65 / 68
4部 心闇の宴
とある学院の生徒 マーロアとファルス
しおりを挟む
私達はいつも学院でお世話になっている錬金術師のアルノルド先輩のために素材を探してここまで辿り着いた。魔女の森には見たこともない魔獣が存在し、一度入ると出ることは叶わないと聞く怖い森なのだとか。
しっかりと下準備して森に入る。勝手に森を荒らすのは良くないから魔女に許可を貰わないといけないわ。そう思い、森に入る。一時間くらい歩いたかしら?少し小高くなった場所に小さな小屋が建っていた。
きっとここに違いない。
―コンコン―
恐る恐る扉をノックすると女の人の声が聞こえてきた。
「はぁい、誰かしら?」
出てきたのはレースのアイマスクをした絶世の美女。この人が噂の魔女?私達は魔女に案内されて小屋の中へ入った。小屋は何かの魔法が掛かっているようで見た目と違いかなり広い空間になっていたわ。
そして香る薬草を煮詰めた時のような匂い。
私は勧められるまま椅子に座り、出されたお茶を飲む。何気なく魔女は魔法でポットやお湯を出し、淹れてくれているけれど、その様子を見るからに一般人とは比較にならない魔力なのだと分かる。
そして隣にいたファルスが震えているわ。
どうしたの?とファルスの視線の先を見ると、魔女の足が蛇の尾になっている。
もしかして魔女自体が魔獣なの!?
私達はどうしようと震えていると、
「何か御用かしら?」
魔女はそう微笑みながら聞いてきた。
「は、はい。じ、実は。学院に通っていて、先輩が錬金をしているのですが、手伝うために珍しい素材を、と思って魔女の森にあるという魅惑の実と少しの魔獣を狩らせて欲しいと思い、ここにやって来ました」
「ふぅん。魅惑の実?カイン、分かるかしら?」
先ほどまで誰も居ないと思っていたのに。気配一つしなかったけれど突然現れた黒髪の執事服の男の人。どうやらカインという名前らしい。
「あぁ、お嬢様。偶に魔獣が争って取り合っている黄色いあの実ではないですか?」
「あれね。いいわよ。それに最近手入れをしていなかったから魔物も増えているし、狩れるのなら狩っていきなさいな」
「本当ですか!?有難うございます」
魔女はテーブルに頬杖をついて微笑んだ。
「対価はお持ちかしら?」
やっぱり噂は本当だったんだわ。ちゃんと用意をしていて正解だった。
私は震える手でリュックから乙女の花と聖水を出した。すると魔女は興味を持ってくれたみたい。
「あら、そのリュック。人間なのに頑張って作ったのね。……将来有望ね。それにこの乙女の花と聖水は本物ね。いいわ、気に入ったわ。カイン、付いて行ってあげてちょうだい」
土産物は本物だった。ホッと胸を撫でおろした。カインさんが付いて来てくれるのね。
どんな魔物が住んでいるか分からないこの森で住人が付いて来てくれるとは心強いわ。
私達は魔女にお礼をしっかり言って小屋を後にした。そしてカインさんは小屋を出てから私達に注意事項を話す。
「お前達の実力では倒せない魔獣が多い。私から離れないように」
「「分かりました」」
小屋を出て歩き始めると先ほどとは一気に風景が代わり、どこを見ても鬱蒼とした森となっていた。
「ファルス、さっきまでの道と全く違うわ」
「マーロア、魔物の気配が周りからする」
どうやらさっそく魔獣に囲まれたみたい。私達は剣に手を掛けている。ガサガサと葉を揺する音がしたと思ったら二メートルはあろうかと思われるほどの大きな魔物が目の前に現れた。
見たことも聞いたこともない魔獣。6つの目がギョロリとこちらを睨んでいる。4本の腕が私達を今にも掴もうとしている。この魔獣、前方に6つの目玉を持っているし、手は4本あるけれど2本足で立っていてとてもアンバランスだわ。
「お前達、見ているからやってみろ」
カインさんはそう私達に声を掛けた。
「「はい」」
ファルスは高く飛び上がり、腕を狙う。私は横から回り込み左後方の死角であろう場所から足を切り付ける。私はなんとか切る事が出来たけれど、ファルスの剣は受け止められている。
「チッ、離せ」
ファルスは剣を取られて焦っている。
「ファルス、避けて」
剣を掴んでいる手首に向かってダガーを投げる。ナイフはしっかりと手首に刺さり、魔獣は剣を落とす。ファルスは落ちた剣を素早く広い後ろから切り付ける。ファルスは後ろから魔法を纏わせた剣で切り付けた。
やはり後ろがこの魔獣の弱点なのね。
私は腕の付け根を切り落とす。魔獣も暴れだすがあまり動きは早くないので私達は後ろから刺し、最後に首を切り付けて魔獣は絶命した。
「学生でこれならまぁまぁ良いほうだろう。ファルスといったか、何も考えず上から切り付けるのは最悪な手だ。上から切り付けるなら全力で一気に叩き込め、でないと死ぬぞ。マーロアと言ったな。
