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空中

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『それでは皆さん行きましょう』

 私の声に準備をしていた生徒達が立ち上がる。

 控え室から出るとすぐ横に転移門が繋がれている。

 そこだけ空間が歪んでいる場所だ。

 私が先陣を切ってその転移門に足を踏み入れる。


『やって来ました、英雄リリア・フィールド! その手から創られる幻想的な魔法は敵をも魅了する程だと言いますね! その教えを受ける生徒達は我々を幾多の魔法で魅惑の森へと誘うでしょう……メルトラス学園の入場です!』


 ミライちゃん、その紹介凄く恥ずかしい。

 チラッとミライちゃんの方に視線を向けると片目をパチリと瞑ってウィンクをしてきた。

 そういう仕草は流石ユウカちゃんと姉妹なだけはある。


『えぇ、全くです。リリアの水と光の魔法を巧みに複合させ繰り出さる氷魔法は幻想的とすら言えますね』


 見慣れた声にミライちゃんの横を見ると……仮面を被ったお兄ちゃんが居た……なんでそこに?


『ここからは何故かスーリフォム様が連れてこられた謎の仮面の人と一緒に解説をしていきたいと思います……スーリフォム様の従者様だと言うことで私には断る権利などございません』

『リフェルに一番良く見える場所を希望したらここに来た』


 ミライちゃんは心底迷惑そうな視線をお兄ちゃんに向けるがお兄ちゃんは気にしてないようで、仮面の下に串焼きを持っていくともぐもぐと食べている。

 つんつんと私の背中を誰かがつつく。

 それに振り向けばユリアちゃんが私を見上げている。

『ママこの声、何処かで聴いたことない?』

「さ、さぁ誰かな?」

「ママが分からないならあの人じゃないか」

 ユリアちゃん……パパをあの人って。


 今は気にしててもしょうがない、気になるけど。

 至る所に設置された転移門から姿を現すのは他の国々から集められた精鋭達。

 私達の紹介が最後だったのかカウントダウンが始まる。

 競技大会はランカー制度により無くなったラグナロクの名残りで、教師又はその国のランカーが一人と優秀な生徒十五名がチームで各国事に行われる模擬戦争。

 今日は二十三もの国が参加をしている。

 人で溢れたバトルドームはカウントダウンが【0】になると共に擬似空間に強制転移が行われるように作られている。

 私が剣聖の時には参加出来なかったけど今は私の娘達と肩を並べて戦える事が誇らしく感じる。


 頭上に展開されていた数字が【0】に切り替わる。

 地面に張り巡らされた魔法陣がそれに起因して光り輝くとパッと何も無い空中に投げ出された。

 下降を開始し始めると悲鳴を上げる生徒達。

 私は魔力を纏い能力を解放した。





 急に地面もない雲の上に転移した私達。

『お姉ちゃん!』

 ティアも近くに居た私の腕を掴んで悲鳴を上げる。

 落ちていく程に地面が近づいていく。

 こんな高さに投げ出されて集中なんて出来るはずもない。

 私達の競技大会はここで終わるのかな? 私は一筋の助かる道を探す。

 するとリリアママと目が合う。

 ゆっくりとした動作でリリアママは目を瞑ると両手を祈るように組む、そして白銀の魔力を纏った。

 私達生徒全員を包み込むようにリリアママを起点に半透明の白銀の魔力が爆発的に広がって行く。

 リリアママの背中には物語に出てくるような天使の羽が見えると私達の落下はピタリと止まり、ゆっくりと地面に降りていく。

 初めて見たリリアママの力の一端に私は綺麗だと思った。

『お姉ちゃん、リリアママ綺麗だね』

 ティアも私と同じ事を思っていたらしい、私はそれに同意した。

 近くに居た私達にリリアママは空中で近づいてくる。

『フフ、ありがと』

 いつものような暖かな笑顔を向けて私とティアの頭を撫でるリリアママ。

 無事地面に降りると至る所で爆発音のような物が響き渡った。




『流石リリアさん! 早速幻想的な力を見せてくれましたよ!』

『あのスカートどうなってんだ? 全然めくれなかったな』

 俺の素朴な疑問にミライからの謎の殺気を感じる。

『えぇと謎仮面さん、魔道具扱いの制服にはそれ相応の戦闘補助機能がデフォルトで付けられるのが普通ですよ』

『……マジか』

『女の私から忠告しますけどあんまりそういう事は言わない方がいいですよ、観客の女の子達からの殺気がプンプンなんで発言も考えてくださいね』

 絶対俺と同じ事考えてた奴も居たはずだ! 俺の方を見ていた男達に視線をやるとスっと全員から逸らされた。

『観客の男共は馬鹿しかいないので切り替えましょう! ほら動き出しますよ!』

 モニターに視線を向けると転移した場所はランダムのようで早速バトルを開始する国もあった。

 その中で何故かもう既に一人になって動いてる奴が異様に目立つ。

 ソイツは他の国の奴らに包囲されているのに平然としている。

 豪華に着飾った服に金髪でなんか偉そうな男。

 ソイツは何も無い目の前の空間を右手で撫でる仕草をすると目の前にシュッと三本の剣が空中に現れ地面に刺さる。

 そしてまた空間を撫でるとその剣達が一つに纏まる。

 まるでゲームの武器を合成をしているような。

『物理迎撃スキル、魔法迎撃スキル、感知スキルオンにしてっと……コイツらに本気になってもワールドクエストのミッション報酬もしょっぱいし、こんな所でいいかな』

 男は目の前の剣を拾い上げると周りの敵を見渡して気だるそうに声を出す。


『まぁ、俺の暇潰しに付き合ってよ』





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