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4部 心闇の宴

九尾の里

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「エイシャ様、カインはどうでしたかな?元気でしたか?」

「ええ。元気にしていたわ。途中、お母様が飲ませるようにって貰った薬をカインに渡したんだけど、まさかの進化が始まって焦ったわ」

「流石メーデイア様ですな。これでカインも魔王の仲間入りかも知れませんぞ」

「… そうね。お祖母様ならカインをとことん鍛えてそうなのよね」

私とガロンはそんな話をしながらお茶を飲んでいると、

ー コンコン ー

小さなノック音が聞こえてきた。

「はぁい。どなたかしら?」

私は扉を開けるとそこには3つの尾を持つ小さな女の子が立っていた。

「ここは魔女しゃまのお家でしゅか?」

「ええ、そうよ。珍しいわね貴女が来るなんて。まぁ、入ってちょうだいな」

私は女の子を部屋の中へ迎え入れた。女の子はぴょんと部屋の入り口からジャンプをするとストンと部屋の中央に置かれた椅子に座る。

「魔女しゃま、お手伝いくだしゃい。急ぎなのでしゅ」

「あらあら、九尾ともあろう貴女が魔力も激減するほどに?私では力不足ではないかしら」

「エキドナ様に頼めば『面倒ねっ!こうやれば良いのっ!』と力技で行ってしまいましゅから」

「あながち間違いではないわ。お祖母様ですもの。それで、どう言った内容なのかしら?」

「この間、九尾の里に人間が踏み入ってきたのでしゅ。どうやらその目的は私達の魔力とペットとして飼いたいらしいのでしゅ」

「あら、協定違反ね」

「そうなのでしゅ。だから連れ去られた仲間の奪還と人間達への制裁を与えたいのでしゅ」

「良いわよぉ。対価は何かしら?」

「ふふふふ。九尾御用達、狸の皮バッグでしゅ」

ででーんと効果音が鳴り響きそうなほどの自慢顔で出されたバッグ。

「… 却下ね」

「チッ。やはり駄目でしゅか。対価はこれでしゅ」

そう言って狸の皮のバッグから渋々取り出したのは不思議な色の玉。

「これは、幻惑の玉でしゅ。九尾の里のある山でしか取れない鉱石なのでしゅよ!これを九尾は幼い頃から身につける事で幻惑魔法に慣れ、自身も使えるようになるのでしゅ。しゅごいでしょ?」

「そうね。これは確かに珍しいわ」

私は幻惑の玉を手に取り眺める。幻惑の玉は一見鈍色をしているのだが、よく見るとプリズムのような光も映し出しいる。とても不思議な玉だ。

「良いわ。協定違反には厳しい制裁を行いましょう」

「流石魔女しゃまでしゅ」

私は錫杖を取り出しシャランという音と共に地面にトンと突くと、私を中心に魔法陣が現れて光を帯びる。もちろん九尾もその中に飛び込んだ。『九尾の里』そう口にするとシュンと転移して里へ着いた。



 九尾の里は所々焼け落ち、争った跡が窺えた。

「あらあら、手酷くやられているわねぇ。九尾ともあろうがどうしてなのかしら?」

「これでしゅ。これでわらわ達は手が出せなかったのでしゅ」

そうして指を差した先には血を流した1匹の小さな子狐が魔法陣に囚われている。

「あれはこの里で大切にされている娘なのでしゅ」

「あの魔法陣に触れるだけで魔力を奪われるのでしゅ。でもわらわ達が魔力を流さない限りあの娘は死んでしまうのでしゅ」

「あらあら、中々に悪どい魔法陣ねぇ」

私は魔法陣の前に立ち、取り出した赤黒い光を帯びた粉をふぅっとそれに向かって吹きかけた。すると、魔法陣は粉が掛かると暗い光を帯び始めた。それから私は尻尾で魔法陣を叩き割ると、魔法陣は煙を出しながら消えていった。

「さぁ、これでこの子は大丈夫ね。次は人間かしら」

私は使われた魔力の痕跡を辿り少し離れた村へ辿りついた。もちろん九尾の少女も後から付いてきている。

「里から連れ出された者は何人なのかしら?」

「20人でしゅ」

「あら、ではあそこの建物に15人程いるわ」

「あと5人はどこかしらねぇ?聞いてみましょう」

私は木の家を吹き飛ばしながら人間達を村の真ん中へ囲って行く。九尾の少女は連れ出された里の者の救出に向かった。村人達は震えて1箇所に集まっている。

「あとの5人はどこかしら、知らない?」

私はそう聞いてみるが誰もが口を割る事が無いようだ。盗賊の村のようね。

「では、話をしたくなるようにしましょう」

私は呪文を唱え、村人達の足元に魔法陣を浮かび上がらせた。

「ふふっ。どう?凄いでしょう?妖狐の里で見つけた魔法陣を真似てみたのよ?誰から死ぬのかしら?」

 魔法陣はじわじわと人間達から魔力や生命力を削り取っている。そうして私の手元に抽出された魔力が抽出され魔石が育成され始めている。1人、また1人と倒れ始めた時、人間達は大声で叫びはじめた。

「あいつらは売られたんだ!ヤルスマ国の王子に!」

「ペットや奴隷として美しい者だけ連れて行ったんだ!」

「俺達は言われただけだ!!」

「ヤルスマ国の魔法使いが全てやったんだ!俺達は関係無い」

そう口々に叫び始めている。

「そう。分かったわ。ではヤルスマ国へと行ってみるわね。ここは九尾のお嬢さんに任せましょう」

私は魔法陣を解き、魔石を九尾の少女に渡してヤルスマ国の王宮へと転移した。
 



 王宮では突然現れた私に驚き、騎士や魔法使い達が私に向かってくるが私の目を見るとピタリと立ち止まってしまう。

「王子様はいるかしら?お話が聞きたいのだけれど?」

あらっ、忘れていたわ。レースアイマスクをつけ忘れていたわ。ふふっ、まぁ良いわ。

1人の騎士がフラフラと目の前で跪き答える。

「王子は今、自室に居ります。案内します」

そう言ってフラフラと案内し始めた。行き交う人々も私を見てパタリと動く事を止めている。

ノックする事もなく魔法で扉を吹き飛ばした。
そこにいたのはソファに優雅に座る青年と首輪をした狐尾の幼女が3人が後ろに立たされていて1人は震えながらお茶を淹れていた。

「あら、下品ね。幼女に首輪をしてまで従わせたかったのかしら?」

「誰だ!!許可な、く…」

王子は私に視線を向けると抵抗する事なく動きを止めた。

「つまらないわ。もっと抵抗してくれてもいいのに。王子、あと1人はどこ?」

「あ、と1人…。あいつは宰相に付いている」

「分かったわ」

私は妖狐達の首輪を外し、里へ王子と共に転移させた。王子の処分は任せるとして、あと1人ね。


 騎士に宰相の所まで案内させると、丁度そこには国王と宰相、後ろに首輪を付けられた九尾がおり、貴族との謁見の真っ只中だった。

「無礼者!こやつをつか…」

パタリと謁見室は静かになった。

「貴女、大丈夫かしら?」

首輪を解きながら声を掛ける。

「宰相だけが、私達を助け出そうと、動いてくれていたのです。国王も王妃も私達から魔石を作り、奴隷として暴力をを振るってきました」

「あらあら、そうなの?どうしようかしらねぇ。では、宰相と共に里へ帰りなさいな」

そうして私は城の魅了に掛かった者に命令する。

『殺し合いなさい』

さて、依頼は終わったし、帰るわ。
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