上 下
164 / 201

王道

しおりを挟む


 二人の戦闘が止まって数分。

 私とティアは警戒を怠らない。

 リリアママが剣を下ろし、トレファスが一言何かを呟いた。


 その瞬間、世界が変わった。

 見渡す全てがトレファスから放たれる魔力に覆い尽くされる。

 虹色のオーラが支配する世界。

 後ろからパリンと何かが連続で弾ける音が聞こえる。

 振り返ると私達とさっきまで戦っていたクラスの人達が全員粒子になり消えていく。

 反応すらも出来ずに。

『お姉ちゃん!』

 ティアが私を両手で抱きしめるとその場で地面を大きく蹴った。

 その瞬間、私が居た場所は弾けた氷と何かが通り過ぎた。

 それだけでその空間に穴が空いたように私が立っていた場所は抉れていた。

 助かった事実と氷が割れる音が私の耳に届く。




 リリアは苦悶の表情を浮かべる。

「リリアさん、すました顔が崩れてるぞっと!」

「貴方まさか!?」

 リリアの瞳は既に金色の膜が覆われている。

「今までの俺と一緒にするなよ! 一人だけ残すつもりだったが二人残ったな」

 リベルは下を見下ろすとティアとユリアの姉妹が残っている事を確認する。


『動くな……わかってるだろ?』


 リリアの動きが止まる。

 リベルは下にいるティアとユリアに右手を向けている。

「悔しいが俺はまだアンタを倒せないみたいだ……だが勝つ方法はある。それを神が教えてくれた」

「人質ですか」

「魔力を解け!」

 リベルの命令に素直に従うリリアは纏った魔力の全てを解くと金色の瞳は透き通る蒼の瞳に戻る。

 オーラルの能力で空中に浮遊する事が出来なくなったリリアは地面に降りる。

 リベルもリリアに連れられて地面に降りる。

「エクストラって攻略法教えてくれるのか、すげぇ便利だな」

 リリアがティアとユリアを守りに行くよりも、リベルが出す魔法がティアとユリアを貫く方が速い。

 リリアは従うしかなかった。

「おい、魔力の予兆が出てるぞ?」

 シュッと右手から波動のような虹色の魔法が放たれる。

 それはティアとユリアには避ける事も反応すら出来ずに直撃する。

 その場から吹き飛ばされるとバトルフィールドの壁に勢い良くぶつかりその場で止まる。

 倒れたティアとユリアは呻き声を上げる事しか出来ない。


「リリアさんこれでわかったでしょ? 俺に小細工は通用しない」

「わかりました、貴方の勝ちです」

「は? 何を勝手に終わらせようとしてるんだ?」

 リリアはリベルが何を言ってるのか分からなかった。

「リリアさんは今からそこの姉妹を助ける為に生贄になって貰うんだから」

「生贄と言うのは私に何かさせるのですか?」

 リベルはリリアの身体を舐め回すように眺める。

「リリアさんって良い身体だよな。金髪のサラサラの長い髪、透き通るような白い肌と蒼の瞳、スタイルだけでも誰もが振り返る程の見惚れる美女だ! しかもそんな美女が俺より強いってありえねぇだろ」

 一歩一歩とリベルはリリアに近づく。

「足でまといを連れてるからこうなるんだぜ」

 ティアとユリアは先程のダメージで声も上手く出せない。

 二人の想いは一致している。

『『私の事は良いから逃げて』』

 もしその声がリリアに届いたとしてもリリアはその場を動かない。

 それ程までにティアとユリアはリリアにとって他の生徒達よりも傷付いて欲しくないと思っているからだ。

 リベルは右手を下ろすと空中に虹色の玉を出現させた。

 これでいつでもティア達に攻撃できると言う意思表示だろう。




『やっぱり人生はこうでなくちゃな! チート最高!』


 俺が神から貰ったエクストラは全能力上昇と戦闘オペレーションの上方修正。

 そして相手の攻略法が手に取るように分かる。

 なんか身体に這うように流れてた魔力も俺の見える範囲で全てを覆うように拡大している。

 これが俺の世界。

 なんでも思い通りだ。

 あっちで寝てる姉妹もリリアさんを堪能したら構ってやるか。

 王道のハーレムはもう俺の国でやってるし、たまには強制的に従わせるって言うのもいいかもな。

 手を伸ばせば届く距離。

【高魔力反応アリ! 急速に接近中】

 ピピッと視界の端で警告を鳴らしてくる。

 エクストラで何処から来るかの予兆を見る。

 ……上?