君も赤点だ。着眼点は良いが、自分と同様か自分より強いかどうかしっかり感じろ。魔力があるのなら感知する事は可能だろう?」
ファルスは耳の痛い事を言われて自覚もしているせいかしょんぼりしている。ファルスの悪い癖が出たようにも見えるわ。それにしても私が魔力持ちだと一目で気づいているカインという人はやはり只者ではないのね。
「カインさん、魔力を使ってどう感知するのですか?」
私は素直に質問するとカインさんは鑑定に近いと話しながらやり方を教えてくれた。まず、私は鑑定魔法を使えないのだけれどそれは問題ないらしい。この方法ならぼんやりと敵の強さや弱点が分かるようになるのだとか。
これは練習が必要だわ。
ファルスは剣の扱い方のレクチャーを受けている間に私は先ほど倒した魔獣をリュックの中に入れた。リュックはこの1匹でほぼ埋まってしまったわ。
そこからしばらく歩いていると、沢山木になっている黄色い実を見つけたわ。黄色い実は一口サイズで赤いらせん状の模様が付いていて毒々しい感じがする。
私は先ほど教えて貰った感知を木に使ってみる。投網のようなイメージで対象物を包むと言っていたわ。上手く網状にならないけれど、何度か木に向かって魔力を投げた。木自体は何の変哲もない木のようだけれど、黄色い実からは甘い香りというか魔力なのかな、漏れ出ているわ。
それだけは分かった。
要練習ね。
魔獣はこれを食べているのね。
「カインさん、この実は食べられるのですか?」
ファルスは黄色い実を用意していた採取用の瓶に詰めながら聞いている。
「食べても腹を下すだけだと思うが、食べてみたいなら食べてみろ。微々たる物だろうが魔力は増えるかもしれん」
えぇぇ!?
お腹を下すのね。ここでチャレンジはしたくないわ。
でも魔力が増えるなら食べてみたいとも思う。そして当初の目的の黄色い実は採取出来たわ。けれど、森の魔獣は強くて私達にとって難しいレベルだと分かった。
森を出る前に狼型の魔獣や形容しがたいスライムといえばいいのかも分からない魔物と遭遇し、戦ったの。狼型は素早くて何度か『あ、これ死んだ』と思ったわ。
カインさんが素早く防御結界を出して守ってくれて本当に助かった。敵の倒し方や自分の攻撃の駄目な所を的確に教えてくれて凄く勉強になったわ。
スライムのような魔獣は倒し方もよく分からなかったけれど、ファルスの魔法剣が効いたのでファルスは魔法剣で、私は剣でひたすら切り刻むように攻撃していった。
「マーロア、ファルス。君たちはまだまだ伸びるだろう。頑張るんだぞ。そしてここは危険だ。今回は魔女様が許してくれたから入る事が出来た。人間のお前達はもう来るな」
「カインさんに教えていただいた事、一生忘れません。魔獣素材も大切に使わせていただきます。有難うございました」
しっかりとカインさんにお礼をして森を出た。気づいていなかったけれど、どうやら森で一日を過ごしていたみたい。すっかり遅くなってしまった。
私達は近くの村で宿を探して翌日の朝一番に辻馬車で学院まで戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の更新はここまでとなりました。
お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、最後の2話は現在更新中の「魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!」の登場人物でした⭐︎たまには良いかなと。
また忘れた頃になるとは思いますが、細々と更新していきたいと思います。
しっかりと下準備して森に入る。勝手に森を荒らすのは良くないから魔女に許可を貰わないといけないわ。そう思い、森に入る。一時間くらい歩いたかしら?少し小高くなった場所に小さな小屋が建っていた。
きっとここに違いない。
―コンコン―
恐る恐る扉をノックすると女の人の声が聞こえてきた。
「はぁい、誰かしら?」
出てきたのはレースのアイマスクをした絶世の美女。この人が噂の魔女?私達は魔女に案内されて小屋の中へ入った。小屋は何かの魔法が掛かっているようで見た目と違いかなり広い空間になっていたわ。
そして香る薬草を煮詰めた時のような匂い。
私は勧められるまま椅子に座り、出されたお茶を飲む。何気なく魔女は魔法でポットやお湯を出し、淹れてくれているけれど、その様子を見るからに一般人とは比較にならない魔力なのだと分かる。
そして隣にいたファルスが震えているわ。
どうしたの?とファルスの視線の先を見ると、魔女の足が蛇の尾になっている。
もしかして魔女自体が魔獣なの!?
