【完結】魔女首のラナ

まるねこ

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本編

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「ブラッド、大まかな場所は分かっているの?」
「あぁ。ラナが魔法円を作ってくれたらすぐに向かえる」
「もうっ。相変わらず苦手なのね」
「出来なくはないがラナの方が安定しているだろう?」

 魔女は魔法も使うがどちらかと言えば魔法円を使った魔法薬を作る事が得意で魔法使いは字の如く魔法を扱う事が得意なのだ。

 しかし、学校や師匠からはどちらも基礎はしっかりと学ぶので理解し、属性が合えば問題なく使う事が出来る。

 本人達の得意な事で呼び分けているだけの曖昧なものではある。

 私はブラッドローに抱えられて久しぶりに塔の外に出た。

 太陽はとても美しく、風を感じるわ。

 このままのんびりと木陰で本でも読みたい気分になるけれど、今は私の身体を取り戻しにいかねばならない。


 塔の外にはツィリル陛下と護衛騎士達と王妃と息子がそこに居たわ。

 ブラッドローに抱えられた私を初めて見た人達は口には出さないけれど、化け物を見る目で私を見ていた。

「皆に見られて恥ずかしいわ」
「なら俺だけを見ていればいい」

 ブラッドローは私の頬に軽くキスをする。

「もうっ! 避けられないわっ」
「ふふっ。さぁ、遊んでないで教会へ行くとするか」

 彼は周りを気にする事なくそう告げる。

 以前と変わらない彼に気恥ずかしさと嬉しさで顔が真っ赤になる。

「……そうね」

 私は気分を変えるように地面に魔力を流して魔法円を構築する。ある程度の魔法円が浮かび上がると、ブラッドローへとバトンタッチをする。
 今の私では魔力が足りない。けれど、その様子を見ていた周りの人達の驚いた顔が見て取れた。

 そういえばツィリル陛下にこれは教えて居なかったわね。

 教えた所で魔力が足りないから使えない。

 手紙程度なら飛ばせるから小さい物をその内教えてあげてもいいかもしれない。

「では、ツィリル陛下。いってくるわ」
「ラナ! 帰りを楽しみに待っているよ」

 そうして私とブラッドローはチュリサーラへと旅立った。



 私達が降り立ったのはチュリサーラの街の中。

 突如と現れた生首を抱えた男に驚愕し、なんてことは無かったの。

 小さな街で殆ど人が歩いていなかったから。

 どうやらこの街は海が近いようで午前中はみな漁に出ていて日中街の中をブラブラと出歩く人は少ないらしい。

 それでも安心は出来ないので私達は教会へと急いで向かう事になった。

「王都から来たのだが、教会の責任者はいるだろうか?」

 教会前で掃除をしていたシスターは慌てて教会の中へと入っていった。

「ふふっ。ブラッド、絶対悪魔だと思われているわ」
「まぁ、そうだろうな。否定はしない」

 私達はそう話ながら暫く教会の入り口で待っていると、神父の格好をした責任者と思わしき人物と年老いたシスターが現れた。

「我が教会にどういった御用でしょうか? 遺体の埋葬ですかな? まぁ、その格好では目立ちますからどうぞ中へ」

 ブラッドローは髪色に合わせて黒い服を着ており、首だけの私を抱えている。

 その姿は悪魔に見えても可笑しくはない。

 神父は顔を引きつらせながら中へと入れてくれた。シスターもそれは同じようだ。

 私達は女神像の前にある席に案内されて座った。

「私はここ第二教会の責任者をしている神父のウーノです。こっちがシスター長のカナ。今日は何かお困りごとがあってこちらに来られたのでしょう。貴方の抱えている人の頭部、だと見受けるのですが……」

 明らかに言葉が詰まり、言いにくそうにしている神父。

「あぁ、困ってはいるが。俺達は王都からやってきた。ここの教会の地下にある聖女だけが眠るとされている遺体安置場に行きたい。陛下からも書状がある」

 聖女だけの遺体安置する場?

 ブラッドローはどうやってここの場所を知ったのかしら。

 疑問に思ったけれど、今口を開くのは得策ではない。

 首だけの女が生きて話をするなんて悪魔の所業だと言われそうだし。

 ウーノ神父はブラッドローが渡した書状に目を通した。

「……ここの地下には一体だけ首のない聖女がおります。結界が張られ、誰も触れる事が敵いません。そしてその遺体は不思議な事に朽ちていない。もしや、貴方が抱えている頭は、聖女様、なのでしょうか?」
「あぁ、まぁ、そういう事だ。その首から下に会いに来た」

 ウーノ神父もシスターカナも目玉が落ちそうになるほど見開いて驚いている。

 私は聖女じゃないわ! って笑いたくて仕方がなかったけれど、ここで笑ったらきっとウーノ神父は心臓発作を起こすんじゃないかしら。

 グッと我慢して様子を覗う。
 教会の責任者しか入れないという聖女が眠る場所。

 シスターカナは地下に入る入り口まで付いてきたが、その場で待っているという。

 何かあれば呼んでください、すぐ駆けつけますからと微笑みながら言っていたわ。

 彼女も気になって仕方がないのね。
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