 俺の真上に何かが降ってくる。

 それを避ける為に俺は距離を取る。

 まぁリリアさんの身動きが取れないんだ。

 他の奴らが増えても対したことじゃない。

 そいつ等を排除してお楽しみを再開するだけ。



『ふぅ、危なかったぁ! 足を踏み出したら空中とか聞いてないよ』

 空から降ってきたのは仮面を被った二人組だった。

 一人は無傷のようだが、もう一人はぐったりとしている。

 ぐったりしてる奴はどうでもいい。

 俺のチートが危険だと警報を鳴らしてるのは一人。

攻略法エクストラサーチ』

 なんだ? コイツもリリアさんと一緒で俺に攻撃出来ないようだ。

 しかも弱点もリリアさんと一緒かよ。

「お前も動くなよ……見れば分かるよな?」

「ん? あぁ成程ね。僕の直感だと……それはやめといた方がいいよ」

「はぁ? 何言っデェッ!?」

 鼻に激痛が走り抜けると周りの視界がグルンっと回る。

 待て待て、この中で誰も動いた奴なんていない。

 リリアさんや仮面の奴だって動いたら人質に魔法が発動されるはずだ。

 なんで俺が吹っ飛ばされてるんだ。

 鼻を両手で押さえて必死に考える。

 何が起こった!


『おい、お前……俺に殺されたいようだな』

 初めて俺は得体の知れない存在に恐怖した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第二章シャーカ王国編

黒銀の精霊マスター ~ニートの俺が撃たれて死んだら異世界に転生した~

中七七三
ファンタジー
 デブでニートで32歳。  理不尽ないじめを契機に、引きこもりを続ける生粋のニート。ネット監視と自宅警備の無償労働を行う清い心の持ち主だ。  ニート・オブ・ニートの俺は、家族に妹の下着を盗んだと疑われる。  なんの証拠もなしに、なぜ疑うのか!?  怒りを胸に、そして失意に沈んだ俺は、深夜のコンビニで自爆テロを敢行する。妹のパンツ履いて露出狂となり、お巡りさんに捕まるのだ。それで、家族の幸せもぶち壊すのが目的だ。  しかし、俺はコンビニ強盗に遭遇。なぜか、店員をかばって撃たれて死ぬ。  俺が目を覚ましたのは異世界だった。  ラッキー!!  そして、俺の異世界ライフが始まるのであった。

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

勇者召喚に巻き込まれたモブキャラの俺。女神の手違いで勇者が貰うはずのチートスキルを貰っていた。気づいたらモブの俺が世界を救っちゃってました。

つくも
ファンタジー
主人公——臼井影人(うすいかげと)は勉強も運動もできない、影の薄いどこにでもいる普通の高校生である。 そんな彼は、裏庭の掃除をしていた時に、影人とは対照的で、勉強もスポーツもできる上に生徒会長もしている——日向勇人(ひなたはやと)の勇者召喚に巻き込まれてしまった。 勇人は異世界に旅立つより前に、女神からチートスキルを付与される。そして、異世界に召喚されるのであった。 始まりの国。エスティーゼ王国で目覚める二人。当然のように、勇者ではなくモブキャラでしかない影人は用無しという事で、王国を追い出された。 だが、ステータスを開いた時に影人は気づいてしまう。影人が勇者が貰うはずだったチートスキルを全て貰い受けている事に。 これは勇者が貰うはずだったチートスキルを手違いで貰い受けたモブキャラが、世界を救う英雄譚である。 ※他サイトでも公開

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...