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宜しくお願いします。
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 ポコッポコッ。

 それは人が立ち入る事の出来ない瘴気が溢れる毒の沼。
 そこで私と彼は生まれた。

 私は白く小さな羽根の生えた毛玉。彼は黒の羽根が生えた毛玉。

 私達は瘴気から生まれた小さな小さな魔物。弱い存在だった。だから大きくなるまでこの沼から出る事が出来なかった。

「おい、お前。聞いているのか?」
「なぁに? 聞こえているわよ?」
「俺は強くなったらここを出ていく。お前はどうするんだ?」

「あたしたちまだ生まれたばかりよ? 当分ここから動く事が出来ないわ。……でも、そうね。強くなったら色んな所を旅したいわ。この目で色々な世界を見てみたいの。あんたはどうするの?」
「俺? 俺は強くなって全ての生き物の王になる」
「無理じゃない? だって他にここから生まれてくる生き物にすぐにやられちゃうじゃない」
「うるさいなっ! 俺は王になるんだ」
「そう、じゃあ頑張って?」

 私はいつも沼の端で細々と暮らしていた。彼は沼を泳ぎ回り瘴気を沢山取り込もうと頑張っていたわ。

 瘴気から生まれる物は私達だけではなかった。

 だけど生まれてきた物は私達のように会話をする知力もないし、単純な動き。
 けれど、どれも好戦的だったわ。

 私達は弱いながらも沼から生まれる魔の物と戦いながら協力して暮らしていたの。戦って倒した魔の物を取り込む。

 これは私達が気づけばしていた事。取り込めばその分強くなる。

 そして瘴気や魔の物を取り込んでいく内に少しずつ大きくなっていく。そして能力にも変化が表れるようになっていった。

「お前、全然強くなんねーな」
「……そうね。魔法は全然駄目ね。身体も大きくはなるけれど、強くはない。貴方はいいわね。魔法も使えるようになっているし、強くなっているわ」

 たまにそんな会話をしながら相変わらず沼の端でひっそりと生きている私。

 瘴気を取り込むために沼を泳ぎ回る彼。

 同じような大きさで生まれ、同じ沼で一緒に生活してきたのにどうしてこんなに私は弱いのだろう。

彼はどんどん力が強くなっていく。この違いは何だろうといつも思っているわ。

 私も動き回ればいいのかと思い彼と同じように行動して魔の物を取り込んでも強くなれない。少し知恵は付いているとは思うけれど。



 どれくらいの時が過ぎたのか分からない。
 彼は瘴気を取り込み続け、強い力や魔力を持っている。

 反対に私は身体も魔力もあまり増えていない。成長するにつれて発現したスキルにも違いが出てきた。

 彼は自分より小さな魔物を生み出すスキル『魔族の種』というスキルを持っている。

 私は彼より少し後に『ダンジョン作成』というスキルが備わった。その後またしばらくしてから『魔族の種』のスキルが発生した。

『ダンジョン作成』スキルの最初は地面に小さな空間を一つ作るだけだった。

 瘴気を取り込み、成長していくうちに地下に小さな洞窟のようなものが作れるようになっていった。



 こうして私達は毎日瘴気を取り込む日々が続いた。

 次第に瘴気が湧き出していた沼はとうとう瘴気を出さなくなってきた。

この頃には私達は既に大きくなっていたからいつここを出るかと考えてはいたの。

「俺は決めた。明日、ここを出る。お前はどうするんだ?」

 既に体躯が立派になった彼はそう言ってきた。

「そうね、この沼も綺麗な池になりつつある。私はもう少ししてからスキルを使って地に潜る事にするわ。そうすれば他から狙われないでしょう?」


 相変わらず私は魔法が少ししか使えず、力もない。最近は瘴気も減り、動物が増えてきた。動物に狙われる私を彼がいつも助けてくれる事が増えていた。

「そうか。ところでお前、名前は何にする? ここを出ていくのにお前では困るからな。俺はこの世界最初の魔王、ファーストだ」
「ファースト? 魔王? ふーん。そっか。魔王になるのね。応援しているわ。私の名前は何にしようかな。土に潜ったら土壁だらけなんだし、ウォールウォールっていうのはどう?」
「ウォールウォールか。分かった。何かあったらいつでも俺を呼べウォール」
「ファーストが危険な時は私が駆けつけて助けてあげるわ」
「ククッ。弱いのに。まぁ、その時は頼む」

 そうして私達の会話は終わった。


 翌日、彼は宣言していた通りに沼を出て行った。

 私も沼から出て暫く歩いた後、『ダンジョン作成』スキルを使用し、土の中に入っていった。これが私と彼との出会いと別れだ。
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