私達はどうしようと震えていると、
「何か御用かしら?」
魔女はそう微笑みながら聞いてきた。
「は、はい。じ、実は。学院に通っていて、先輩が錬金をしているのですが、手伝うために珍しい素材を、と思って魔女の森にあるという魅惑の実と少しの魔獣を狩らせて欲しいと思い、ここにやって来ました」
「ふぅん。魅惑の実?カイン、分かるかしら?」
先ほどまで誰も居ないと思っていたのに。気配一つしなかったけれど突然現れた黒髪の執事服の男の人。どうやらカインという名前らしい。
「あぁ、お嬢様。偶に魔獣が争って取り合っている黄色いあの実ではないですか?」
「あれね。いいわよ。それに最近手入れをしていなかったから魔物も増えているし、狩れるのなら狩っていきなさいな」
「本当ですか!?有難うございます」
魔女はテーブルに頬杖をついて微笑んだ。
「対価はお持ちかしら?」
やっぱり噂は本当だったんだわ。ちゃんと用意をしていて正解だった。
私は震える手でリュックから乙女の花と聖水を出した。すると魔女は興味を持ってくれたみたい。
「あら、そのリュック。人間なのに頑張って作ったのね。……将来有望ね。それにこの乙女の花と聖水は本物ね。いいわ、気に入ったわ。カイン、付いて行ってあげてちょうだい」
土産物は本物だった。ホッと胸を撫でおろした。カインさんが付いて来てくれるのね。
どんな魔物が住んでいるか分からないこの森で住人が付いて来てくれるとは心強いわ。
私達は魔女にお礼をしっかり言って小屋を後にした。そしてカインさんは小屋を出てから私達に注意事項を話す。
「お前達の実力では倒せない魔獣が多い。私から離れないように」
「「分かりました」」
小屋を出て歩き始めると先ほどとは一気に風景が代わり、どこを見ても鬱蒼とした森となっていた。
「ファルス、さっきまでの道と全く違うわ」
「マーロア、魔物の気配が周りからする」
どうやらさっそく魔獣に囲まれたみたい。私達は剣に手を掛けている。ガサガサと葉を揺する音がしたと思ったら二メートルはあろうかと思われるほどの大きな魔物が目の前に現れた。
見たことも聞いたこともない魔獣。6つの目がギョロリとこちらを睨んでいる。4本の腕が私達を今にも掴もうとしている。この魔獣、前方に6つの目玉を持っているし、手は4本あるけれど2本足で立っていてとてもアンバランスだわ。
「お前達、見ているからやってみろ」
カインさんはそう私達に声を掛けた。
「「はい」」
ファルスは高く飛び上がり、腕を狙う。私は横から回り込み左後方の死角であろう場所から足を切り付ける。私はなんとか切る事が出来たけれど、ファルスの剣は受け止められている。
「チッ、離せ」
ファルスは剣を取られて焦っている。
「ファルス、避けて」
剣を掴んでいる手首に向かってダガーを投げる。ナイフはしっかりと手首に刺さり、魔獣は剣を落とす。ファルスは落ちた剣を素早く広い後ろから切り付ける。ファルスは後ろから魔法を纏わせた剣で切り付けた。
やはり後ろがこの魔獣の弱点なのね。
私は腕の付け根を切り落とす。魔獣も暴れだすがあまり動きは早くないので私達は後ろから刺し、最後に首を切り付けて魔獣は絶命した。
「学生でこれならまぁまぁ良いほうだろう。ファルスといったか、何も考えず上から切り付けるのは最悪な手だ。上から切り付けるなら全力で一気に叩き込め、でないと死ぬぞ。マーロアと言ったな。
君も赤点だ。着眼点は良いが、自分と同様か自分より強いかどうかしっかり感じろ。魔力があるのなら感知する事は可能だろう?」
ファルスは耳の痛い事を言われて自覚もしているせいかしょんぼりしている。ファルスの悪い癖が出たようにも見えるわ。それにしても私が魔力持ちだと一目で気づいているカインという人はやはり只者ではないのね。
