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6・冒険者になりました!
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今世ではニュイ魔王国の魔王としてジュルネ王国に侵攻する気はないから倒されることはないと思うけど……ないよね?
ゲーム内ではなんで侵攻してたんだろう。
なんか理由言ってたっけ? 魔王と帝国は王国に攻め込むもの、みたいな意識があったから疑問に思ってなかったよ。
少なくとも今世の私は、前世の記憶が戻っていなかったとしてもジュルネ王国に侵攻することはなかったと思う。
食文化は羨ましいけど、侵攻して略奪するより貿易して仕入れたほうが良いよ。
まあ、そのためにはニュイ魔王国にも産業が必要なんだけど。取引材料がないとジュルネ王国も取り引きしてくれないだろう。うち、貨幣すらないしなあ。
そんなことをつらつらと考えながら、冒険者登録のための書類を書いてシャルジュさんに渡す。
フラムはなんでずっと私を眺めてるんだろう。
シャルジュさんの用事が終わるの待ってるのかな? 前世のゲーム内では新人声優さんが声やってたからセリフにぎこちなさがあったけど、今世は現実で本人だからしゃべってても違和感なかったよ。声質は元から良いし、発声もできてるしね。
「うん、問題ないな。それじゃあこれが冒険者カードだ」
「ありがとうございます!」
「くどいオッサンだと思うだろうが、くれぐれも無理だけはするなよ?」
「はい! では失礼します!」
お辞儀をして立ち去ろうとした私に、フラムがついてくる。
「えっと……どうしたんですか、フラムさん? あ、ここまで連れてきてくださってありがとうございました」
「お礼を言われるほどのことじゃないよ。困ってる人を助けるのは、聖騎士として当たり前のことだもの。……あのね、冒険者登録すると武具が安く買える指定の武器屋があるんだ」
知ってるー。
『攻略できないバグオジ』のひとりで、大地属性魔法を操る聖騎士テールの父親でもあるアッシュさんが店主なんだよね。得物は本人が斧で息子が槌。主人公的にはどっちも打撃武器で同系統……斧って打撃武器か?
三代前の聖女だった奥さんは息子が小さいころに亡くなってるから、今のアッシュさんは独身なんだよね。
前世の私は魔鍛冶のミニゲームに嵌ってて、エンディングがあれば間違いなく迎えてたと思うほど武器屋に通って彼と会っていた。
ミニゲームで作った武器や防具、アクセサリーなどの魔鍛冶アイテムを売って、魔法金属製アイテムや使いたい特性持ちのモンスター素材製アイテム(ランダムで販売される)を新しく買っていたのだ。
聖騎士と四天王のエンディングを八人全部迎えて魔鍛冶アイテムを次のプレイに引継ぎできるようになってからは、究極の魔鍛冶アイテム作りに燃えてたっけ。そしたら魔王戦で王太子が来たんだよなあ。
フラムが微笑む。
さっき彼の名前を呼んだのは怪しまれるようなことじゃないよね?
