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一匹目!
9・モフモフわんこにサクラを紹介するよ!
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大家さんに許可も得たから、夕飯を食べてのんびりしよう。
わたしは台所に立って、襖を開けた押し入れをふんふんしているタロ君に聞いた。
「タロ君、食べられないものってある? 普通の犬と同じで玉ネギはダメ?」
「吾はモンスターなので、なんでも食べられるのだ」
「そうなんだ。逆に好きなものってなぁに?」
「んー……お肉かなあ。まだ食べたことないけど」
生まれたばかりだもんね
「じゃあポトフでいい? お肉はないけどベーコン入れるよ」
暑いときにこそ熱いもの、というわけではなく、単に今わたしはポトフに凝っていた。
玉ネギを丸ごと入れるのが好きだ。タロ君が大丈夫なら、遠慮せず入れてしまおう。
ベーコンはちょっと奮発して、大きな塊を購入している。
「ベーコン。……マスター」
「なぁに?」
「吾はモンスターなので日々DPさえ消費すれば生き延びられるのだ。マスターの取り分を減らしてまで吾に食べさせる必要はない」
「タロ君が好きだから一緒に食べたいだけだよ。……ダメ?」
「ダメではないのだ。ふふふ、ベーコンかー。塩漬けした豚肉加工品だな?」
お金があってもDPが買えるわけじゃないしね。
ダンジョン運営を頑張るためにも栄養取らなくちゃ。
サクラが亡くなってから二ヶ月ほど呆けてたから、あんまりお金使ってなくて余裕があるし。……季節が変わったのに新しい服も靴も買ってないんだよなあ。
塊ベーコンを大胆に切ってお鍋に入れる。
味付けはベーコンの塩味とコショウだけだ。
しばらく煮込んでからちゃぶ台を出して、完成したポトフのお鍋を置く。
「タロ君はこのお皿使ってね」
「ん」
今度実家へ戻ったときにお兄ちゃんの娘、わたしの姪の歌音にあげようと思って百均で購入していたままごとセットのお皿にポトフを入れて、タロ君の前に置く。
「キャベツとニンジンとベーコンです」
「ベーコン!……玉ネギは?」
「やっぱり不安だから、タロ君のお皿には入れないでおく」
「大丈夫なのにー」
「いただきます」
「いただくのだ」
木製のスプーンでポトフを頬張りながら、お行儀悪くノートパソコンを開く。
わたしのダンジョンのこと、どんな風に言われてるんだろう。
「マスター、それパソコン?」
「そうだよ。……ダンジョンマザーツリーはこういうのからは知識を得られないの?」
「んー。この世界でいう規格が違うから、そういう情報媒体からは無理なのだ。最初のころはいろいろ試したみたいだが」
「ああ、妙な映像や声が入ってたのってダンジョンマザーツリーのせいだったんだ」
「んーん。それはゴースト系モンスターのせいなのだ」
「……ゴースト系か……」
あまり得意なほうではない。
「吾の闇属性が解放されたからゴースト系モンスターも作れるのだ!」
「……DPに余裕ができたら考えようか。ところでパンも食べる?」
「食べるのだ!」
わたしは、ポトフを煮込んでいる間にオーブントースターで焼いたフランスパンを千切って差し出した。
タロ君はそのまま齧りつく。
やだ、なにこの可愛い生き物!……ダンジョンのモンスターって生き物なのかな?
ノートパソコンは問題なく起動した。
ダンジョンの施設内でスマホも使えたし、もしかしたらほかのダンジョンは大きいから必ずゴースト系モンスターがいて電化製品の調子が悪くなってたのかな?
ネットを立ち上げる前に、デスクトップのフォルダを開いてみた。
「タロ君タロ君」
「どうしたのだ?」
「これね、実家にいた犬のサクラの写真だよ」
フランスパンを飲み込んだタロ君が、パソコン画面を覗き込む。
賢いタロ君は写真という言葉の意味もわかっているようだ。
まだ幼くて犬種の特徴(胴の長さ)を発揮していない、レッドロングコートの子犬の姿に目を見張る。
「この犬がサクラ? こっちの小さい人間は?」
「赤ちゃんのころのわたしだよ」
「マスター! 赤ちゃんのころのマスター!」
「赤ちゃんのころから一緒だったから格下に見られてて……じゃなくて、いるのが当たり前過ぎてあんまり写真を取ってなかったんだよね」
サクラの写真はわたしが赤ちゃんのころのものと、最近の数枚しかない。
彼女が亡くなったとき、思い出はいっぱいあったけど、思い出すきっかけの写真の少なさを悲しく感じたことを覚えている。
だから、
「ご飯が終わったらタロ君の写真撮ってもいい? 大学が始まったらスマホの待ち受けにしたいんだ」
「大学が始まったら、吾はお留守番なのか?」
「そのときはさすがにね」
それまでDPがもつかどうかもわからないけどね。
タロ君は力強く頷いた。
「ん、わかった。吾の写真を撮るのだ。サクラには負けないのだ!」
「サクラは実家のお母さんのパートナーだったから、わたしのパートナーはタロ君だけだよ」
「そうか?……んふふ」
