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第二話 私の罪
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「フェデリーカ、おはよう」
「おはよう。そういえば今日から学園だったね。もし良かったら僕と一緒に登校するかい? ひとりで行くのは気まずいだろう」
食堂では、お父様とお義兄様が迎えてくださいました。
私が学園に入学してから、ディアマンテ辺境伯領が魔獣の大暴走の季節でないときのお父様は、王都の辺境伯邸で私と過ごしてくださっています。
二年前卒業したお義兄様は、学園に隣接している魔導大学に入学して魔導の研究をなさっています。結界魔導の研究です。伝説の光の聖女のように国全体に何日も効果がある『結界』を張れなくても、一日だけでも半日だけでも町を守ることが出来れば、はぐれ魔獣の思わぬ強襲に怯えることなく大暴走の本隊を叩けますものね。
お義兄様と一緒に登校するのは望むところなのですけれど、お義兄様の言い方には疑問を持たずにはいられません。
どうしてひとりで学園へ行くのが気まずいのでしょう。
学園と魔導大学は隣接していますが、授業内容が違うので開始時間は違います。大学ですと研究内容によっては数日置きにしか登校しないこともあるでしょう。お義兄様が卒業してからの私は、いつもひとりで登校していたと思います。
とりあえずお義兄様に同行のお願いをして、私は席に着きました。
三人で会話を楽しみながら、朝食を始めます。
私はお母様譲りの黒髪と紫色の瞳ですけれど闇属性というわけではありません。闇属性の魔力も持つものの、お父様から受け継いだ風属性の魔力もあるのです。どちらの属性の魔導も達人級に使えるのなら嬉しいのですが、実際は闇と風が打ち消し合って、どちらの属性魔導も満足に使えません。魔力量が多いのだけが取り柄です。
風属性のお父様は白金の髪で色の薄い青灰色の瞳です。
お父様の、ディアマンテ辺境伯家の分家筋から養子に取ったお義兄様も同じ色合いです。
風属性魔導は有効範囲が広く威力も強いので、対魔獣魔導としてはとても優秀です。残念なことに風属性魔力の持ち主は総じて魔力量が少なめなのですが。
でも闇属性魔導も風属性魔導も今ひとつの代わりに、魔力量の多い私がお義兄様を支えて差し上げればよろしいのですわよね。
ディアマンテ辺境伯家のディアマンテとは金剛石を意味する言葉です。あの硬く不変な宝石のように、ディアマンテ伯爵家の人間の恋心は想う相手からの拒絶以外では潰えないと言われています。
お義兄様は、お母様がお亡くなりになったとき、後添えを迎えて新しい子どもを作る気もひとり娘の私を嫁がせる気もなかったお父様が、私の婿として養子に迎えた方なのです。
……あ。ひとりで登校するのが気まずい理由に気づきました。
「お義兄様、学園に通う貴族子女はほとんどが卒業と同時に結婚いたしますわ。みんな同じなのです。ですので私が卒業後にお義兄様と結婚するからって、ひとりで登校したときにからかわれたりはいたしませんわ」
「「?」」
微笑みながら言うと、お父様とお義兄様の顔色が変わりました。
「ご、ごめんなさい。違いましたか? 今朝の夢見が悪かったせいで記憶が混乱しているのかしら。……私達の結婚は、お義兄様が大学を卒業なさってからでしたでしょうか」
私の言葉を聞いて、お父様とお義兄様は首を横に振りました。
お父様の視線を受けて、お義兄様が口を開きます。
「フェデリーカ。確かに君は卒業後に結婚するけれど、それはこの国の王太子リッカルド殿下とだ。ひとりで登校するのが気まずいのではないかと思ったのは……昨日までの十日間、君は百年ぶりに現れた光の聖女様に暴力を振るった罪で謹慎していたからだよ」
「はい?」
私には、お義兄様に言われたことが理解出来ませんでした。
「おはよう。そういえば今日から学園だったね。もし良かったら僕と一緒に登校するかい? ひとりで行くのは気まずいだろう」
食堂では、お父様とお義兄様が迎えてくださいました。
私が学園に入学してから、ディアマンテ辺境伯領が魔獣の大暴走の季節でないときのお父様は、王都の辺境伯邸で私と過ごしてくださっています。
二年前卒業したお義兄様は、学園に隣接している魔導大学に入学して魔導の研究をなさっています。結界魔導の研究です。伝説の光の聖女のように国全体に何日も効果がある『結界』を張れなくても、一日だけでも半日だけでも町を守ることが出来れば、はぐれ魔獣の思わぬ強襲に怯えることなく大暴走の本隊を叩けますものね。
お義兄様と一緒に登校するのは望むところなのですけれど、お義兄様の言い方には疑問を持たずにはいられません。
どうしてひとりで学園へ行くのが気まずいのでしょう。
学園と魔導大学は隣接していますが、授業内容が違うので開始時間は違います。大学ですと研究内容によっては数日置きにしか登校しないこともあるでしょう。お義兄様が卒業してからの私は、いつもひとりで登校していたと思います。
とりあえずお義兄様に同行のお願いをして、私は席に着きました。
三人で会話を楽しみながら、朝食を始めます。
私はお母様譲りの黒髪と紫色の瞳ですけれど闇属性というわけではありません。闇属性の魔力も持つものの、お父様から受け継いだ風属性の魔力もあるのです。どちらの属性の魔導も達人級に使えるのなら嬉しいのですが、実際は闇と風が打ち消し合って、どちらの属性魔導も満足に使えません。魔力量が多いのだけが取り柄です。
風属性のお父様は白金の髪で色の薄い青灰色の瞳です。
お父様の、ディアマンテ辺境伯家の分家筋から養子に取ったお義兄様も同じ色合いです。
風属性魔導は有効範囲が広く威力も強いので、対魔獣魔導としてはとても優秀です。残念なことに風属性魔力の持ち主は総じて魔力量が少なめなのですが。
でも闇属性魔導も風属性魔導も今ひとつの代わりに、魔力量の多い私がお義兄様を支えて差し上げればよろしいのですわよね。
ディアマンテ辺境伯家のディアマンテとは金剛石を意味する言葉です。あの硬く不変な宝石のように、ディアマンテ伯爵家の人間の恋心は想う相手からの拒絶以外では潰えないと言われています。
お義兄様は、お母様がお亡くなりになったとき、後添えを迎えて新しい子どもを作る気もひとり娘の私を嫁がせる気もなかったお父様が、私の婿として養子に迎えた方なのです。
……あ。ひとりで登校するのが気まずい理由に気づきました。
「お義兄様、学園に通う貴族子女はほとんどが卒業と同時に結婚いたしますわ。みんな同じなのです。ですので私が卒業後にお義兄様と結婚するからって、ひとりで登校したときにからかわれたりはいたしませんわ」
「「?」」
微笑みながら言うと、お父様とお義兄様の顔色が変わりました。
「ご、ごめんなさい。違いましたか? 今朝の夢見が悪かったせいで記憶が混乱しているのかしら。……私達の結婚は、お義兄様が大学を卒業なさってからでしたでしょうか」
私の言葉を聞いて、お父様とお義兄様は首を横に振りました。
お父様の視線を受けて、お義兄様が口を開きます。
「フェデリーカ。確かに君は卒業後に結婚するけれど、それはこの国の王太子リッカルド殿下とだ。ひとりで登校するのが気まずいのではないかと思ったのは……昨日までの十日間、君は百年ぶりに現れた光の聖女様に暴力を振るった罪で謹慎していたからだよ」
「はい?」
私には、お義兄様に言われたことが理解出来ませんでした。
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