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奴隷

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 アクアにデートを邪魔されたがその後はご飯を食べたり、街中をブラブラしたりして過ごした。


 日が暮れる頃に剣を買いに行く事になった。

 武器屋に着くと色んな種類の剣が置いてある、短いのから長いのまで……武器を見ても俺にはそんな感性しかない。

 一通り見て回って俺はフランに尋ねてみた。

「なんの剣がいい?」

 武器屋に来た理由はある、フランの練習用の剣を買う為だ。

 魔法で剣を召喚してもいいが、朝は魔力コントロールとオーラルの維持とかで魔力を消費するから効率よく教えるには武器があった方がいいとユウカが言い出した。

 ユウカが魔法で召喚した剣を貸すと、それはそれでダメらしい。

 召喚した魔法剣はその人に合うように魔力量、形、重さを調整している。だから他人が用意した魔法剣を持つと変な癖が付くとか言ってたかな?

 フランは今、自分に合う剣を探している。

 短剣以外ほとんどの剣が持ち上げられないようだ。

 フランはションボリと肩を落としながら俺に声をかけてくる。

「お兄様、私に合う剣は魔法付与の剣しかダメそうです」

 なにそれ?

 無知な俺にユウカが横から口を挟む。

「クレス君は昔の人だからそんなハイテク武器知らないよ」

「今はそんなのがあるのか」

「魔法付与の剣って魔剣だよね? クレス君のグランゼルとかも今は魔剣って言われる部類だよ、昔の名刀なんかはほとんど魔剣なんだよ」

 へぇ~。

 俺はグランゼルを見る。

 この武器そんなハイテク武器だったのか。

 ユウカはカウンターに身を乗り出しておじさんに話しかける。

「おじさん、重力魔法が掛かってる魔剣はあるかい?」

 武器屋のおやじさんからは『そんなもんあるわけ無いだろ』と言われてしまった。

「まぁ、今では量産型の魔剣はちらほらあるけどグランゼルみたいに性能がいい魔剣ってそんなに作られてないし、高級な武器だからね」

 俺は腰に掛けているグランゼルを鞘ごと抜き取る。

「じゃあ、グランゼルをフランにあげよう」

 差し出すと申し訳なさそうな顔をしたフラン。

「……いいのですか?」

「いいよ、ほれ」

 俺はグランゼルを鞘ごとフランに渡す。

「か、軽いです! 重くないし、調度いい感じでシックリきてます!」

 どうやらグランゼルには重力魔法が付与されていたようだ。

 フランにグランゼルをあげたので俺の武器がなくなってしまった。

「おやじ、そこの魔剣ぐらいの長さの剣で耐久力がある奴ないか?」

 おやじさんは『それならある』と一つの剣を取り出した。

 俺はその剣を手に取り鞘から引き抜くと、刀身は銀色。

 普通の剣だ。

 それは名刀なんだ! とか、お前さんの目に惚れた! とかで業物持ってくるイベントは発生しなかったみたいだな。

 俺は少し残念な気持ちになったが気持ちを切り替えて俺は武器を買い家に帰ってきた。




 家に帰るとフランは庭でグランゼルを振りながら剣術の練習をしていた。

 大事そうに剣を振る姿を見ていると少しグランゼルが羨ましいぐらいだな。

 



 次の日になり俺が目覚めるとユウカがフランの剣術の指導をしていた。

 ソファーは俺のベットだ。

 ……素人の動きじゃない!

 庭の周りには魔法障壁が張られていて、そこでフランはユウカと対等に打ち合っていた。

 フラン達は俺が起きたことに気づくと、剣を鞘にしまう。

「フランちゃんすごいね」

「お兄様の剣からどう動けばいいか、教えてくれるんですよ」

 えっ? そんな機能ついてんの?

 だから俺の動きに似てたのかな?

「フランちゃんのオーラルの能力が『共鳴』触れたモノの意思をなんでも読み取る事ができる能力だからね」

 フランの能力か。

「休憩か?」

「はい、お兄様!」

 庭から家に上がってくるフランとユウカ。



 そんな時、家の扉からドンドンと叩く音が聞こえる。

「は~い」

 ユウカが玄関に向かっていった。


 帰ってきたユウカはアクアを連れてきやがった!

「またお前かよ」

 アクアは会った瞬間に頭を下げて声を張る。

「まずクレスさんに認めて貰おうと思いまして!」

「お前この国の王子らしいじゃないか」

「はい!」

「王子が庶民の家に訪問って俺達に迷惑がかかるんじゃないか? 俺達のくつろいでいる家で王子なんて来たらくつろげないだろ!」

 ユウカがお茶を入れながら横槍を飛ばす。

「ソファーで寝転がって王子と相対しているクレス君に言われても説得力ないんだけど」

 ユウカのジト目が辛い。

 顔を上げて真剣な眼差しを浴びせてくるアクア。

「それは失礼しました、ですがリリアさんがどうしても好きなんです! 『お兄様』とはリリアさんからも、クレスさんからも認めて貰うまで絶対に言いません」

 ほぅ、物分かりがいいじゃないか。

「雑用でもなんでもします、クレスさんを超えられるように僕を強くしてくれませんか!」

 アクアはその場で再度頭を下げる。

 俺を超えられるように俺から教えをこうと。

「なんでもすると言ったか? じゃあ死ね」

「はい、リリアさんが助けを求める時、僕は命を捨ててもリリアさんを守ります」

 頭を上げたアクアの瞳に映るリリアへの想いは昨日とは別物だった。

 昨日と今日でコイツに何があった?

 俺を舐める態度はきれいさっぱりになくなって、尊敬の色が瞳に映っている。

「俺が教えても俺を超えられないぞ?」

「僕はクレスさんに認めて貰いに来たのです、クレスさんを超えるというのは目標に過ぎません」

 初めてだな、リリアにここまで食い下がる奴は。

「俺に認めて貰ってもリリアが認めるとは限らないけどな」

「それはどういう……」

「教えてあげるって事さ、アクア君」

 アクアはユウカの声に振り向くと。


「よっしゃぁぁぁ!」


 アクアの叫びがうざい!

 俺はソファーに寝転がりながら呟く。

「ユウカ先生の教え子がもう一人増えました」

「この流れでまた僕が教えるのかい?」

 アクアは俺の奴隷になりました。

 これからが楽しみだ。


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