冒険者ギルドへ来る途中でお互いに自己紹介したし、シャルジュさんにも名前で呼ばれてたもんね。そもそも聖女専属聖騎士に任命されたときにお披露目があったし、七日に一度の交流会では王国民と直接顔を合わせているしね。
「君、なにも武器を持ってないだろ? 田舎ではなにを使ってたの? まさか本当に素手でホーンラビットを殴り倒してたんじゃないよね、あはは」
「そんなわけないじゃないですかー、うふふ」
やだなー。殴り倒したのはそこらの犬サイズのホーンラビットじゃなくて、象サイズのヴェノムラビットですよー。
元々フラムは最初からアッシュさんの武器屋で自分の武器を見てもらうつもりだったらしい。そういや村の若者姿に似合わない大剣を背中に背負ってたっけ。
ギルドへ来たのは私の案内とシャルジュさんに顔を見せるためだという。
別れても互いの目的地が武器屋なら同じことなので、私は彼と同行することにした。
ゲーム内ではなんで侵攻してたんだろう。
なんか理由言ってたっけ? 魔王と帝国は王国に攻め込むもの、みたいな意識があったから疑問に思ってなかったよ。
少なくとも今世の私は、前世の記憶が戻っていなかったとしてもジュルネ王国に侵攻することはなかったと思う。
食文化は羨ましいけど、侵攻して略奪するより貿易して仕入れたほうが良いよ。
まあ、そのためにはニュイ魔王国にも産業が必要なんだけど。取引材料がないとジュルネ王国も取り引きしてくれないだろう。うち、貨幣すらないしなあ。
そんなことをつらつらと考えながら、冒険者登録のための書類を書いてシャルジュさんに渡す。
フラムはなんでずっと私を眺めてるんだろう。
シャルジュさんの用事が終わるの待ってるのかな? 前世のゲーム内では新人声優さんが声やってたからセリフにぎこちなさがあったけど、今世は現実で本人だからしゃべってても違和感なかったよ。声質は元から良いし、発声もできてるしね。
「うん、問題ないな。それじゃあこれが冒険者カードだ」
「ありがとうございます!」
「くどいオッサンだと思うだろうが、くれぐれも無理だけはするなよ?」
「はい! では失礼します!」
お辞儀をして立ち去ろうとした私に、フラムがついてくる。
「えっと……どうしたんですか、フラムさん? あ、ここまで連れてきてくださってありがとうございました」
「お礼を言われるほどのことじゃないよ。困ってる人を助けるのは、聖騎士として当たり前のことだもの。……あのね、冒険者登録すると武具が安く買える指定の武器屋があるんだ」
知ってるー。
『攻略できないバグオジ』のひとりで、大地属性魔法を操る聖騎士テールの父親でもあるアッシュさんが店主なんだよね。得物は本人が斧で息子が槌。主人公的にはどっちも打撃武器で同系統……斧って打撃武器か?
三代前の聖女だった奥さんは息子が小さいころに亡くなってるから、今のアッシュさんは独身なんだよね。
前世の私は魔鍛冶のミニゲームに嵌ってて、エンディングがあれば間違いなく迎えてたと思うほど武器屋に通って彼と会っていた。
ミニゲームで作った武器や防具、アクセサリーなどの魔鍛冶アイテムを売って、魔法金属製アイテムや使いたい特性持ちのモンスター素材製アイテム(ランダムで販売される)を新しく買っていたのだ。
聖騎士と四天王のエンディングを八人全部迎えて魔鍛冶アイテムを次のプレイに引継ぎできるようになってからは、究極の魔鍛冶アイテム作りに燃えてたっけ。そしたら魔王戦で王太子が来たんだよなあ。
フラムが微笑む。
さっき彼の名前を呼んだのは怪しまれるようなことじゃないよね?
冒険者ギルドへ来る途中でお互いに自己紹介したし、シャルジュさんにも名前で呼ばれてたもんね。そもそも聖女専属聖騎士に任命されたときにお披露目があったし、七日に一度の交流会では王国民と直接顔を合わせているしね。
「君、なにも武器を持ってないだろ? 田舎ではなにを使ってたの? まさか本当に素手でホーンラビットを殴り倒してたんじゃないよね、あはは」
「そんなわけないじゃないですかー、うふふ」
やだなー。殴り倒したのはそこらの犬サイズのホーンラビットじゃなくて、象サイズのヴェノムラビットですよー。
元々フラムは最初からアッシュさんの武器屋で自分の武器を見てもらうつもりだったらしい。そういや村の若者姿に似合わない大剣を背中に背負ってたっけ。
ギルドへ来たのは私の案内とシャルジュさんに顔を見せるためだという。
別れても互いの目的地が武器屋なら同じことなので、私は彼と同行することにした。
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