジョンでは発生していない状態を訪問者達に見られたら、とんでもない騒ぎになるだろう。
まあこのダンジョンのことだから、なにが起こっても不思議じゃないと思われるだけかもしれないが。
公式に発表こそしていないもののポーションをドロップするということ、そしてダンジョンのある町では外国の諜報員が活動できないということを合わせて、わたしのダンジョンは世界で『聖なるダンジョン』と呼ばれているらしい。
五年経ってもダンジョンをひとつも制覇できてない未熟な地球人類のためのチュートリアルダンジョンなのではないか、という意見もあるようだ。……知らんがな。
異世界の事例でもない以上、スライムの実大き過ぎ問題の解決法は、ダンジョンマスターのわたしが考えるしかない。
体内の魔力が増えたら薬草を生成する代わりに分裂するという方法もあるらしいが、うちのダンジョン狭いからなー。ボス部屋とエントランスがスライムでいっぱいになっちゃう。
色とりどりのスライムでいっぱいのダンジョンって、可愛いような怖いような、デパートのゲームコーナーにある子どもが遊ぶビニールドームのような。
DPも10000000を越えたし、10000DPを消費して新しい階層を作り、敵対する数種のモンスターを配置して訪問者なしでもDPを稼げる状態にしてみるのも手といえば手なんだけど。
日々の消費DPが10000を越えるのには、まだ抵抗があるんだよね。
今は9000DPだから、なんとなく気分的にセーフ!
「……そうだね。とりあえずミドルポーション+を作ろうか」
「影コアいる?」
「そうだね、お願い。……二個欲しいかな」
「任せるのだ!」
影のマントや新しい苺促成栽培用腕輪の作成で、以前もらったコアは全部使い果たしてしまったわたしは、素直にお願いした。
オルトロスモードのタロ君が影を作り出して倒すのにも、すっかり慣れてしまったなあ。
うん、気にしてもしょうがない。影は普通の犬猫の抜け毛で作ったぬいぐるみのようなものだというし、サクラ(享年二十歳・ミニチュアダックスフント)が遊び用のぬいぐるみにしていた仕打ちは、あんなもんじゃなかったしね。
犬猫は戦うもの、狩るもの、食らうものなのだ。
(どうぞなのだ)
「ありがとう」
タロ君は双頭でコアをくわえて運んでくる。
わたしが取りに行くのはダメらしい。
「それじゃお願いね」
(((マスターの仰せのままに)))
天井から新しいスライムも落ちてきて、合体していく。
前もそうだったけど、属性の違いは気にしなくてもいいようだ。
白緑青(あれ? 実に花混ぜていいの? 効能が強過ぎても怖いからいいか)のスライムが混じり合った巨大な球体は、ゼリーが浮かんだソーダ水のようにも見えた。
(((さあマスター、タロ様のシャドウコアを)))
「うん、どうぞ」
ソーダ水にタロ君の影コアを渡すと、
ぽぽぽぽぽーん!
タロ君がレベル4に上がっていたせいもあるのか、三千瓶のミドルポーション+が完成した。ポーションやミドルポーションとは色が違う。
今回は身内用に少し保管しておきたいんだけど、これはドロップ品リストに登録できないんだよなー。
しかし、ポーションが一日数瓶ドロップ、先日ミドルポーションが千五百瓶、今回ミドルポーション+が三千瓶って……以前訪問者に言われた通り、うちのダンジョンってバグってるよ。
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