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一匹目!

22・モフモフわんことゴースト作るよ!

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「なに、これっ!」

 さすがにアパートでゴーストを作成するわけにもいかないので、わたしとタロ君はダンジョンに転移した。
 ボス部屋からエントランスを覗いて、わたしは目を丸くする。
 訪問者ビジターが来たという通知もなかったし、そもそも昨日倒されたマッドゴーレムがリポップする時間でもないのに、ダンジョンには人があふれていたのだ。

「テントまで張って……昨日から泊まってるの?」
「マスター」
「ありがとう」

 オルトロス姿になったタロ君が差し出す肉球に耳を当てる。
 ステータスボードで確認した昨日の訪問者ビジター百三十五名すべてが残っているようではなさそうだが、五十人は間違いなくいると思う。
 雑踏を思わせるざわめきの中、事情がわかりそうな会話を探す。

『ポーションがドロップするとは驚きですね』
『欠損や状態異常病気は治せないとはいえ、HPを回復して怪我を治します。これまでの医学で必要だった薬品も器具もリハビリ期間も必要ない。問題は数ですよ』

 タロ君にわけてもらった聴覚は、声だけでなく話者のイメージまで運んでくる。
 テントの中で会話しているのは一昨日『隊長』と呼ばれていたDSSSの調査員と、彼とは明らかに異なる格好の──

「自衛隊? ダンジョンの調査は民間企業に委託されてるのに、どうして?」
「マスターのポーション目当てじゃないのか?」
「あ、そっか」

 自衛隊が百人体制? で調査に来るくらいポーションのドロップは重大事項だったんだ。
 ダンジョンでは既存の記録機器が使えないので、ふたりは盗聴を怖れることもなくポーションについての話を進めていく。
 ……ダンジョンマスターが聞いてるなんて思いもしないよね。

『本当に他国ではドロップしていないんでしょうか』
『ドロップ率が低過ぎるのかもしれません。一昨日は一パーセント、昨日は十パーセントでしたから』
『今日は百パーセントになるといいんですがね』

 二十五パーセントですから!
 DSSSの調査員だけでなく、ここに来ている自衛隊員もリアルラックが低い面々なんだろうか。
 ……最初のうちはエリートが厳選されてたって聞くけど、今ごろダンジョンに関わってるのは要領が悪くて逃げ遅れた人だけなのかもしれない。

 『隊長』は四十代後半から五十代前半、対する自衛隊員は二十代後半から三十代半ばに感じた。どちらも敬語で会話している。
 一昨日の隊長は部下に常体で話してたから、自衛隊員の人が格上なんだろうな。
 DSSSは自衛隊の下請けみたいなものだしね。外郭団体?

『……すべてが大きく変わります』
『良いほうに変わるといいんですがね。ポーションが日本でしかドロップしないとなると、またぞろ言いがかりつけてきそうな国々があるじゃないですか』
『自分達の情報は秘匿したまま、こちら日本の情報と成果だけを要求してくることでしょう』

 むー。うちのダンジョンに人が来ないと困るんだけど、ドロップ品がポーションだと価値があり過ぎて厄介のもとだったかな。
 今からでもアイテム設定は変えられるよね?

『でもポーションが見つかって良かったですよ。日本では攻略ではなく調査を主としてきたためダンジョンにおける死者数は少ないですが、それでも0ではない』
『地上に面した第一層にまで上級モンスターが現れるダンジョンもありますからね』
『臨床実験で効能が証明されて一定数を確保できたら、ダンジョン調査時の事故や戦闘で負傷して治療中の自衛官へポーションを回してもらえるかもしれません』
『……それはなによりです。お互いダンジョンにしがみついてきた甲斐がありましたね』

 ……数が少ないと一部の人にしか行き渡らないだろうなあ。
 仕方ない。起こるかもしれない厄介の解決はあの人たちにお願いするとして、今日作るゴーストもポーションをドロップする設定にしよう。
 みんなプロだから、いきなりゴーストが現れても大丈夫だよね?

「タロ君、そろそろゴースト作ろうか」
「作るのだ!」

 わたしとタロ君は10000DPを消費して、闇属性の下級モンスターゴーストを百体作成することにした。
 この一セット百体縛りが地味に辛い。
 数が多いし、わたしは自分のところにモンスターを召喚できるので、エントランスのほうに出現させよう。……ボス部屋がゴーストでいっぱいになったのを想像して怖くなったからじゃないデスヨー。
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