嬉しそうなタロ君の可愛さがMAXだったので、わたしは自分用に残していたベーコンも彼のお皿に入れてあげた。
わたしは台所に立って、襖を開けた押し入れをふんふんしているタロ君に聞いた。
「タロ君、食べられないものってある? 普通の犬と同じで玉ネギはダメ?」
「吾はモンスターなので、なんでも食べられるのだ」
「そうなんだ。逆に好きなものってなぁに?」
「んー……お肉かなあ。まだ食べたことないけど」
生まれたばかりだもんね
「じゃあポトフでいい? お肉はないけどベーコン入れるよ」
暑いときにこそ熱いもの、というわけではなく、単に今わたしはポトフに凝っていた。
玉ネギを丸ごと入れるのが好きだ。タロ君が大丈夫なら、遠慮せず入れてしまおう。
ベーコンはちょっと奮発して、大きな塊を購入している。
「ベーコン。……マスター」
「なぁに?」
「吾はモンスターなので日々DPさえ消費すれば生き延びられるのだ。マスターの取り分を減らしてまで吾に食べさせる必要はない」
「タロ君が好きだから一緒に食べたいだけだよ。……ダメ?」
「ダメではないのだ。ふふふ、ベーコンかー。塩漬けした豚肉加工品だな?」
お金があってもDPが買えるわけじゃないしね。
ダンジョン運営を頑張るためにも栄養取らなくちゃ。
サクラが亡くなってから二ヶ月ほど呆けてたから、あんまりお金使ってなくて余裕があるし。……季節が変わったのに新しい服も靴も買ってないんだよなあ。
塊ベーコンを大胆に切ってお鍋に入れる。
味付けはベーコンの塩味とコショウだけだ。
しばらく煮込んでからちゃぶ台を出して、完成したポトフのお鍋を置く。
「タロ君はこのお皿使ってね」
「ん」
今度実家へ戻ったときにお兄ちゃんの娘、わたしの姪の歌音にあげようと思って百均で購入していたままごとセットのお皿にポトフを入れて、タロ君の前に置く。
「キャベツとニンジンとベーコンです」
「ベーコン!……玉ネギは?」
「やっぱり不安だから、タロ君のお皿には入れないでおく」
「大丈夫なのにー」
「いただきます」
「いただくのだ」
木製のスプーンでポトフを頬張りながら、お行儀悪くノートパソコンを開く。
わたしのダンジョンのこと、どんな風に言われてるんだろう。
「マスター、それパソコン?」
「そうだよ。……ダンジョンマザーツリーはこういうのからは知識を得られないの?」
「んー。この世界でいう規格が違うから、そういう情報媒体からは無理なのだ。最初のころはいろいろ試したみたいだが」
「ああ、妙な映像や声が入ってたのってダンジョンマザーツリーのせいだったんだ」
「んーん。それはゴースト系モンスターのせいなのだ」
「……ゴースト系か……」
あまり得意なほうではない。
「吾の闇属性が解放されたからゴースト系モンスターも作れるのだ!」
「……DPに余裕ができたら考えようか。ところでパンも食べる?」
「食べるのだ!」
わたしは、ポトフを煮込んでいる間にオーブントースターで焼いたフランスパンを千切って差し出した。
タロ君はそのまま齧りつく。
やだ、なにこの可愛い生き物!……ダンジョンのモンスターって生き物なのかな?
ノートパソコンは問題なく起動した。
ダンジョンの施設内でスマホも使えたし、もしかしたらほかのダンジョンは大きいから必ずゴースト系モンスターがいて電化製品の調子が悪くなってたのかな?
ネットを立ち上げる前に、デスクトップのフォルダを開いてみた。
「タロ君タロ君」
「どうしたのだ?」
「これね、実家にいた犬のサクラの写真だよ」
フランスパンを飲み込んだタロ君が、パソコン画面を覗き込む。
賢いタロ君は写真という言葉の意味もわかっているようだ。
まだ幼くて犬種の特徴(胴の長さ)を発揮していない、レッドロングコートの子犬の姿に目を見張る。
「この犬がサクラ? こっちの小さい人間は?」
「赤ちゃんのころのわたしだよ」
「マスター! 赤ちゃんのころのマスター!」
「赤ちゃんのころから一緒だったから格下に見られてて……じゃなくて、いるのが当たり前過ぎてあんまり写真を取ってなかったんだよね」
サクラの写真はわたしが赤ちゃんのころのものと、最近の数枚しかない。
彼女が亡くなったとき、思い出はいっぱいあったけど、思い出すきっかけの写真の少なさを悲しく感じたことを覚えている。
だから、
「ご飯が終わったらタロ君の写真撮ってもいい? 大学が始まったらスマホの待ち受けにしたいんだ」
「大学が始まったら、吾はお留守番なのか?」
「そのときはさすがにね」
それまでDPがもつかどうかもわからないけどね。
タロ君は力強く頷いた。
「ん、わかった。吾の写真を撮るのだ。サクラには負けないのだ!」
「サクラは実家のお母さんのパートナーだったから、わたしのパートナーはタロ君だけだよ」
「そうか?……んふふ」
嬉しそうなタロ君の可愛さがMAXだったので、わたしは自分用に残していたベーコンも彼のお皿に入れてあげた。
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