「カインさん、魔力を使ってどう感知するのですか?」
私は素直に質問するとカインさんは鑑定に近いと話しながらやり方を教えてくれた。まず、私は鑑定魔法を使えないのだけれどそれは問題ないらしい。この方法ならぼんやりと敵の強さや弱点が分かるようになるのだとか。
これは練習が必要だわ。
ファルスは剣の扱い方のレクチャーを受けている間に私は先ほど倒した魔獣をリュックの中に入れた。リュックはこの1匹でほぼ埋まってしまったわ。
そこからしばらく歩いていると、沢山木になっている黄色い実を見つけたわ。黄色い実は一口サイズで赤いらせん状の模様が付いていて毒々しい感じがする。
私は先ほど教えて貰った感知を木に使ってみる。投網のようなイメージで対象物を包むと言っていたわ。上手く網状にならないけれど、何度か木に向かって魔力を投げた。木自体は何の変哲もない木のようだけれど、黄色い実からは甘い香りというか魔力なのかな、漏れ出ているわ。
それだけは分かった。
要練習ね。
魔獣はこれを食べているのね。
「カインさん、この実は食べられるのですか?」
ファルスは黄色い実を用意していた採取用の瓶に詰めながら聞いている。
「食べても腹を下すだけだと思うが、食べてみたいなら食べてみろ。微々たる物だろうが魔力は増えるかもしれん」
えぇぇ!?
お腹を下すのね。ここでチャレンジはしたくないわ。
でも魔力が増えるなら食べてみたいとも思う。そして当初の目的の黄色い実は採取出来たわ。けれど、森の魔獣は強くて私達にとって難しいレベルだと分かった。
森を出る前に狼型の魔獣や形容しがたいスライムといえばいいのかも分からない魔物と遭遇し、戦ったの。狼型は素早くて何度か『あ、これ死んだ』と思ったわ。
カインさんが素早く防御結界を出して守ってくれて本当に助かった。敵の倒し方や自分の攻撃の駄目な所を的確に教えてくれて凄く勉強になったわ。
スライムのような魔獣は倒し方もよく分からなかったけれど、ファルスの魔法剣が効いたのでファルスは魔法剣で、私は剣でひたすら切り刻むように攻撃していった。
「マーロア、ファルス。君たちはまだまだ伸びるだろう。頑張るんだぞ。そしてここは危険だ。今回は魔女様が許してくれたから入る事が出来た。人間のお前達はもう来るな」
「カインさんに教えていただいた事、一生忘れません。魔獣素材も大切に使わせていただきます。有難うございました」
しっかりとカインさんにお礼をして森を出た。気づいていなかったけれど、どうやら森で一日を過ごしていたみたい。すっかり遅くなってしまった。
私達は近くの村で宿を探して翌日の朝一番に辻馬車で学院まで戻った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回の更新はここまでとなりました。
お気付きの方もいらっしゃるかも知れませんが、最後の2話は現在更新中の「魔力無し判定の令嬢は冒険者を目指します!」の登場人物でした⭐︎たまには良いかなと。
また忘れた頃になるとは思いますが、細々と更新していきたいと思います。
20
お気に入りに追加
416
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
この罰は永遠に
豆狸
恋愛
「オードリー、そなたはいつも私達を見ているが、一体なにが楽しいんだ?」
「クロード様の黄金色の髪が光を浴びて、キラキラ輝いているのを見るのが好きなのです」
「……ふうん」
その灰色の瞳には、いつもクロードが映っていた。
なろう様でも公開中です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる