星降る夜を貴方に

ごま

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友達の作り方

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「お…お話ですか……?」

「そうです、私とおしゃべりしていただけませんか?」

イザベル様は、動揺して視線が定まっていない。

「イザベル様は、とてもお美しいですね。一目見た時からお美しい方だなぁと思わず感嘆のため息をしてしまった程です。…実は、声をかけるタイミングをずっと窺っていたんです。」

「…!!そっそんな畏れ多いです。アリア様の方が、まるで春の訪れを告げる精霊のようで…!」

「ありがとうございます。そんな素敵な褒め言葉、頂いたことがありませんでした…とても嬉しいです。」

イザベル様は、頬をピンク色に染めて愛らしく微笑んだ。

「喜んで頂けたのなら、私も…嬉しいです。…あっ!アリア様も素敵な褒め言葉をありがとうございました!」

「いえいえ、私はただ気持ちをそのまま口にしただけですので。」

イザベル様は、仕草ひとつひとつが丁寧で…そしてとても謙遜しがちだ。

まるで己を心の中では卑下しているかのような自信のなさが言動に色濃く反映されている。

平民出身ということを気にしてらっしゃるのかしら。

いきなり住む世界の違う人達のところに放り込まれて、何が正解かも分からずに周りの顔色を伺って萎縮してしまっている。

「イザベル様、入学式はどうでしたか?」

「…そうですね……人が…入学生が沢山集まっていて圧巻でした。これからこの方々と一緒に学び合い、高めあっていくのだと…学園生活が楽しみになりました。」

「それは良かったです。私も期待に胸が高鳴りました…ですが…」

「なにか心配事が…?」

「お友達が出来るか、不安なのです…」

眉を下げて不安げに目を伏せる。

「…!私も不安に思っています…皆さんと仲良くなれるか…」

「もし…よろしければ…私とお友達になって下さいませんか?」

「私で良ければ喜んで…!宜しくお願い致します。」

イザベル様は、ぺこりと頭を下げた。

「こちらこそ宜しくお願い致します。」

私もお辞儀をした後、顔を上げるとイザベル様と目が合った。

どちらともなく、2人で笑いあった。









イザベル様には申し訳ないけど、少々卑怯な手段を取らせて貰った。

対外的には、イザベル様の方が家格は上。だけど、イザベル様のお気持ちはそれに付いて行けてない。

話をしている時にまだ周りの貴族に対して下手に出るところがあるあたり、ほかの貴族のことを上位の方、敬うべき方、だと思っている。

だから、私みたいなイザベル様の家格に近い貴族から悩みを打ち明ければ親近感を抱いて貰えると思った。

なるべく同情を誘うような悲しげな表情で訴えれば、優しいイザベル様はきっと断ることができない、とそう踏んで。

結果、イザベル様は私の提案に頷いてくださった。

同情をかう作戦が功を奏したかどうかは正直よく分からないし、罪悪感が半端ないけど…友達として支えられるように努力は惜しまないつもりだから…。許して下さい!!










今日、クラスが発表され順次本格的な授業が始まる。

全ては、テストの結果次第。皆と一緒のクラスになれますように!!




エリザベスと共にクラス表が貼られている掲示板まで来た。

あ~ドキドキする。違かったらどうしよう、もう1周回って見たくない…



なかなか見ようとしない私に痺れを切らしたエリザベスが、先に結果を見てしまう。

こちらを見たエリザベスは、ニコッと笑うと私に手招きした。

意を決して、エリザベスの隣から結果を見るとなんと、なんと、


「えっ!同じ!!」

「そう!同じ!やったわ、アリア!」

私たちは、手を合わせて喜びあった。




エリザベスの隣にクラスメイトととして立てること、心から安堵した。

これから、学園で様々なことを学び、吸収し、自分を磨いて高みに登ってみせる。


そして、私を助けるため、エリザベスが頂上から降りてくることがないよう、私は決して下を向かない。


決意を新たに、私は前を向いてエリザベスと一緒に歩き出した。


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