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偽りの契約
しおりを挟む『探したよ邪神』
『我をか?』
闇に染まる空間で邪神と女神が語り合う。
『なぜこんな所にいるんだい?』
「精神的なダメージを受けて魔法を使おうとするとな」
黒銀の魔力を手のひらに集めようとする邪神だったが。
その魔力は纏まらず粒子に変わる。
「今の我は魔法も使えないのじゃ」
『剣の勇者が憎い?』
「憎い、憎い、憎い!」
『なら私と手を組む気はないか?』
「剣の勇者を倒せる力を手に入れる事が出来るのなら何でもしてやる」
『力を合わせるよ』
闇の女神がどんよりとした虹色に輝く光を出すと、その光は闇の女神と邪神を飲み込んだ。
光が収まると闇の女神でも邪神でもなく一人の人物が立っていた。
漆黒を纏う髪に闇の女神と邪神の良いところを全部とったような完成された美女が。
『ピースは後一つ、面白くなってきた』
その美女は軽く微笑むと。
『剣の勇者、私に絶望を見せてくれ』
一言を残し、美女は消え去った。
リリアが剣聖になる晴れ舞台!
絶対に見るわ!
「クレス楽しそうだな」
フィリアが俺に向かって当たり前な事を言う。
「今日はリリアが剣聖になるんだぞ!」
「もう確信してるのか」
「勿論だ!」
剣聖適性の試験は学園がテレポートで生徒を送ると言っていたので俺はトウマのテレポートで先にメディアルに来ていた。
「僕もいるよ~」
「我も友達の応援ぐらいはな」
ユウカは勇者だから剣聖の試験は受けれなく、暇だとついて来やがった。
そしてフィリアも。
まぁいいか! 妹様の晴れ舞台を特等席で見なければ。
特等席を確保した俺達。
希望者が続々と出て来はじめ、その中に妹様もいた。
『様子が変だな』
『リリアさん、期待してますよ』
口々にそれしか言わない周りに私はうんざりしていた。
世界を救った一人でしかも学園在学中に剣聖になった人はまだ一人もいない。
私は在学中に剣聖になれるかもしれない生徒。
フィーリオン剣士学園も知名度が急上昇らしい。
私にとって甘い世界だった。
そう嫌な人が私の前に現れるまでは。
誰一人として私に尊敬の眼差しを送る。
初めてだった勝てるイメージが完全に湧かない相手というのは。
悔しい。
私は今から剣聖適性の試験がある。
先生の転移魔法が発動したようだ。
真っ白に染まる視界の中でどす黒い魔力が通りすぎる。
『ここはどこ?』
メディアルに転移されたはずの私の目の前に女の私でも見惚れる女の人が現れた。
私は身構える。
『安心していい、私はリリアの味方だ』
「なんで私の名前を!」
『味方だと言っただろう、彼奴に勝ちたいとずっと思ってるんじゃないか? 私は女神、リリアの力になる為に呼んだんだ』
私が勝ちたいと思ってる彼奴って嫌な人の事だよね。
「……ください」
『ハッキリ言え、リリアが望む力をやろう』
私は力強く声に出す。
『あの人に勝てる力を下さい!』
『良いだろう、契約だ! 絶対勝利の力を授けよう』
だがと女神様は呟く。
『契約の代価は剣の勇者の命』
剣の勇者? 私達が倒したはずなのに。
『もう一度現れるかも知れないからな』
女神様は剣の勇者がもう一度現れることを危惧して私に力を与えるという。
なら私の答えは決まっている。
「契約します、代価は剣の勇者の命」
『契約だ、代価は絶対勝利の力』
私の周りに闇が集まる。
「すごい!」
魔力量は生まれた時から決まっている。
なのに、私の魔力量が段違いに上がっていき、限界なんかないように止まることがない。
集中すると周りが止まっているかのように遅く感じる。
最初は目の前の女神様に勝てるかどうかも分からなかったのに今では勝てるかもじゃなく負ける気がしない。
『これでリリアは一人で剣の勇者を圧倒させる程の力を得た』
「これで私はあの人に追い付ける」
リリアの喜んでる姿を横目に結末を知っている女神はニヤリと笑うのだった。
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